33件の事例に共通するのは「データを使っている」という外観だ。グラフ、論文引用、比較試験の結果——いずれも実在する。問題は見せ方にある。軸の目盛を伸ばす、対照群のデータを削る、主要評価項目を副次評価項目に差し替える、国内試験を隠して海外試験だけ示す。どれも「改ざん」とは呼びにくい操作だが、読み手に伝わる印象は原著と別物になる。審査者が問うべきは「データが存在するか」ではなく、「元の論文と比べて何が消えたか」だ。

「資材のグラフを見て、まず何を確認する?」

結衣「数値が正しいか、です。でも今回の事例は数値は合ってるのにアウトなんですよね…」

「そこが出発点。グラフの縦軸の目盛を広げると、数値を変えなくても効果が大きく見える。原著の図と並べてみると一目でわかる。薬機法66条が禁じる誇大広告は数値の偽造だけじゃない。視覚操作も入る。」

結衣「じゃあ対照群のデータを削ったケースは? 許諾が取れなかったから、という説明があったら?」

「許諾が取れないなら、その比較試験の図を資材に使わなければいい。自社製品の棒グラフだけ残して比較図のように見せれば、読み手は優越性があると誤解する。使えないデータなら、図ごと外すか別の説明方法を取るべき。」

結衣「主要評価項目で有意差が出なかった試験で、副次評価項目を使って『効果が示された』と書いてある資材がありました。副次だという記載はなし。これはどう指摘する?」

「事実を確認してから言う。『この図の評価項目は主要ですか副次ですか』と聞く。副次だと認めたら、次は『主要評価項目の結果はどこに書いてありますか』と続ける。隠れた情報を本人に言わせると、説明がつかなくなる。」

結衣「非盲検期を含めたデータから盲検期だけに加工した事例もありましたね。どうしてまずいんですか?」

「非盲検期は両群ともに改善傾向が出やすい。それを除くと対照群との差が人為的に拡大される。加工後のデータは原著とは別の試験デザインを語っている、ということ。試験デザインを変えずに数字だけ切り取ると、原著の著者が意図した解釈とは別の絵になる。」

結衣「国内試験を示さず海外試験だけで安全性を説明した事例は、どこを突けばいい?」

「『国内の臨床試験のデータはありますか』と聞く。あると答えたら『なぜ資材に入っていないんですか』と聞く。本剤に不利な国内データが存在するなら、それを省けば販提G原則(1)の『最新の科学的知見を総合的に提供する』という要件を満たさない。片面的な情報提供になる。」

結衣「担当者は悪意を持ってやっていたんでしょうか。グラフを『見やすく』しただけのつもりだったのかもしれないと思うんですが。」

「意図は問わない。結果で判断する。原著と比較して読み手の印象が変わるなら、それは恣意的加工と評価される。審査者の仕事は動機を推測することじゃなくて、原著との差分を記録すること。差分があれば差し戻す、それだけ。」

