第6項は、販売情報提供活動の「証拠管理」を定める。規程や体制が正しく運用されているかを後から検証するには、活動の軌跡が文書として残っていなければならない。口頭説明の記録という異例に見える要件も、この原則の一貫した適用である。
01手順書の作成義務
経営陣は、担当部門および担当者が業務に必要な手順書を作成するよう指示しなければならない。手順書は、どのような状況でどのような手順を踏んで情報提供を行うかを標準化したものであり、担当者が変わっても活動品質が均一に保たれるための基盤となる。手順書の整備は、新任担当者の教育ツールとしても機能する。
So what(意味すること): 「各自のやり方で対応する」ことは許容されない。標準的な業務手順を文書化し、担当者間のばらつきをなくすことが求められる。経営陣はこの文書化を「指示する」責任を負い、担任部門任せにできない。
So why(なぜそう定めるか): 担当者個人の解釈や判断に依存した運用では、担当者交代・組織改編のたびに活動品質が揺れる。手順書があることで、不適切な対応が「個人の逸脱」か「組織的な問題」かを判断する基準にもなる。調査機関が介入した際にも、手順書の存否は適正管理の有無を示す最初の根拠となる。
02業務記録の作成・保管——口頭説明も対象
経営陣は、業務記録を作成・適切に保管させなければならない。ガイドラインが特に明記しているのは「口頭で説明等を行った内容の記録を含む」という点である。つまり、MRが医療従事者と対面で行った説明、電話での情報提供、学術講演会後の質疑応答など、書面に残りにくい活動についても記録を残すことが求められる。
So what(意味すること): 書面資材の管理だけでは不十分。面談・訪問・電話による口頭の情報提供も記録対象であり、「言った・言わない」の水掛け論を防ぐ客観的な記録が必要になる。実務上は、訪問記録・コール記録・議事録・QAログなどが該当する。
So why(なぜそう定めるか): 不適切な情報提供の多くは書面ではなく口頭で行われる。「記録がない」ことを盾に事実確認が困難になることを防ぐため、口頭説明の記録を明示的に義務化している。記録があることで、是正・再発防止策の検討にも具体的な根拠を与えられる。
03当局からの資料提出要求への対応
厚生労働省・都道府県・医薬品医療機器総合機構(PMDA)から資料の提出を求められた場合、資材等に加えて手順書および業務記録を提出し、活動状況を速やかに報告しなければならない。「速やかに」という表現は、調査・指導の性質上、迅速な対応が要求されることを示している。整備不十分な状態で求められれば、対応の遅れそのものが問題視されうる。
So what(意味すること): 手順書と業務記録は、行政機関の調査・監査に即座に応じられる状態で保管されていなければならない。「探したが見つからない」「担当者が退職して分からない」は通用しない。提出を求められた段階で作成・整備を始めるのでは遅い。
So why(なぜそう定めるか): 行政機関が活動実態を把握・評価できなければ、ガイドラインの実効性確保が不可能になる。手順書・業務記録の提出義務は、規制当局と製薬企業との情報の非対称性を解消し、適正活動が実際に行われているかを客観的に検証する手段として機能する。企業にとっては、適正活動の証明機会でもある。