第3の1は、担当者が守るべき規範の出発点を定める。「本ガイドラインを遵守して活動を行う」という一文は短いが、その内実は深い。特に第1の3に列挙された活動の原則に反することを「行わない」と明示することで、原則規定を担当者個人の行動義務にまで引き下げている。
01「遵守」が意味すること——知っている・理解している・実行する
担当者はGLを単に配布物として受け取るのではなく、内容を理解したうえで自分の行動基準として採用することが求められる。「遵守」の実質的な意味は三層構造になっている。第一に、GLが何を定めているかを知っていること。第二に、各規定がなぜ存在するかを理解していること。第三に、現場の具体的な状況でその規定を実行できること。知識だけでは不十分であり、実行が伴わなければ遵守とは言えない。
So what(意味すること): 担当者は「会社の指示に従っていれば問題ない」という受動的姿勢では不十分であり、自らGLを参照・理解し、現場判断に反映させる義務を負う。
So why(なぜそう定めるか): 現場では想定外の質問・状況が必ず生じる。そのとき担当者がGLの趣旨を理解していなければ、資材の範囲外の情報を根拠なく提供したり、不正確な回答をしてしまう。「指示された通りにやった」では患者安全の観点から責任を免れないため、個人の理解と判断力が不可欠である。
02第1の3の原則——担当者にとっての行動規範
第1の3は販売情報提供活動の原則として以下を定めている。(a)科学的・客観的根拠に基づく正確な情報の提供、(b)医薬品の適正使用に資する情報提供、(c)医療機関等における利益相反の防止に関する規定への配慮、(d)医療関係者の時間・業務を不当に妨げない活動、などが含まれる。第3の1は、担当者がこれらを自らの活動規範として内面化することを求めている。
実務上の含意として、たとえば担当者が医師から承認外使用についての質問を受けた場合、原則(a)および(b)に従い、科学的根拠が確立されていない情報を積極的に提供することは第1の3に反する活動となる。現場の担当者がこの判断を自力で行えなければ、GLは機能しない。
So what(意味すること): 第1の3の原則は「企業の努力目標」ではなく、担当者が現場で守るべき行動基準として機能する。違反は個人の責任として問われうる。
So why(なぜそう定めるか): 担当者と医師・薬剤師の対話は、多くの場合リアルタイムで行われる。事後に企業が修正できる環境にない以上、その場での正確性と適正性は担当者個人の判断力にかかっている。原則規定を個人の義務として明文化することで、対話の質を担保する仕組みとなる。
03遵守義務と免責の境界線
「会社が作った資材を使っていれば免責される」という考え方は誤りである。資材の審査が適切に行われていても、担当者が独自の補足説明や追加データを口頭で提供すれば、第3の1の遵守義務に反しうる。資材の範囲を超える情報提供は担当者個人の判断に依存するため、そこにGLとの齟齬が生じた場合、企業の審査体制が担当者個人の責任を代替することはできない。
遵守義務の観点から担当者に求められるのは、(1)資材の内容に沿った情報提供にとどめる自律性、(2)不確かな情報を求められた際に「確認してからご連絡します」と言える誠実さ、(3)GLに反すると判断した活動を上長に報告する透明性の三点である。
So what(意味すること): GLの遵守は「指示通りに動く」こととは異なる。担当者は自分の発言・行動がGLに照らして適切かを随時判断する義務を持つ。
So why(なぜそう定めるか): 情報提供の不正確さや不適切な内容が患者の診療に影響した場合、その責任は企業のみならず実際に情報を伝えた担当者にも及ぶ。明文の義務を課すことで、担当者が「言われたからやった」という状況を構造的に防ぎ、一人ひとりが判断する主体であることを確認させる意味がある。