報告書からの実例 33 件

03-012016年度気管支拡張剤製薬企業が主催する Web セミナーの図表
何が起きたかE社主催のWebセミナーで、主要評価項目(疾患増悪回数)のグラフの縦軸を部分拡大したスライドが使用され、製品情報概要の通常グラフと視覚的に異なる印象を与えていた。画面切り替えが速い場合、視聴者がデータを正確に読み取れないリスクもあった。
当局見解誤解を生じさせやすいグラフの加工によって、効能効果を誇大に見せている。
切れた力リスク検知力・知識
次の一手スライドと製品情報概要のグラフを並べて縦軸スケールを照合し、拡大・切り取り箇所を特定したうえで原著に準拠した修正を求める。
03-022016年度抗ヒスタミン薬製品情報概要
何が起きたかF社の製品情報概要に、慢性特発性蕁麻疹試験で24時間後・1週間後・6週間後の3時点があるうち、24時間後のデータのみを抜粋したグラフが掲載されており、薬剤効果の全体像を正しく評価できない内容となっていた。
当局見解図の一部のみを抽出・加工することで、効能効果を誇大に見せている(「医療用医薬品製 品情報概要等に関する作成要領」 (日本製薬工業協会)では、 「原著論文からデータを引用 する場合は内容が正確に伝わるよう記載し、 結論が自社製品に優位な部分のみ抜粋するこ となく、原著の真意を損なわないように配慮し、出典を明示すること」としている) 。
切れた力リスク検知力・知識
次の一手引用論文の全3時点データと掲載グラフを照合し、抜粋の根拠と省略された時点のデータ追記を求める。
03-032016年度抗生物質製剤パンフレット(2016 年 8 月作成)
何が起きたかG社のパンフレットで、原著に存在する他の内服薬と静注抗菌薬のデータが未掲載のまま「バランス良く優れた抗菌力」というキャッチコピーが使われており、データの抜粋であることの明示もなく、自社製品への処方誘導が疑われる構成となっていた。
当局見解図の一部のみを抽出・加工することで、効能効果を誇大に見せている。 指定外の初期投与量を推奨、及び、データの比較において強調を行った事例【再掲】
切れた力リスク検知力・インテリジェンス
次の一手原著文献の全薬剤・全投与ルートのデータと掲載内容を照合し、未掲載項目の選択理由を書面で確認するとともに、抜粋表記の追記または全データ掲載を求める。
03-042017年度抗菌薬MR 提供資料及びホームページの臨床試験結果紹介
何が起きたかD社のホームページおよびMR提供資料で、抗菌薬の複数の比較試験グラフから対照薬のデータがすべて削除されており、非劣性試験として示した主要評価項目の判定結果(95%信頼区間による非劣性・優越の判断)も掲載されていなかった。
当局見解データの一部のみを抜粋することで、効能効果を誇大に見せている。
切れた力リスク検知力・知識
次の一手引用論文と掲載グラフを全評価項目で突合し、削除された対照薬データと欠落した統計評価結果の一覧を作成して、全項目の修正・追記を求める。
03-052017年度糖尿病治療薬簡易版製品パンフレット
何が起きたかE社の糖尿病治療薬パンフレットで、対照薬・100mg・300mgの3群非劣性試験のうち100mg群のみが「優れた血糖低下効果」として掲載されており、主要評価項目(52週)での自社品と対照薬の差は0.01%にすぎなかった。
当局見解データの一部のみを抜粋することで、効能効果を誇大に見せている。 優位なデータのみを抜粋し、本来の主要評価項目ではない薬力学的動態の評価を強調した
切れた力リスク検知力・知識
次の一手原著論文の全3群データと試験デザイン(非劣性)を掲載表題と照合し、対照薬群・300mg群データの追記と表題の修正を求める。
03-062017年度プロトンポンプ阻害薬パンフレット(2018 年 2 月作成)
何が起きたかF社のパンフレットで、胃内pHの推移グラフからベースラインと1日目のみを掲載して7日目データを省略し、類似薬より有利な時点のみが示されていた。また、研究の主要評価項目(24時間HTR)とは無関係な「pH到達時間」を示すタイトルが付けられ、論文の目的と乖離していた。
当局見解データの一部のみを抜粋することや、引用論文本来の目的にそぐわないタイトルを記載す ることで、効能効果を誇大に見せている。 非盲検期を含めたデータであったものを盲検期のみのデータに加工し、対照群との差を誇大
切れた力知識・リスク検知力
次の一手原著論文の全時点データおよび主要評価項目とパンフレットの掲載範囲・タイトルを照合し、省略された7日目データの追記と主要評価項目に即したタイトルへの修正を求める。
