AIとがん研究(トップジャーナル) ── がん一般 ── 2026-09-30
インパクトファクター 10 以上の医学誌・腫瘍学誌・総合誌(26 誌)のホームページから、がんと AI に関わる新しい論文を集め、Jev(言葉の判断をする AI)が「原著研究か」「AI が中心か」「6 つのテーマのどれか」「治療・治験に関わるか」を判定して選んだ一覧です。紹介文は各論文の抄録だけから書いています。効果や安全性を断定するものではありません。
がん一般の分子生物学の進展とAI
- SpaCEy links spatial tissue patterns to clinical outcomes using explainable graph neural networks.
SpaCEy は組織を空間グラフとして扱う説明可能なグラフニューラルネットワークで、細胞型ラベルや解剖領域を入力に用いずに全生存と病勢進行を予測する。肺がんと乳がんの空間プロテオミクスデータに適用し、進行や生存の層別化に関連する空間パターンとマーカー発現を提示した。
- UniCure: A multi-modal model for predicting personalized cancer therapy response.
UniCure は生物学的・化学的な基盤モデルを組み合わせ、薬剤による転写応答を予測して薬剤の順位付けを行う多モーダルモデルである。190 万件の摂動プロファイルで学習し、患者由来 PTC 345 件で微調整、実臨床の 396 プロファイルで評価し、細胞株と患者由来モデルでも検証したと報告している。
- An operational perturbation proteomics-based virtual cell model.
乳がん細胞株の系統的な摂動から 3800 万件を超える経時的なタンパク質量測定を作成し、仮想細胞モデル ProteinTalks を構築した。薬剤効果や併用の予測、耐性関連タンパク質の探索、患者層別化に適用し、オルガノイドや臨床生検にも適用範囲を広げ、評価条件下で比較実装より高い性能を示したと報告している。
- Immune Concept–Informed AI Improves Immunotherapy Response Prediction
COMPASS は bulk トランスクリプトームを入力とし、人が読み取れる概念を経由して免疫療法の転帰を予測する pan-cancer 基盤モデルである。概念ボトルネック構造により転帰予測が改善し、生物学的な解釈も得られると紹介されている。原著の要点を伝える研究ハイライト記事である。
- HisToSpatialCNV: an interpretable deep learning method predicting spatial copy number variations from histopathology images.
HisToSpatialCNV は H&E 画像から空間的なコピー数変化を推定する多スケール深層学習手法で、グラフニューラルネットワークと自己注意を組み合わせる。HER2+ 乳がん、皮膚がん、脳腫瘍のデータで既存手法を上回り、サブクローン同定や系統再構築を可能にし、TCGA の HER2+ 画像では生存が異なる空間分子サブタイプを同定した。
- AI-enabled discovery and biochemical optimization of minibinders targeting cancer cell-surface proteins.
AI 設計ミニバインダーを哺乳類細胞表面ディスプレイで大規模に評価し、PD-L1 では高親和性の設計が複数得られた一方、CD276 と VTCN1 では少なく標的依存性が大きかった。CAR に組み込むと発現や機能が低い例があり、結合界面を保ったまま等電点を調整すると発現と標的選択的な細胞傷害が改善した。
- Enhancing pan-cancer spatial transcriptomics at single-cell resolution with stPainter.
stPainter は pan-cancer の scRNA-seq アトラスで事前学習した条件付き生成モデルで、組織一致の参照や再学習なしに疎な空間トランスクリプトームから発現プロファイルを再構成する。6 種のがんのデータで細分化クラスタリングや経路解析に利用でき、CODEX との比較で領域レベルの一致が示された。
- The Virtual Tissues foundation model resolves spatial proteomics across scales.
VirTues は多重免疫染色画像から、タンパク質・細胞・ニッチ・組織の多階層表現を学習する空間プロテオミクスの基盤モデルである。単一の事前学習済みバックボーンでマーカー再構成、細胞分割・型付け、ニッチ注釈、患者層別化を扱う。トリプルネガティブ乳がんでは抗 PD-L1 併用療法の奏効予測と、独立コホートでの無病生存の層別化を示した。
- Advancing cancer detection and treatment using longitudinal routine clinical data.
367万人・1770万受診のコホートで学習した多モーダルTransformer(Oncoformer)をUK Biobank等の外部コホートで検証した。汎がん診断AUROC 0.956、診断1年前の発症予測AUROC 0.869、病期推定(平均AUROC>0.90)、治療反応予測と無再発生存の層別化を報告している。
- CenSegNet: a generalist high-throughput deep learning framework for centrosome phenotyping at spatial and single-cell resolution in heterogeneous tissues.
中心体と上皮構造を分割する深層学習フレームワークCenSegNetを提示し、127例由来911コアの乳癌組織マイクロアレイに適用した。数的・構造的な中心体異常は空間分布や年齢依存性が異なり、腫瘍グレード、ホルモン受容体、ゲノム変化、リンパ節転移との関連が示された。
- Decoding cancer circulating transcriptomic signatures with language models.
血漿cfRNAリードの塩基配列を直接扱うTransformerモデルGeneLLMを開発し、遺伝子アノテーションに依存しない分類を行った。多施設コホートで複数のがん種に対しROC-AUC 0.9250〜0.9962を示し、通常の1/6のシーケンス深度でも同程度の性能だったと報告している。
- Generalizable AI predicts immunotherapy outcomes across cancers and treatments.
バルク腫瘍トランスクリプトームから免疫チェックポイント阻害薬への反応を予測する基盤モデルCOMPASSを開発した。33がん種10,184検体で学習し、7がん種・6薬剤にわたる16コホートで既存22手法より平均で高い性能を示し、反応者と判定された患者は全生存が長かったと報告している。