Q&A 第4集(その4)(令和6年2月21日 厚生労働省医薬・生活衛生局 監視指導・麻薬対策課 事務連絡)。主題は他社製品との比較情報の提供(全14問)。下記の各設問は、厚生労働省が公表した事務連絡別添のQ&Aを原文に沿って収載し、各問に so what(その回答が実務で意味すること)と so why(なぜそう整理されるか)を併記して解説する。
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- Q1 医師・薬剤師から求められた他社製品情報や比較情報は提供できるか
- Q2 添付文書・IF・治療ガイドラインの記載内容で比較情報を提供できるか
- Q3 有効性に関する比較情報を求められた場合に情報提供できるか
- Q4 文献化されていない学会発表の有効性比較情報を提供できるか
- Q5 有効性比較情報の一覧表提出を求められた場合に情報提供できるか
- Q6 安全性(副作用等)に関する比較情報を求められた場合に情報提供できるか
- Q7 禁忌・使用上の注意・相互作用・特定副作用の比較情報を求められた場合に情報提供できるか
- Q8 他社製品から自社製品への切替用量について学会発表データで情報提供できるか
- Q9 薬価に関する比較情報を求められた場合に情報提供できるか
- Q10 医師・薬剤師からの求めがない場合に比較情報を提供することはできないのか
- Q11 適応外使用に関する情報をその場で求められた場合に即時提供できるか
- Q12 適応外使用情報として最新の学会発表も提供できるか
- Q13 国内未承認薬の情報を含む治療ガイドラインを求められた場合に情報提供できるか
- Q14 適応外使用時の保険診療可否に関し公的ウェブサイトへの掲載情報を提供できるか
Q1 医師・薬剤師から求められた他社製品情報や比較情報は提供できるか
第1 3 販売情報提供活動の原則(2)④(他社製品等の誹謗等の禁止)
Q(質問)
第1 3 販売情報提供活動の原則(2)④において、「他社製品を誹謗、中傷すること等により、自社製品を優れたものと訴えること。」が禁止されているが、医師又は薬剤師から他社製品に関する情報や自社製品と他社製品との比較情報を求められた場合、情報提供可能か。
A(厚生労働省の回答)
医師又は薬剤師からの求めに応じて、他社製品に関する情報や自社製品と他社製品との比較情報を提供する行為自体は、当該規定には抵触しない。ただし、情報提供に当たっては、次に掲げる条件を全て満たすこと。
・情報提供する内容は、要求内容に沿ったものに限定するとともに、情報提供先は要求者に限定すること。また、提供情報を要求内容に沿ったものとするため、当該医師又は薬剤師に対し、求められている具体的な情報を確認すること。
・医療関係者・患者等から情報提供を求められていないにもかかわらず、求められたかのように装わないこと。
・提供する情報は、虚偽・誇大な内容であってはならず、科学的・客観的根拠に基づき正確なものでなければならないこと。また、他社製品にとって不利となる情報のみを恣意的に選択しないこと。
・直接比較することが科学的に適切ではない場合はその旨及びその理由等も提供するなど、正確な理解を促すために必要な情報を提供すること。
なお、情報提供に当たっては、販売情報提供活動の一環である以上、本ガイドラインや医薬品等適正広告基準の遵守が前提となる。
So what(意味すること): 医師・薬剤師からの求めがあれば比較情報の提供は禁止されていないが、提供範囲を要求者・要求内容に限定し、科学的公平性を保つ4条件(=①求められた内容だけに絞る、②渡す相手を求めた本人に限る、③科学的・客観的な正確さを保つ、④そのまま比べるのが不適切ならその旨と理由も添える、の4つ)を全て満たす必要がある。
So why(なぜそう定めるか): 誹謗中傷禁止規定(=他社製品をけなして自社製品を優れたものと訴える宣伝を禁じるルール)は自発的な競合攻撃を対象としており、求めに応じた中立的な情報提供まで禁じる趣旨ではないが、要求者限定・客観性・公平性の条件で逸脱を防ぐ。
解説 ── 背景・適用場面・実務上の注意
販提G第1の3(2)④の「他社製品を誹謗、中傷すること等により自社製品を優れたものと訴えること」という禁止規定は、製造販売業者が自発的に他社品を貶める行為を対象としている。医師・薬剤師から求められた比較情報を提供することは、この禁止の射程外にある。その4は、求めに応じた比較情報提供が適法であることを明示しつつ、濫用防止のために4条件を課した構造になっている。つまり「禁止解除の論理」ではなく「もともと別の行為」という位置づけである。
典型場面は、処方切替を検討している医師が「自社品と現行薬の有効性の違いを具体的に教えてほしい」と申し出るケースや、薬剤師が「両剤の副作用プロファイルを比べた文献はあるか」と質問するケースである。この場合、MRやMSLは①要求内容への限定、②提供先の要求者への限定、③科学的・客観的な情報の使用、④直接比較が不適切な場合の注記、という4条件を満たしたうえで応じる。
実務上で誤りやすい点が2つある。第一に「求められたかのように装う」禁止。医療関係者が比較情報を求めていないのに、問い合わせがあったかのような会話の流れを作り誘導するのは明確な違反である。第二に「恣意的な情報選択」の禁止。他社品にとって不利な副作用データだけを選んで提供し、自社品の不利な情報を省くことはできない。この2点は不意に見落とされがちで、行政指摘の対象になりやすい実態がある。
出典: 厚労省 販提G Q&A(その4) 事務連絡 令和6年2月21日 Q1
Q2 添付文書・IF・治療ガイドラインの記載内容で比較情報を提供できるか
第1 3 販売情報提供活動の原則(2)④(他社製品等の誹謗等の禁止)
Q(質問)