03-072017年度抗がん剤製品情報概要
何が起きたかG社の製品情報概要で、引用論文のプラセボ群奏効率13.0%(非盲検期に奏効した12例を含む)から当該12例を分子より除外し、プラセボ群奏効率を1%と表示したグラフが掲載されており、自社薬との差が実際より著しく拡大されていた。
当局見解データを修正することで、効能効果を誇大に見せている。
切れた力知識・リスク検知力
次の一手インタビューフォームおよび引用論文の奏効率データと製品情報概要の数値を突合し、分母・分子の操作内容と選択根拠を書面で確認して修正を求める。
03-082017年度抗がん剤MR によるプレゼンテーション(スライド・口頭説明)
何が起きたかH社のMRが薬剤部向けプレゼンで使用した抗がん剤のPFSグラフに、インタビューフォームや製品情報概要に存在しない補助線が12ヶ月時点(観察症例数が11例・5例のみ)に引かれており、科学的根拠を尋ねるとMRの説明が矛盾した内容となっていた。
当局見解補助線の追加と説明文によって、効能効果を誇大に見せている。
切れた力第六感・リスク検知力
次の一手補助線の科学的根拠(事前規定・観察期間中央値との関係)を書面で提出させ、承認資材との差分として記録し、審査部門に報告する。
03-092017年度糖尿病治療薬パンフレット(2017 年 5 月作成)
何が起きたかI社のパンフレットで、食後血糖の推移グラフに原著論文にない横軸への着色と160mg/dLの補助線が追加されており、他社製品との差が視覚的に強調されていた。
当局見解補助線の追加と着色によって、効能効果を誇大に見せている。
切れた力リスク検知力・知識
次の一手原著論文のグラフとパンフレットのグラフを重ねて着色・補助線の追加箇所を特定し、追加加工の根拠提示または削除を求める。
03-102017年度多発性硬化症治療薬パンフレット
何が起きたかJ社のパンフレットで、効能グラフの縦軸が引用論文の0〜100%から0〜50%に変更されており、別グラフには引用論文にないベースラインデータが追記されて、群間差が視覚的にわかりにくい構成となっていた。
当局見解軸の尺度の変更等によって、効能効果を誇大に見せたり、引用論文本来の目的をわかりづ らくしている。
切れた力リスク検知力・知識
次の一手引用論文の軸スケールと掲載グラフを比較し、軸変更箇所とデータ追記箇所を列挙して、元の尺度への復元および追記根拠の明示を求める。
03-112018年度脂質異常症治療薬プレゼンテーション用スライド
何が起きたか院内説明会のスライドで、低用量・高用量・プラセボの3群比較試験のうち低用量群とプラセボ群のみを示す複数のグラフが使用されており、高用量群を加えても効果に大差がないという審査報告書の情報が伝わらない構成となっていた。
当局見解3 群比較試験のうち、1 群または 2 群の結果のみを抽出してグラフを作成した。
切れた力リスク検知力・インテリジェンス
次の一手審査報告書の3群全データとスライドを照合し、高用量群が除外されているグラフを特定して全群データの追加掲載を求める。
03-122018年度乾癬治療薬新薬ヒアリング用資料
何が起きたか新薬ヒアリングで提示された安全性比較資料で、原著論文の副作用データの多くは引用・翻訳されていたが、自社製品にのみ発生し対照薬では発生しなかった「悪性腫瘍」の項目のみが意図的に除外されていた。
当局見解安全性について、特に重大かつ本剤に不利な情報のみ示さなかった。
切れた力リスク検知力・第六感
次の一手原著論文の全副作用項目と提示資料を突合し、悪性腫瘍データの提示を求めるとともに、意図的除外の可能性を審査委員会に報告する。
03-132018年度糖尿病治療薬医療関係者向け情報サイト上の製品紹介動画
何が起きたか医療関係者向け情報サイトの製品紹介動画で、本剤投与群とプラセボ群の血糖値推移グラフの凡例が逆に表示されていた。さらにグラフの縦横比が変更され、変動が小さく血糖コントロールが良好に見える形に加工されていた。
当局見解グラフの引用に当たり、不正確な引用や縦横比の調整を行った。
切れた力知識・リスク検知力
次の一手グラフの凡例・縦横比・データ値を原著論文および審査報告書と1項目ずつ照合し、逸脱箇所を記録して企業に是正を求める。
03-142018年度抗ウイルス薬製品紹介パンフレット
何が起きたか抗ウイルス薬の製品紹介パンフレットで、主要評価項目である罹病期間(対照薬との有意差なし)は数行の文章のみで紹介された一方、副次評価項目のウイルス力価関連結果は2ページにわたりグラフつきで本剤の優位性を強調する形で掲載されていた。
