── 仕組みを「働く人たち」に置き換えて、一気に俯瞰する ──
登場人物 — AI社で働く 9 人
物語 ── ある日のAI社、お客さんが来てから答えが出るまで
1. 朝、お客さんが来店
ガラス張りのオフィスに、一人のお客様がやってきました。プロンプトさん。今日彼女が持ち込んだ依頼は、こんな質問です。
2. 受付で人数チェック
入口で迎えるのは コンテキストウィンドウ係。彼の仕事は、お客様の言葉と社内資料が、今日の許容量に収まるか確認すること。「トークン」というのは、文章を細かく刻んだ "破片" のことです。
3. 工場ラインで、文章を "破片" に切る
要望はすぐに工場ラインへ流されます。ベルトコンベアの前に立つのは トークン工員さんたち。彼らは文章を、私たちが思う「単語」ではなく、もっと細かい "文字片" に切り分けます。「製/薬/企業/の/存在/意義...」── 一見おかしな切り方に見えるけれど、これが AI の流儀。
4. 言葉を、数字に変える
切られた破片は、エンベディング職人 のもとへ。「"製薬" を数字に変換すると... 768 次元のベクトル、はい!」 言葉は、巨大な数字の塊として、次のステップへ流れていきます。AI は文字を読んでいるのではなく、ずっと 数字を計算している のです。
5. 何を重視するか決める
ここで登場するのが アテンション部長。全ての情報を平等に扱うのではなく、何に注目するかを瞬時に決めます。
6. 次に来る言葉を、ひたすら予測
満を持して動き出すのが、モデル本社の社員たち (実は数千億人います)。過去に世界中の文章を読み込んで覚えた知識を総動員し、"次に来る単語" を予測しはじめます。「製薬/企業/の/本質/は/患者/の/信頼/...」── 一文字ずつ、いや一トークンずつ、答えが生まれていく。これが AI の正体、次トークン予測 の現場です。
7. 知らないことは、図書館に駆け込む
途中、ある社員が困った顔をしました。「あれ、これ最新の規制の話を聞かれたら、自分たちの知識じゃ古いかも...」 そこで呼ばれるのが RAG司書さん。
8. 道具を使うのは、頼れる主任
「あ、計算が必要なら言ってくださいね」と エージェント主任。電卓、検索エンジン、メール送信、外部 API ── いろいろな道具を呼び出せる頼れる先輩。「応答するだけの AI」から「実際に作業する AI」へと進化させたのは、彼のおかげです。
9. しかし、隅にいる新人くんに、皆が注意
オフィスの隅にいる新人くんに、皆が注意の視線を送っています。ハルシネーション君。聞かれてもいないのに、自信満々で答え始めるクセがあるのです。
周りの社員:「ちょ、根拠は!?」
ハルシネーション君:「いえ、なんとなく、それっぽいかなと...」
これが、AI の ハルシネーション の正体。もっともらしい誤りは、悪意ではなく、AI の構造そのものから生まれます。だからこそ、人間の検証が要る。
10. 出来上がった答えを、お渡し
最後、出来上がった回答を コンテキストウィンドウ係 が受け取り、プロンプトさんに渡します。「お待たせしました!」── テキストが画面に流れ出す。これが、AI社の一日の流れです。
用語の正体 — 登場人物 ↔ 実際の AI 用語
| 登場人物 | 実際の用語 | 一言 |
|---|---|---|
| プロンプトさん | プロンプト | 質問・指示そのもの |
| コンテキストウィンドウ係 | コンテキストウィンドウ | 一度に扱える最大トークン数 |
| トークン工員 | トークン化 | 文章を AI が扱える単位に分割 |
| エンベディング職人 | エンベディング | 言葉を数値ベクトルに変換 |
| アテンション部長 | アテンション機構 | 情報の重要度を決める仕組み |
| モデル本社の社員 | 推論 (Inference) / 次トークン予測 | 過去の学習から次の単語を確率で予測 |
| RAG司書さん | RAG (検索拡張生成) | 外部知識を参照して回答する |
| エージェント主任 | AI エージェント | 外部ツールを呼び出して動く AI |
| ハルシネーション君 | ハルシネーション | もっともらしい誤情報の生成 |
第二回・第三回 (公開中)
第二回は 体験型 ── 句構造文法で "出典と整合する文書を AI と作る"。読むだけでなく、手元の AI と一緒に 10 ステップでプロンプトを組み立てます。
第三回は 「メール・議事録・要約 ── 毎日 30 分の AI 活用」。毎月 22〜33 時間を取り戻す 3 つの基本フローを実践型で。