医師又は薬剤師から自社製品と他社製品との比較情報を求められた場合、添付文書、インタビューフォーム、治療ガイドライン等に記載されている内容を情報提供可能か。
A(厚生労働省の回答)
情報提供の取扱いはA1と同様。
引用資料については、添付文書やインタビューフォームに記載の内容を使用することは差し支えない。治療ガイドラインの取扱いについては、Q&Aその2 A1を参照すること。
So what(意味すること): 比較情報の提供可否はA1の4条件に従う。添付文書・IFの引用は認められるが、治療ガイドラインはQ&Aその2 A1の要件(出典明示・適応外情報の扱い等)をあわせて確認すること。
So why(なぜそう定めるか): 引用元によって科学的信頼性と利用条件が異なるため、資料種別ごとに参照先を分けて整理している。
解説 ── 背景・適用場面・実務上の注意
Q2は引用資料の種別ごとの扱いを整理している。添付文書とIFは国が製造販売業者に作成を義務付けた公式文書であり、記載内容は承認審査の裏付けがあるか、少なくとも監督下での作成プロセスを経ている。これを比較情報の根拠として使うことは、科学的客観性・出典の明確さという観点から問題ない。
治療ガイドラインの扱いは別途Q&Aその2 A1を参照することとされており、そこでは適応外情報や国内未承認情報が含まれていることの事前告知、出典明示、提供先限定などの追加条件が定められている。つまり添付文書・IFと同列ではなく、一段階条件が厚い資料として扱われる。比較情報の場面では、同じ「医学的エビデンス」であっても資料種別によって適用ルールが異なることを把握しておく必要がある。
実務上の典型的誤りは、治療ガイドラインの当該箇所のみを切り取って、国内未承認薬の記載を含む事実を告知せずに提示することである。また、IFの比較情報を提示する際に「IFに記載されていた」という出典を省略し、あたかも自社独自の試験データであるかのように示すことも問題になりうる。出典の明示はQ1の4条件の一部を構成しており、資料種別を問わず不可欠である。
出典: 厚労省 販提G Q&A(その4) 事務連絡 令和6年2月21日 Q2
Q3 有効性に関する比較情報を求められた場合に情報提供できるか
第1 3 販売情報提供活動の原則(2)④(他社製品等の誹謗等の禁止)
Q(質問)
医師又は薬剤師から自社製品と他社製品との有効性に関する比較情報を求められた場合、情報提供可能か。
A(厚生労働省の回答)
情報提供の取扱いはA1と同様。
なお、患者背景等の異なる臨床試験の成績を調整することなく比較すること等、単に比較した情報を提供することが科学的に公平な比較とは言えない場合があることから、情報提供にあたっては、本ガイドラインに基づき、比較情報の出典を明らかにする等の対応が必要である。また、主要評価項目、副次評価項目等の位置付けを明確にする必要がある。
So what(意味すること): 有効性比較はA1の4条件に加え、出典の明示と主要・副次評価項目(=主要評価項目はその試験で最も重視する効果の指標、副次評価項目はそれを補う二次的な指標)の区別が必須。患者背景が異なる試験を無調整で並べるだけでは科学的公平性を欠くとみなされる。
So why(なぜそう定めるか): 有効性データは試験デザインや患者背景で解釈が大きく変わるため、比較の限界と評価項目の位置付けを明示する義務を課して誤認を防ぐ。
解説 ── 背景・適用場面・実務上の注意
有効性の比較情報は、医師の処方選択に最も直接的に影響するため、科学的公平性の要件がとりわけ厳格に適用される。Q3が明示する核心は「患者背景等が異なる複数の臨床試験の成績を、調整なしに並べて提示することは科学的に公平とはいえない」という点である。これはネットワークメタ解析(=複数の試験データを統計的に橋渡しして公平に比べる手法)を経ない単純な数値比較、いわゆる間接比較(=直接対決させた試験がないまま別々の試験の数字を並べる比べ方)の限界を指摘したものである。
典型的な場面は、医師が「A薬の主要評価項目の改善率はB薬より高いか」と質問するケースである。仮に自社品の試験では主要評価項目の改善率が60%、他社品の個別試験では50%というデータが存在しても、それぞれの試験で患者の重症度・年齢・併用薬が異なれば、数値をそのまま並べることはできない。提供できるのは「各試験の設計と条件を明示したうえで、直接比較のエビデンスがないことを説明した情報」である。
特に注意すべきは評価項目の位置づけの明示である。ある試験で「副次評価項目」として示されたデータを、他社品の「主要評価項目」と並列比較するのは科学的に公平ではない。MRが一覧表等を作成する際は、主要・副次の区別を必ず記載し、対照群の設定や観察期間も示すことが求められる。この情報を省略した比較一覧は、行政から「科学的公平性を欠く」と判断されるリスクがある。
出典: 厚労省 販提G Q&A(その4) 事務連絡 令和6年2月21日 Q3
Q4 文献化されていない学会発表の有効性比較情報を提供できるか
第1 3 販売情報提供活動の原則(2)④(他社製品等の誹謗等の禁止)
Q(質問)
医師又は薬剤師から自社製品と他社製品との有効性に関する比較情報を求められた場合、文献等にはなっていないが学会発表されている内容の情報提供は可能か。
A(厚生労働省の回答)
情報提供の取扱いはA1と同様。
引用資料については、本ガイドライン第1 3(1)③においては、「提供する情報は、科学的及び客観的な根拠に基づくものであり、その根拠を示すことができる正確な内容のものであること。その科学的根拠は、元データを含め、第三者による客観的評価及び検証が可能なもの、又は第三者による適正性の審査(論文の査読等)を経たもの(承認審査に用いられた評価資料や審査報告書を含む。)であること。」が販売情報提供活動の原則とされている。文献等にはなっていない学会発表であることのみをもって、提供不可とはならないが、学会発表は実質査読がなく、エビデンスが十分に確立されているとは言えないため、文献等にはなっていない学会発表であること、エビデンスが十分に確立されているとは言えないことを明確に説明した上で情報提供すること。また、その内容については、販売情報提供活動の一環である以上、本ガイドラインや医薬品等適正広告基準の遵守が前提となる。