当局見解優位性を示すことができる副次評価項目の結果のみを詳細に紹介している。
切れた力リスク検知力・知識
次の一手審査報告書で主要評価項目の有意差を確認し、パンフレット内の主要・副次評価項目の掲載ページ数・記述量のバランスが恣意的でないかを点検する。
03-152018年度抗がん剤製品紹介パンフレット
何が起きたか抗がん剤パンフレットに掲載された第Ⅰ相試験結果で、他社製品と比べて副作用発現率が著しく低いと示されていたが、審査報告書には前投薬の記載があり、パンフレットにはその情報がなかった。また試験目的から「安全性の比較検討」が削除され、「薬物動態の同等性の検証」のみが記載されていた。
当局見解安全性を評価する上で必要な前投薬の情報を記載しなかった。
切れた力リスク検知力・知識
次の一手審査報告書と対照し前投薬の有無・試験目的の記載を確認し、安全性評価に影響する情報の削除を企業に指摘して記載の追加を求める。
03-162018年度気管支喘息治療薬プレゼンテーション用スライド、製品紹介パンフレット
何が起きたか気管支喘息治療薬の院内説明会で、第Ⅲ相国際共同試験の主要評価項目(年間喘息増悪率)について全例解析(各群約250例)の結果が提示されず、日本人サブグループ解析(各群約15例)の結果のみが紹介された。他の副次評価項目は全例で紹介されており、主要評価項目だけ症例数の少ないサブグループに差し替えられていた。
当局見解主要評価項目について、症例数の少ないサブグループ解析の結果のみを紹介した。
切れた力リスク検知力・知識
次の一手主要評価項目は全例解析結果の提示を企業に求め、サブグループ解析のみを用いる理由と統計的信頼性を確認する。
03-172018年度抗がん剤プレゼンテーション用スライド
何が起きたか院内説明会で、1次治療に抵抗性の患者を対象とした臨床試験において全例と日本人の奏効率を比較し「日本人には効果が高い」と説明されたが、審査報告書で確認すると1次治療の内容(A剤・B剤の使用割合)が両集団で大きく異なっており、差の原因となりうる交絡因子が説明されていなかった。
当局見解両者の前提条件の違いを示さずに、全例と比べて「日本人には効果が高い」と説明した。
切れた力リスク検知力・伝達力
次の一手審査報告書で1次治療レジメンの分布を確認し、前提条件の不均一性を根拠として「日本人への高い有効性」という説明の撤回を企業に求める。
03-182018年度糖尿病治療薬医療関係者向け情報サイト上の座談会記事
何が起きたか医療関係者向けサイトの座談会記事で第Ⅲ相試験の有害事象一覧が掲載されていたが、審査報告書で「多く認められた有害事象」とされているケトアシドーシス関連事象を含む複数の項目が一覧から削除されていた。
当局見解有害事象の一覧に、臨床試験で多く認められた事象を示さなかった。
切れた力リスク検知力・知識
次の一手審査報告書の有害事象リストと記事の一覧を突合し、削除された項目を特定した上で、安全性情報として適切に掲載するよう企業に求める。
03-192018年度抗リウマチ薬製品紹介パンフレット
何が起きたか抗リウマチ薬パンフレットで原著論文からの引用に複数の不備が見つかった。重篤な副作用の個別記載が省略・統合されていたほか、数値が原著論文と一致しない箇所があり、患者満足度調査では回答不明者の除外という集計条件の記載が省略されていた。
当局見解原著論文からの引用に当たり、不正確な引用や不適切な情報の削除・統合を行った。
切れた力知識・リスク検知力
次の一手原著論文と1対1で数値・副作用記載・集計条件を照合し、不一致・省略の全箇所を列挙して企業に修正を求める。
03-202018年度血友病治療薬プレゼンテーション用スライド
何が起きたか血友病治療薬の製品紹介プレゼンで、週1回投与群全体のうち指定週までに出血しなかった患者割合と並べて、途中で投与継続できなかった例(脱落例)を除いた完遂者のみを分母とする無出血率が提示された。後者のデータは総合製品情報概要・審査報告書に記載がなく、脱落バイアスを含む優良誤認を招くものだった。
当局見解恣意的かつ優良誤認を招きかねない解析結果を紹介した。
切れた力リスク検知力・知識
次の一手提示データの分母定義を総合製品情報概要・審査報告書と照合し、脱落例を除いた解析であるかを確認した上で、根拠文書のないデータ使用を企業に指摘する。
03-212018年度抗精神病薬企業担当者による口頭説明
