販提G第4章第4節は、本ガイドライン以外にも遵守すべき規範が存在することを明示する規定である。販提Gを守るだけで十分と誤解する企業がないよう、他の法令等との関係を明確に位置づけている。
01公正競争規約との関係
医療用医薬品の公正競争規約は、薬機法とは独立した不当景品類及び不当表示防止法(景表法)に基づく業界自主規約であり、医療関係者への提供物品・接待等を規制する。販提Gが情報提供の「内容と方法」を規律するのに対し、公正競争規約は情報提供に付随する「物品・金銭・便宜の提供」を規律する。
So what(意味すること): 情報提供が販提G上適切であっても、その場で配布した景品や提供した食事が公正競争規約の上限を超えれば、別途の違反となる。二つの規制は相互補完的であり、両立しなければならない。
So why(なぜそう定めるか): 情報提供の「質」と、それに付随する「利益提供」は分離して規制されている。合法な情報に非合法な利益誘導が付けば、情報の中立性そのものが汚染されるからである。
02薬機法その他の関連法規
医薬品医療機器等法(薬機法)第68条は、未承認の効能・効果の広告を禁じており、販提Gの規制と重なる部分を持つ。しかし薬機法は広告規制のみならず、製造・品質・流通・安全管理にわたる包括的な規制体系であり、情報提供活動はこれら全ての規定との整合を求められる。
So what(意味すること): 販提Gは薬機法の下位規範として位置づけられる。販提Gを遵守することは薬機法の一部を充足するが、薬機法全体を遵守することとは別の問題である。
So why(なぜそう定めるか): 販提Gのみを参照して活動設計を行うと、薬機法の他の条項(安全情報管理、GVP省令等)が視野から抜け落ちるリスクがある。複数の法規制が重なり合う意識を持つことが実務上不可欠だからである。
03業界団体の自主規範
日本製薬工業協会(製薬協)のコード・オブ・プラクティス、米国研究製薬工業協会(PhRMA)の業界指針など、企業が所属する団体の自主規範も遵守対象となる。これらは法令よりも高い水準を自主的に設定していることが多く、「法令は守っているが業界規範には違反している」という状況は、コンプライアンス上の問題として扱われる。
So what(意味すること): 自主規範は任意ではなく、加盟している以上は遵守義務を負う実質的な規制である。自主規範への違反は、業界内での信頼失墜と行政からの追加規制誘発につながりうる。
So why(なぜそう定めるか): 自主規範は、法令が到達しきれない細部の実務水準を業界自身が設定したものである。それを無視すれば自主規制の実効性が崩れ、より厳格な法規制の導入を招く可能性があるからである。
04複数規範の同時充足という実務課題
販提G・公正競争規約・薬機法・業界自主規範の4層を同時に満たすことは、現場の担当者にとって複雑な課題となる。一つの活動が複数の規範それぞれの該当条項を同時にクリアしているかを、個別に確認する必要がある。「販提GのレビューだけでOK」という誤解は、他の規範での違反リスクを生む。
So what(意味すること): 情報提供活動の審査プロセスは、販提Gのみを参照するシングルレイヤー審査では不十分である。適用される全規範を対象としたチェックリストを制度として整備する必要がある。
So why(なぜそう定めるか): 法令の形式的な充足だけを目的とした審査は、規制の実質を損なうリスクを常に抱えている。複数の規範が同時に視野に入ることで、活動全体の質が保たれ、患者・社会への説明責任が実現されるからである。