So what(意味すること): 学会発表のみで文献化されていないデータでも提供自体は禁止されないが、「未査読であること」と「エビデンスが確立していないこと」を明示した上で提供しなければならない。
So why(なぜそう定めるか): ガイドラインは第三者による客観的検証が可能なエビデンスを求めており、査読を経ていない学会発表はその要件を満たさないため、限界の説明を義務付けて医療関係者の誤認を防ぐ。
解説 ── 背景・適用場面・実務上の注意
販提G第1の3(1)③は、提供情報の科学的根拠として「第三者による客観的評価及び検証が可能なもの、又は第三者による適正性の審査(論文の査読等)を経たもの」を求めている。学会発表は演題採択(=発表テーマを学会が受け入れるかどうかの選考)の審査があるものの、論文査読(=専門家が論文の内容を事前に点検し妥当性を確かめる手続き)とは質・深度が大きく異なる。Q4は学会発表データの利用を禁じていないが、エビデンスの限界を明示する義務を課すことで、医療関係者が過大評価するリスクを抑制している。
典型場面は、学会発表のみで文献化されていない比較データ(例:抄録・スライド上の有効率の数値)を医師から求められるケースである。この場合、「この発表は査読を経ておらず、現時点でエビデンスが確立されたとは言えない」という2点を口頭でも文書でも明確に伝えた上で提供する必要がある。提供後の記録(誰に、いつ、何を、どのような説明と共に提供したか)も監査対応上重要である。
実務上の誤りとして多いのは、学会発表スライドを「参考情報」と一言添えるだけで十分と思い込むケースである。「参考情報」という表現はエビデンスの限界を十分に伝えていない。「第三者査読なし・エビデンス未確立」という具体的な説明が必要であり、これを省略した提供はガイドライン違反となる。また、学会発表を根拠に比較の数値を強調する販促行為は、求めに応じた提供の範囲を逸脱しており別途問題が生じる。
出典: 厚労省 販提G Q&A(その4) 事務連絡 令和6年2月21日 Q4
Q5 有効性比較情報の一覧表提出を求められた場合に情報提供できるか
第1 3 販売情報提供活動の原則(2)④(他社製品等の誹謗等の禁止)
Q(質問)
医師又は薬剤師から自社製品と他社製品との(直接比較試験又は個別の試験で得られた)有効性に関する比較情報について一覧表の提出を求められた場合、情報提供可能か。
A(厚生労働省の回答)
A3と同様。
So what(意味すること): 一覧表形式であってもA3と同じ扱い。出典明示・主要評価項目の明確化・科学的公平性の確保が必要であり、直接比較と間接比較の区別も明記すること。
So why(なぜそう定めるか): 形式が表であっても有効性比較としての科学的公平性要件は変わらないため、A3を準用する。
解説 ── 背景・適用場面・実務上の注意
一覧表は視覚的に数値を並列させるため、個別に口頭で説明するより比較の印象が強調されやすい形式である。しかしQ5はA3を準用するのみであり、形式が表であることを理由に特別な緩和も追加規制もしていない。科学的公平性の観点から必要な情報(出典、試験デザイン、主要・副次評価項目の区別、直接比較か間接比較かの明記)は、一覧表形式でも同様に記載しなければならない。
実務上の典型場面は、処方医が複数の同効薬の有効率・副作用発現率を一目で見たいとして一覧表の提出を求めるケースである。自社品と他社品の個別試験成績を縦に並べた一覧表を作成する際、試験ごとの患者背景(対象疾患のステージ、試験期間、対照群の設定)を脚注等で示さないまま数値だけを並べることは、科学的公平性を欠くとみなされる。
特に誤りやすいのは、直接比較試験(head-to-head試験)と個別試験の成績を同一表内に混在させながら区別を明記しないケースである。Q5の質問文自体が「直接比較試験又は個別の試験で得られた」情報を想定しており、どちらの試験由来のデータかを表中に示すことが前提となっている。この区別なしに並べた一覧表は、医師が直接比較結果と誤認するリスクを内包し、ガイドラインの「正確な理解を促す」要件を満たさない。
出典: 厚労省 販提G Q&A(その4) 事務連絡 令和6年2月21日 Q5
Q6 安全性(副作用等)に関する比較情報を求められた場合に情報提供できるか
第1 3 販売情報提供活動の原則(2)④(他社製品等の誹謗等の禁止)
Q(質問)
医師又は薬剤師から自社製品と他社製品との安全性(副作用等)に関する比較情報を求められた場合、情報提供可能か。
A(厚生労働省の回答)
情報提供の取扱いはA1と同様。
なお、患者背景等の異なる臨床試験の成績を調整することなく比較すること等、単に比較した情報を提供することが科学的に公平な比較とは言えない場合があることから、情報提供にあたっては、本ガイドラインに基づき、比較情報の出典を明らかにする等の対応が必要である。また、特定の種類の副作用を示すだけでなく、安全性(副作用等)の全体像を示す必要があること。
So what(意味すること): 安全性比較はA1の4条件に加え、出典明示と安全性プロファイル全体の提示が必須。特定副作用だけを切り取ることは科学的公平性を欠くとみなされる。
So why(なぜそう定めるか): 副作用情報を一部だけ提示すると他社製品に対する偏った印象を与えるため、全体像の提示を義務付けて恣意的な比較を防ぐ。
解説 ── 背景・適用場面・実務上の注意