何が起きたか院内勉強会でQT延長の懸念を問い合わせたところ、「海外12mg/日ではQT延長は認められなかった」との回答を受けた。しかし審査報告書を確認すると、国内試験でより低用量の投与においてQT延長が発生していた。
当局見解本剤に不利益となる国内試験の結果を示さず、海外試験の結果のみで安全性を強調した。
切れた力リスク検知力・知識
次の一手審査報告書で国内試験のQT延長データ(用量・発現状況)を確認し、企業担当者に国内データの開示を求め、安全性情報が適切に提供されているか再確認する。
03-222018年度抗がん剤企業担当者による口頭説明
何が起きたか新薬ヒアリングで提示されたKaplan-Meier曲線において、適正使用ガイドに「本剤の優位性は確認されていない」「造血幹細胞移植患者では対照群と比べてOS期間の短縮が認められた」と明記されているにもかかわらず、企業担当者はOS率が対照群を上回る一部の期間のみを取り上げて本剤の優位性を主張した。
当局見解本剤の優位性が確認されていないにもかかわらず、Kaplan-Meier 曲線の OS 率が上回って いる箇所のみを強調して、本剤の優位性を説明した。
切れた力リスク検知力・知識
次の一手適正使用ガイドを手元に準備し全期間のKM曲線と照合しながら説明を聴取する。説明が曲線の一部期間に限定されている場合は、全期間の解釈を企業に求める。
03-232018年度糖尿病治療薬製品紹介パンフレット
何が起きたか糖尿病治療薬パンフレットで、主要評価項目の結果を示すグラフの縦軸がHbA1c絶対値に変更されていた。原著論文・審査報告書の主要評価項目はHbA1c変化量であり、絶対値への差し替えは適切な引用ではない。
当局見解主要評価項目である変化量を絶対値に変更して、グラフを作成した。
切れた力知識・リスク検知力
次の一手グラフの縦軸定義を原著論文・審査報告書と照合し、変化量から絶対値への変更が主要評価項目の誤引用に該当することを確認して企業に修正を求める。
03-242018年度鎮痛薬製品紹介パンフレット
何が起きたか鎮痛薬パンフレットで本剤の血圧変化グラフが引用されていたが、原著論文では対照薬グラフも合わせて掲載されており、対照薬でも血圧の有意な上昇は認められていなかった。パンフレットでは対照薬グラフが省かれ、本剤のみが血圧上昇リスクのない薬剤のような印象を与えていた。
当局見解対照薬のグラフを示さず本剤のグラフのみを掲載することで、 本剤のみが血圧上昇リスク がないかのように見せた。
切れた力リスク検知力・知識
次の一手原著論文で対照薬の血圧グラフを確認し、本剤グラフのみの掲載が比較文脈を歪めていることを根拠として企業に対照薬データの併記を求める。
03-252019年度抗菌薬企業担当者による説明資料
何が起きたかMRが製品説明会スライドにおいて、適格基準や目的が異なる複数の臨床試験の結果を合算し、主要・副次評価項目を区別せず記載した上、非劣性試験の対照群も省略することで、本剤が全体的に優れているかのような印象を与えていた。また、RMPの説明がなく、肝障害患者に関する安全性情報も欠落していた。
当局見解複数の臨床試験の試験結果を合算して記載する等、本剤が他剤に比べて優れているかの ような印象を与えるデータの抜粋・加工・見せ方等が行われた。
切れた力知識力・リスク検知力
次の一手各試験の適格基準・目的・デザインを個別に示す表を資材に追加させ、合算表記の根拠を文書で確認する。RMPおよび肝障害患者への安全性情報の補足を求める。
03-262019年度利尿剤企業担当者による説明用資料
何が起きたか利尿剤のパンフレットにおいて、副作用発現率の掲載基準を原著論文(0.5%以上)より高い1.0%以上に設定したことで、原著に記載されていた3つの副作用が表から脱落していた。
当局見解副作用発現頻度が一定以上の副作用だけを示すことで、他に副作用が存在しないかのよ うに見える、原著論文からのデータの抜粋が行われた。
切れた力リスク検知力・知識力
次の一手原著論文と資材の副作用掲載基準を対照表で確認し、掲載基準が異なる場合はその根拠と省略された副作用の一覧を提示させる。
03-272020年度抗リウマチ薬対面の面談にて、企業担当者による口頭説明
何が起きたか抗リウマチ薬の臨床試験では本剤と他剤の切り替え投与が行われていたが、インタビューフォームや総合製品情報概要等の試験デザイン図から他剤の投与に関する記載が省略されており、本剤単剤への切り替えと誤解させる図表となっていた。
当局見解他剤との併用があるのに、併用していないと誤解を招くような図表の加工を行った。
切れた力リスク検知力・知識力