安全性比較は有効性比較と同じA1の4条件を満たす必要があるが、Q6はさらに「安全性(副作用等)の全体像を示す必要がある」という固有の条件を追加している。これは副作用情報の構造的な非対称性に対処するためである。副作用情報は試験ごと・患者背景ごとに発現率が大きく異なり、かつ特定の副作用だけを抜き出すことが他社品の印象を左右しやすい。
典型的な適用場面は、医師が「他社品より自社品の方が特定の副作用(例:消化器症状)が少ないか」と質問するケースである。自社品の臨床試験で消化器症状の発現率が低かったとしても、それだけを示して終わりにすることはできない。当該試験の全体的な安全性プロファイル(主要な副作用カテゴリの発現率、重篤な有害事象の状況など)をあわせて提示し、消化器症状の発現率が低い代わりに他のカテゴリの発現率が異なるなどの情報も含めることが必要である。
実務上で見落とされやすいのは、「全体像の提示」の範囲である。すべての有害事象を網羅することは現実的でないが、少なくとも添付文書の「重要な基本的注意」「重大な副作用」「その他の副作用」に対応する情報のフレームは提示する必要がある。特定の副作用だけを強調し、他の安全性情報を省略した提供は、他社品にとって不利な印象を一方的に与えるものとして、誹謗中傷禁止に近い問題を引き起こす可能性がある。
出典: 厚労省 販提G Q&A(その4) 事務連絡 令和6年2月21日 Q6
Q7 禁忌・使用上の注意・相互作用・特定副作用の比較情報を求められた場合に情報提供できるか
第1 3 販売情報提供活動の原則(2)④(他社製品等の誹謗等の禁止)
Q(質問)
医師又は薬剤師から自社製品と他社製品との禁忌、特定の使用上の注意事項、相互作用、特定の副作用や特定の背景についての副作用について比較情報を求められた場合、情報提供可能か。
A(厚生労働省の回答)
A6と同様。
So what(意味すること): 禁忌・相互作用・特定副作用の比較もA6と同じ扱い。特定項目に絞った要求であっても、安全性プロファイル全体の文脈を外さず提供し、出典を明示すること。
So why(なぜそう定めるか): 禁忌や特定副作用は安全性の一部であり、A6の安全性全体像提示の要件は変わらないためA6を準用する。
解説 ── 背景・適用場面・実務上の注意
Q7はA6の準用であり、禁忌・使用上の注意・相互作用・特定副作用という「個別安全性項目」の比較要求に対してもA6の全体像提示義務が適用されることを確認している。要求が特定項目に絞られていても、回答側が提供する情報の範囲が同様に絞り込まれてよいわけではない。
典型場面は、医師が「自社品と他社品の腎機能低下患者への禁忌の違いを教えてほしい」と求めるケースである。禁忌事項の比較を示すことは求めに応じた範囲内であるが、例えば自社品に禁忌がなく他社品には禁忌があるという有利な情報のみを切り取って提示し、他社品の特定副作用プロファイルで自社品より優れた点には触れないことは、恣意的な情報選択となる。
相互作用の比較でよく問題になるのは、薬物代謝酵素(CYP等)に関する相互作用プロファイルの抜粋提示である。自社品が特定のCYP経路への影響が少ないことを強調する場合、他の相互作用(例:腎排泄経路、Pgp基質性)について他社品との関係を意図的に省略すると、安全性プロファイル全体の文脈を歪めることになる。比較が特定の相互作用に絞られた要求であっても、添付文書に記載された相互作用情報の全体的な位置づけを明示することが実務上の安全策となる。
出典: 厚労省 販提G Q&A(その4) 事務連絡 令和6年2月21日 Q7
Q8 他社製品から自社製品への切替用量について学会発表データで情報提供できるか
第1 3 販売情報提供活動の原則(2)④(他社製品等の誹謗等の禁止)
Q(質問)
医師又は薬剤師から他社製品から自社製品への切替用量についての情報を求められた場合、文献等にはなっていないが学会発表されている内容について情報提供可能か。
A(厚生労働省の回答)
A4と同様。
So what(意味すること): 切替用量の学会発表データ提供はA4と同じ扱い。「未査読・未文献化」かつ「エビデンス未確立」の両点を明示することが提供の前提条件となる。
So why(なぜそう定めるか): 切替用量は処方判断に直結するため、エビデンスレベルの明示は特に重要であり、A4の査読なし学会発表の取扱いをそのまま適用する。
解説 ── 背景・適用場面・実務上の注意
切替用量の情報は処方変更の実務に直結するため、エビデンスレベルの明示がとりわけ重要になる。Q8はA4を準用し、文献化されていない学会発表からの切替用量データについて「未査読・エビデンス未確立」を明示した上での提供を認める一方、その説明義務を厳格に維持している。
典型場面は、外来で他社製品を処方していた医師が「自社品に切り替える場合の換算用量を文献で確認できないが、学会発表でのデータはないか」と質問するケースである。学会発表の抄録や演題スライドに換算比の試験結果が含まれていれば情報提供は可能だが、「この換算比は査読を経ておらず、薬事承認を得た用量設定ではない。添付文書の用量範囲内での使用が前提となる」という趣旨の説明を付加することが必須である。
実務上の誤りとして、「先生のご要望だから」という理由で説明なしに換算用量の学会データを手渡すケースがある。切替用量の誤りは患者の過剰投与または治療失敗に直結するため、エビデンスの限界の説明を省略することのリスクは特に高い。また、学会発表データに基づく切替用量案内が複数の医師に繰り返し行われる場合、実質的な販促活動として広告該当性の問題が生じる可能性もあり、医薬情報部門による事前の資材審査が望ましい。
出典: 厚労省 販提G Q&A(その4) 事務連絡 令和6年2月21日 Q8
Q9 薬価に関する比較情報を求められた場合に情報提供できるか
第1 3 販売情報提供活動の原則(2)④(他社製品等の誹謗等の禁止)
Q(質問)
医師又は薬剤師から自社製品と他社製品との薬価に関する比較情報を求められた場合、情報提供可能か。
A(厚生労働省の回答)
薬価に関する情報提供は内容としては本ガイドラインの規制対象外であるが、販売情報提供活動の一環である以上、本ガイドラインや医薬品等適正広告基準の遵守が前提となる。情報提供にあたっては、医師又は薬剤師の誤認を招かない公平な比較情報とすること。
So what(意味すること): 薬価比較情報はガイドラインの規制対象外だが、販促活動の一部である以上は広告基準を遵守し、誤認を招かない公平な比較を行う必要がある。
So why(なぜそう定めるか): 薬価はガイドラインが規律する科学的情報とは性格が異なるが、医師・薬剤師の処方・調剤判断に影響するため、公平性の担保を求める。
解説 ── 背景・適用場面・実務上の注意
薬価情報はガイドラインが直接規制する「医薬品の科学的情報」には該当しないため、第1の3(1)に規定された科学的根拠の要件は適用されない。しかし、薬価情報も「販売情報提供活動の一環」として行われる以上、本ガイドラインおよび医薬品等適正広告基準の枠外にはなく、公平性の担保が求められる。
典型場面は、医師または薬剤師が「自社品と他社品で保険点数に差があるか教えてほしい」「後発品が存在するが先発品の薬価と比べてどのくらいか」と質問するケースである。薬価は厚生労働省が公定した公的情報であり、正確な数値を提示すること自体は問題ない。ただし、1日薬価・コース薬価・規格ごとの薬価など、比較の切り口によって印象が変わるため、どの計算方法を使って比較したかを明示することが誤認防止の観点から重要である。
実務上の注意点として、薬価比較に「医療経済的優位性」という評価を乗せて訴求することは、ガイドラインが定める科学的情報の公平性とは別の問題、すなわち適正広告基準上の比較広告の問題を引き起こす可能性がある。単純に「薬価はこの価格です」という事実の提示と、「費用対効果で自社品が優れている」という主張の間には、監視指導上の扱いに差がある。薬価比較を行う場合は、医薬情報担当者が独自に経済的評価を付け加えないことが実務上の安全策である。
出典: 厚労省 販提G Q&A(その4) 事務連絡 令和6年2月21日 Q9
Q10 医師・薬剤師からの求めがない場合に比較情報を提供することはできないのか
第1 3 販売情報提供活動の原則(2)④(他社製品等の誹謗等の禁止)
Q(質問)
自社製品と他社製品との比較情報については、医師又は薬剤師からの求めがない場合には、提供することはできないのか。
A(厚生労働省の回答)
Q1からQ9までの質問及び回答については、医師又は薬剤師から自社製品と他社製品との比較情報について販売情報提供活動の一環として製造販売業者が提供を求められた事例を想定して記載したものであり、自社製品と他社製品との比較情報について、医師又は薬剤師からの求めがない限り提供が認められないことを意図したものではない。医師又は薬剤師からの求めによらず、比較情報の提供を行う場合には、「薬事法における医薬品等の広告の該当性について」(平成10年9月29日医薬監第148号厚生省医薬安全局監視指導課長通知)や「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」(平成29年9月29日薬生監麻発0929第5号厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課長通知)2 第4 9等を踏まえ適切に行うこと。なお、広告の該当性に関し、医薬品等の適正使用推進や安定供給に係る情報の提供等、顧客を誘引する意図がない情報について自社製品と他社製品との比較の上で提供することは、広告には該当せず、これを行うことは差し支えない。
So what(意味すること): Q1〜Q9は求めに応じた提供の場面を想定したものであり、求めのない場合の提供を全面禁止する趣旨ではない。ただし求めなし提供は広告該当性の検討が必要であり、顧客誘引意図のない適正使用推進情報であれば広告非該当として提供できる。
So why(なぜそう定めるか): 比較情報提供の可否は「求めの有無」ではなく「広告該当性」と「誹謗中傷の有無」で判断されるため、Q1〜Q9の前提を明確化して過度な萎縮を防ぐ。
解説 ── 背景・適用場面・実務上の注意
Q10はQ1〜Q9が「求めに応じた提供」の場面を前提に書かれたことを明示し、求めのない比較情報提供を全面禁止しているわけではないことを確認している。比較情報の提供可否は「求めの有無」ではなく「広告該当性」と「誹謗中傷の有無」によって決まる、という根本的な枠組みを再提示したQ&Aである。
求めなしで比較情報を提供する場合に検討すべき分岐点は2つある。第一は「顧客を誘引する意図があるか」。適正使用推進や安定供給に係る情報提供など、顧客誘引意図のない情報提供は広告非該当であり、この文脈であれば比較情報を含めても問題ない。第二は「誹謗中傷に当たるか」。比較情報の内容が恣意的・一方的・虚偽誇大であれば、求めの有無に関係なく禁止される。
実務上の誤認として多いのは「Q1〜Q9を読んで、求めなしの比較情報提供は一切できないと理解する」ケースである。これは過剰萎縮であり、Q10はそれを解消するために設けられた。一方で「求めさえあれば何でもできる」という逆の誤解も存在する。求めに応じた場合であってもQ1の4条件(恣意的選択禁止・科学的客観性等)の遵守は必要であり、「求め」は条件の一つに過ぎない。両方の誤読を避けることが実務コンプライアンスの出発点となる。
出典: 厚労省 販提G Q&A(その4) 事務連絡 令和6年2月21日 Q10
Q11 適応外使用に関する情報をその場で求められた場合に即時提供できるか
第4 3 未承認薬・適応外薬等に関する情報提供
Q(質問)
医師又は薬剤師から自社製品の適応外使用に関する情報を求められた場合、求められた内容に対し適切な回答をその場で行う準備が整っていることを前提として、その場で情報提供可能か。