次の一手試験デザイン図と審査報告書の記述を照合し、他剤投与の有無を明示した正確な図への差し替えを求める。
03-282021年度関節機能改善薬オンライン製品説明会時に企業担当者から示されたスライド・口頭説明
何が起きたか関節機能改善薬のオンライン製品説明会で、副次評価項目のグラフが主要評価項目のグラフより大きく表示されており、担当者は副次評価項目であることを告げないまま有効性を説明していた。
当局見解説明時のスライドにおいて 1 枚の中に主要評価項目よりも副次評価項目のグラフを大き く記載していた。検証するために様々なデザイン上の要件を満たしているのが主要評価 項目の結果で最も重要で信頼できる。主要評価項目をメインに説明すべきである。説明資 料も誤解を与えかねないので主要評価項目よりも副次評価項目を大きく示すのは適切で ない。また、副次評価項目の結果を示して説明する場合は、あくまでも副次評価項目で参 考である旨を添えて説明する必要がある。
切れた力知識力・伝達力
次の一手スライドで主要評価項目のグラフを副次より大きく表示するよう差し替えを求め、口頭説明でも各評価項目の位置づけを冒頭に明示するよう是正を求める。
03-292021年度皮膚炎用薬オンライン面談時に企業担当者が提示した資料
何が起きたか皮膚炎用薬の試験では本剤群とA剤群の直接比較は行われていなかったが、提示されたグラフに原著論文にない両群の群間差推定値が追記されており、直接比較での優位性があるかのような印象を与えていた。
当局見解臨床試験の主要評価項目の結果を示すグラフ部分に、信頼性に欠けると思われるデータ がみられた。本剤群と A 剤群との直接比較がないにもかかわらず、同一グラフ上に、原 著論文にはない群間差推定値も記載したため、A 剤群と直接比較して本剤が優れている かのような印象を与えた。原著論文にはない数値をグラフ上に書き込んだという点で書 きすぎであり、注意して作図することが必要。
切れた力リスク検知力・知識力
次の一手グラフに追記された群間差推定値の原典を確認し、原著論文にない数値であれば削除した改訂版への差し替えを求める。
03-302022年度糖尿病・慢性心不全治療剤企業の WEB 製品説明会
何が起きたか糖尿病・慢性心不全治療剤のWEB説明会で、心不全適応では自社製品と競合品いずれも10mgのみ承認されているにもかかわらず、糖尿病治療の用量体系に基づいて自社品を「常用量」、競合品を「高用量」と表記した図表が使用されていた。
当局見解事実誤認を与えかねない図表を示し、自社製品を「常用量」 、他社製品を「高用量」と説 明した。
切れた力リスク検知力・インテリジェンス
次の一手適応ごとの承認用量を添付文書で確認し、心不全適応に絞った用量比較表への差し替えを求める。
03-312023年度高脂血症治療薬製薬企業担当者(オンライン)
何が起きたか高脂血症治療薬のオンライン説明会で、本剤の製剤特性の優位性説明に重度喘息患者を対象とした海外アンケート調査データが使用されていたが、対象疾患・医療保障制度のいずれも本剤の適応患者とは異なっていた。
当局見解医療制度や患者属性等も異なる海外文献のグラフから、自社製品に都合の良い部分を抜 粋して作成した資料をもとに情報提供を行った。
切れた力知識力・リスク検知力
次の一手引用文献の対象疾患・対象国・医療制度を確認し、本剤の適応患者を対象とした根拠への差し替えを求める。
03-322023年度高脂血症治療薬製薬企業担当者(オンライン)
何が起きたか高脂血症治療薬のオンライン説明会で提示されたグラフは、元文献に5項目のデータがあるにもかかわらず、本剤が従来薬より有利に見える2項目のみを抜粋したものだった。
当局見解原著論文等から図表を引用する際に、データの抜粋・修正・統合を行うことはガイドライ ン違反となる。
切れた力リスク検知力・知識力
次の一手元グラフの全5項目と資材の2項目を対照し、抜粋の根拠を書面で確認する。根拠が示せない場合は全項目掲載への差し替えを求める。
03-332023年度抗ウイルス剤電子メールによる DM
何が起きたか抗ウイルス剤のメール一斉配信において、相互作用を比較したグラフから、原著論文に存在する「ノンインタラクション(いずれの薬剤を選択しても差のないグループ)」の部分が削除されていた。
当局見解原著論文等から図表を引用する際に、データの抜粋・修正・統合を行うことはガイドライ ン違反となる。
切れた力リスク検知力・知識力
次の一手配信資料のグラフと原著論文の図を直接対照し、削除された部分を確認した上で、原著を正確に反映した資料への差し替えを求める。