A(厚生労働省の回答)
医師又は薬剤師から自社製品の適応外使用に関する情報を求められた時に、その場で情報提供を行うことをもって不可となるものではない。適応外使用に関する情報提供の取扱いについては、本ガイドラインの第4 3に従い、情報提供先を要求者に限定するなどの対応を行う必要がある。
So what(意味すること): 適応外情報の即時提供自体は禁止されていない。ただし提供先を要求した医師・薬剤師本人に限定するなど、第4 3の条件を現場でも確実に満たすことが必要。
So why(なぜそう定めるか): 「その場での回答」という形式のみを理由に不可とする根拠はなく、提供先限定等の実質的条件を守れば適法であることを明確化している。
解説 ── 背景・適用場面・実務上の注意
ガイドライン第4の3は、適応外使用に関する情報提供の条件として「求めに応じること」「提供先を要求者に限定すること」などを定めているが、情報提供のタイミングや場所については何も制限していない。Q11はこの点を確認し、MRが訪問中に医師・薬剤師から適応外情報を求められた場合に、その場で回答することは形式的な理由では禁止されないと明示している。
典型場面は、医師がMRとの面談中に「この薬を○○という適応外の使い方で使った場合の安全性データはあるか」と質問するケースである。その場で情報提供するための準備(該当する文献、IFの記載、社内で審査を経た回答資料など)が整っていることが前提であり、準備が整っていない場合は「後日回答する」という選択が適切である。
実務上の誤りとして多いのは、「その場での適応外情報提供は一律禁止」という過剰萎縮である。Q11はそれを解消するために発出されたが、同時に「提供先を要求者に限定する」条件は現場でも厳守される必要がある。面談に同席している他の医師・MR・メーカー担当者に対して適応外情報が伝達される状況は、提供先限定の条件に違反する可能性があり、面談の場の状況にも注意が必要である。
出典: 厚労省 販提G Q&A(その4) 事務連絡 令和6年2月21日 Q11
Q12 適応外使用情報として最新の学会発表も提供できるか
第4 3 未承認薬・適応外薬等に関する情報提供
Q(質問)
医師又は薬剤師から自社製品の適応外使用に関する情報を求められた場合、「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドラインに関するQ&A(その2)」のQ1において示されている情報に加えて、最新の学会発表情報についても情報提供可能か。
A(厚生労働省の回答)
学会発表情報の取扱いについてはA4と同様。また、適応外薬等に関する情報提供の取扱いについては、本ガイドラインに従う必要がある。
So what(意味すること): 適応外使用の文脈で最新学会発表を提供する場合、A4と同様に未査読・エビデンス未確立の旨を明示した上で行うこと。Q&Aその2 Q1で認められた情報に上乗せする形で提供できるが、ガイドライン第4 3の条件も別途遵守が必要。
So why(なぜそう定めるか): 適応外情報と学会発表はそれぞれ個別の条件を持つため、両方の要件を重畳して適用することを明確にしている。
解説 ── 背景・適用場面・実務上の注意
Q12は2つの条件系の重畳適用を確認するQ&Aである。一方はQ&Aその2 Q1が定める適応外情報提供の基本条件(求めへの応答、提供先限定、出典明示等)、もう一方はQ4が定める学会発表データの取扱い条件(未査読・エビデンス未確立の明示)である。学会発表を出典とする適応外情報の提供はこれら両方を同時に満たす必要がある。
典型場面は、医師がある疾患の適応外使用について「最近の学会で発表されたデータを含めて教えてほしい」と求めるケースである。その2 Q1で認められた適応外情報(例:承認審査に用いられた評価資料や査読論文のデータ)に加えて、未文献化の学会発表データを追加する場合、後者については「未査読・エビデンス未確立」の説明が必要となる。両方の情報を混在して提供する場合は、どの情報がどのエビデンスレベルに属するかを明示することが重要である。
実務上の誤りとして、「適応外情報として求められたから学会発表も提供できる」と単純に解釈し、未査読の明示を省略するケースがある。また逆に、「学会発表はエビデンスが不十分だから適応外情報として提供できない」と過剰に解釈するケースもある。Q12が示すのは「条件付きで可能」であり、条件の省略でも過剰萎縮でもなく、両要件を正確に重畳して適用することが求められる。
出典: 厚労省 販提G Q&A(その4) 事務連絡 令和6年2月21日 Q12
Q13 国内未承認薬の情報を含む治療ガイドラインを求められた場合に情報提供できるか
第4 3 未承認薬・適応外薬等に関する情報提供
Q(質問)
医師又は薬剤師から治療ガイドラインに関する情報を求められた場合、「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドラインに関するQ&A(その2)」のQ10において示されている適応外薬や国内では認められていない用法・用量に関する情報に加えて、国内未承認薬の情報が含まれている場合でも情報提供可能か。
A(厚生労働省の回答)
当該治療ガイドラインに未承認薬に関する情報が含まれることを明確に伝え、当該治療ガイドラインに関する情報を本ガイドラインの条件に従って提供することは差し支えない。
So what(意味すること): 国内未承認薬を含む治療ガイドラインでも、「未承認薬の情報を含む」旨をあらかじめ明示し、ガイドラインの条件(提供先限定等)を守れば提供できる。
So why(なぜそう定めるか): 未承認薬情報を含む事実の事前告知が医療関係者の誤認防止に不可欠であり、その告知を義務付けることで提供を認める仕組みとしている。
解説 ── 背景・適用場面・実務上の注意
Q&Aその2 Q10は、適応外薬や国内未承認の用法・用量を含む治療ガイドラインの提供条件をすでに定めていた。Q4のQ13はそれをさらに拡張し、国内未承認薬(効能・効果自体が国内で認められていない薬剤)に関する情報を含む場合も、一定条件のもとで提供できることを確認した。その条件は「未承認薬情報が含まれることを明確に伝えること」と「本ガイドラインの条件に従うこと」の2点に集約される。
典型場面は、国際的な治療ガイドライン(例:欧米の学会が策定したガイドライン)に言及した医師が、そのガイドライン全文の提供を求めるケースである。当該ガイドラインが日本国内未承認薬を第一選択薬として推奨している場合でも、「このガイドラインには国内未承認の薬剤に関する情報が含まれています」と明示した上で提供することは差し支えない。ただし、その薬剤への処方を促す意図での強調提示は別途禁止される行為に該当する。
実務上の誤りとして、ガイドライン全体のコピーを渡す際に国内未承認薬の記載部分を削除・墨塗りする対応が見られる。この対応は科学的文脈の一部を意図的に隠蔽することであり、情報の正確性・完全性の観点から問題がある。むしろ、未承認薬情報を含む事実を事前に明示した上でガイドライン全体を提供し、医療関係者が国内外の規制状況を正確に理解できる情報提供を行うことが、ガイドラインの趣旨に沿っている。
出典: 厚労省 販提G Q&A(その4) 事務連絡 令和6年2月21日 Q13
Q14 適応外使用時の保険診療可否に関し公的ウェブサイトへの掲載情報を提供できるか
第4 3 未承認薬・適応外薬等に関する情報提供
Q(質問)
医師又は薬剤師から適応外で医薬品を使用した場合における保険診療の可否に関する情報を求められた場合、当該医薬品について、単に、厚生労働省のウェブサイト「公知申請に係る事前評価が終了した適応外薬の保険適用について」に掲載されていることや、社会保険診療報酬支払基金のウェブサイト「審査情報提供事例(薬剤)」に掲載されていることを情報提供することは可能か。 https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/topics/110202-01.html https://www.ssk.or.jp/shinryohoshu/teikyojirei/yakuzai/index.html
A(厚生労働省の回答)
差し支えない。
So what(意味すること): 適応外使用の保険適用可否について、厚労省や支払基金の公的ウェブサイトへの掲載事実を案内することは認められる。掲載事実の案内に留めることがポイントであり、独自の保険適用解釈を付け加えることは別問題となる。
So why(なぜそう定めるか): 公的機関が公開した情報を指し示すことは客観的事実の共有であり、製造販売業者が独自に保険適用を判断・主張することとは性格が異なるため、差し支えないと整理された。
解説 ── 背景・適用場面・実務上の注意
適応外使用時の保険診療可否は、製造販売業者が独自に判断・主張できる事項ではなく、公的機関(厚生労働省、社会保険診療報酬支払基金等)の判断に基づく事項である。Q14が差し支えないとしているのは、製造販売業者が当該公的ウェブサイトへの「掲載事実」を案内することに限られる。これは客観的な事実の共有であり、製造販売業者による保険適用の主張・保証とは性質が異なる。
典型場面は、医師が「この適応外の使い方は保険請求できるか」と問うケースである。公知申請に係る事前評価が完了した適応外薬であれば厚労省ウェブサイトに掲載されており、そのURLや掲載内容を案内することは認められる。支払基金の「審査情報提供事例(薬剤)」に関しても同様であり、当該適応外使用が審査情報提供事例として収載されている事実を案内することができる。
実務上で注意が必要なのは、「差し支えない」の対象がウェブサイトへの掲載事実の案内に限定されている点である。例えば「これは公知申請が完了しているので保険請求できます」という解釈・断言を加えることは許されない。保険適用の最終判断は審査機関が行うものであり、製造販売業者が独自に適用の可否を解釈して医師・薬剤師に伝えることは、誤った保険請求行為を誘導するリスクを持つ。公的情報の所在を案内するに留めることが、この回答の本質的な境界線である。
出典: 厚労省 販提G Q&A(その4) 事務連絡 令和6年2月21日 Q14
事例集 ── 「明文にないから」を悪用する思考と、その判定
A1の4条件は「悪用しようとする者」の目には攻略可能な設計に映る。以下の事例は、条件の文言を表面上満たしながら、その背後で逸脱・隙間突き・上位規範違反・明文違反を実行するパターンを類型化したものである。
不適切な考え方: 【GRAY1:精神逸脱】医師から「自社品と対照薬の有効性を比較したデータはあるか」と尋ねられた際、MRは回答前に「先生は特にどの副作用プロファイルが気になっていらっしゃいますか」と誘導質問を重ね、医師が「まあ、それも教えてもらえれば」と答えた段階で「ご要望いただきましたので」と安全性比較スライドも展開した。形式上は要求に応じているが、要求を自ら拡張している。
判定: A1条件①「求められている具体的な情報を確認すること」は、情報収集のためではなく要求範囲を画定するためのステップである。MRが誘導して医師に追加要求を「言わせた」場合、情報提供の起点は実質的にMR側にある。正しい対応は、医師が最初に示した有効性比較に限定し、安全性については「別途ご希望があればご用意します」と示すにとどめること。