しくじりの解剖 ── カテゴリー一覧(全 8 区分)

  1. 01. 未承認・適応外の効能効果・用法用量を示す(33件)
  2. 02. エビデンスなし・信頼性を欠く説明(69件)
  3. 03. データの抜粋・改変・恣意的加工(33件)(本カテゴリー)
  4. 04. 誇大・事実誤認の表現(28件)
  5. 05. 有効性のみ強調・安全性を軽視した情報提供(22件)
  6. 06. 他社製品の誹謗・中傷(28件)
  7. 07. 利益相反(COI)の不開示と講演・処方誘導の逸脱(10件)
  8. 08. 分類横断・手続き不全による複合違反(4件)
この区分の要点
  1. グラフの視覚操作(軸の目盛変更・補助線の追加・恣意的着色)は数値を変えなくても誇大広告の手段になる。審査の第一手順は原著の図との並列比較。
  2. 対照群データの削除、国内試験の不掲載、副次評価項目への差し替えはいずれも「都合の良い部分だけを見せる」行為。元の試験デザインと引用元の照合が必須。
  3. 「データを使っている」という事実は正確性の保証にならない。何が削られたか、何に差し替えられたかを問うことが審査の核心であり、その差分を記録・指摘することが審査者の役割。
出典・参考
  1. 厚生労働省「医療用医薬品の販売情報提供活動監視事業(旧:広告活動監視モニター事業)報告書」(2016〜2024年度)。
  2. 薬機法第66条(誇大広告等の禁止)
  3. 販提G 第1の3 原則(1):正確な情報提供の4要件——最新の科学的知見を総合的に提供すること
  4. 販提G 第1の3 原則(2):七つの禁止行為——恣意的・誇大な表現および片面的な情報提供の禁止