不適切な考え方: 【GRAY2:隙間突き】医師から「自社品と対照薬の奏効率(=薬で病変が一定以上小さくなった患者の割合)を比較したい」と求められ、MRは双方の第3相試験(=承認前の最終段階で多数の患者に有効性・安全性を確かめる大規模試験)データを提示した。ただし自社品の試験は低リスク患者を対象とした試験から、対照薬の試験は高リスク患者を対象とした試験からそれぞれ引用し、患者背景の差異には言及しなかった。数値自体は各文献から正確に転記されており「虚偽」には当たらないと判断した。
判定: A1条件③「科学的・客観的根拠に基づき正確」かつA1条件④「直接比較が科学的に適切でない場合はその旨を提供」に直接抵触する。患者背景の異なる試験を調整なしに並べることの科学的不公平性はA3にも明記されている。正しい対応は、試験間の患者背景の差を明示し、「この数値の直接比較は患者背景が異なるため科学的に適切ではない」と口頭でも書面でも伝えること。
不適切な考え方: 【GRAY3:上位規範違反】医師から「自社品と対照薬の切り替え用量に関する学会発表データはあるか」と問われ、MRは当該学会発表スライドを提示した。発表が査読を経ていないことは伝えなかったが、「エビデンスが確立されています」とも言わなかった。社内基準として「査読なしと積極的に言わなければ違反ではない」と解釈していた。
判定: A4は「学会発表は実質査読がなく、エビデンスが十分に確立されているとは言えないことを明確に説明した上で情報提供すること」と定める。開示義務は積極的なものであり、「言わなかっただけ」では免責されない。さらに販売情報提供活動の一環として適正広告基準の遵守が前提となる(A1末尾・A4末尾)。正しい対応は、提示前に「この発表は査読なし学会発表であり、エビデンスとして十分確立された段階にはありません」と明示すること。
不適切な考え方: 【BLACK:明文違反】医師から特段の比較要求がない外来診察後の雑談の中で、MRが「先生、ちなみに対照薬は△△の副作用報告が出ていまして」と他社製品の特定副作用事例を口頭で伝えた。問われてもいないのに切り出し、対照薬の安全性全体像は示さず、自社品の同カテゴリの副作用頻度にも触れなかった。
判定: A1条件①「情報提供先は要求者に限定」「求められていないにもかかわらず求められたかのように装わない(条件②)」を二重に違反する。さらにA6・A7が要求する「安全性の全体像を示す義務」も果たしていない。他社製品の不利情報を医師に植え付けることで処方行動を誘導するこの手法は、誹謗中傷の禁止規定(第1-3-(2)-④)の禁止趣旨に真正面から抵触する。正しい対応は、当該情報を提供しないこと。比較安全性への医師の関心が確認できれば、改めて全体像を揃えた資料で対応する。
暗示による不適切な意図 ── 明示せず「におわせる」三つの範囲
暗示による不適切な意図は、明言されない形で受け手の印象を操作する。作用する範囲によって①局所(単一の発言・数値の切り取り)、②近接(隣接する発言の並べ方)、③全体(面談全体の構成・資料の流れ)の3層に分類できる。
構成: 【局所暗示】「対照薬の奏効率は本試験では58%でした」と発言し、自社品の奏効率は同試験で記録がないにもかかわらず「自社品は別試験で72%」というスライドを続けて表示した。
読み取れる意図: 医師に「自社品のほうが奏効率が高い」という印象を与える。同一試験ではないため数値を直接比較できないという文脈情報を省くことで、暗示だけで不正な比較効果を得る。
判定: 単一の発言・スライド内で生じる局所的な暗示操作である。A1条件④「直接比較が科学的に不適切であればその旨を提供する」義務を履行していない。正しい対応は、「この2つの数値は異なる試験から得られたものであり、直接比較は科学的に妥当ではありません」と当該スライドの提示と同時に口頭で明示すること。
構成: 【近接暗示】「対照薬で重篤な肝障害が報告された症例が複数あります」と述べた直後に「自社品の肝酵素上昇は軽微で、ほとんどの例で自然軽快しています」と続けた。2つの発言はそれぞれ資料に基づいており、各発言単体では問題がない。
読み取れる意図: 隣接する2文を意図的に並べることで、医師に「対照薬は肝毒性が高く、自社品は安全」という比較印象を与える。対照薬の肝障害事例数の文脈(発症頻度・背景疾患)や自社品の肝酵素上昇頻度は開示されていない。
判定: 近接する発言の配列によって生じる暗示操作であり、個々の発言が事実であっても全体として誤認を招く比較が形成される。A1条件③「他社製品にとって不利となる情報のみを恣意的に選択しない」に抵触し、A6が要求する「安全性の全体像」も示されていない。正しい対応は、対照薬と自社品の双方について同一の情報粒度(頻度・重症度分布・管理方法)で安全性を提示し、2文の間に「これらは直接比較の文脈ではありません」と明確に挟むこと。
構成: 【全体暗示】面談全体の資料構成として、導入スライドで自社品の承認経緯と主要評価項目の達成を強調し、中盤で対照薬の副次評価項目の非達成例を並べ、終盤で再び自社品の安全性プロファイルを提示した。個々のスライドは全て事実に基づいており、「比較」と明言するスライドは存在しない。
読み取れる意図: 資料全体の流れを「自社品の強み → 対照薬の弱点 → 自社品の優位性」というナラティブ構造に設計することで、医師が面談を終えた時点で比較優位の印象を残す。「比較していない」という言い訳が可能な状態を保ちながら、事実上の誹謗中傷効果を得る。
判定: 全体構成レベルで生じる暗示操作は最も発見が困難だが、A1の精神に真正面から反する。資料設計の意図が「自社製品を優れたものと訴えること」にあれば、個々のスライドが正確であっても第1-3-(2)-④の誹謗中傷禁止の趣旨に抵触する。また、対照薬の副次評価項目非達成を抜き出すことはA1条件③の恣意的選択に当たる。正しい対応は、求められた比較情報のみで構成された資料を用意し、自社品と対照薬の双方を同等の評価軸(主要/副次評価項目の位置付けを明示)で提示すること。ナラティブ構造に価値判断が内包されないよう、資料の順序は評価軸の論理的な流れに従う。