カテゴリー02には2016年から2024年にかけて69件の事例が収録されている。共通する構造は単純だ。自社製品の有効性・安全性・他剤への優位性を主張する際に、その根拠が存在しないか、著しく不十分である。症例数が10例未満のデータ、査読なしのポスター発表、担当者個人の感想、民間ニュース記事——これらが「エビデンス」として流通した。また、非劣性試験の結果を優位性の証明として転用する、作用機序の違いだけで安全性の差を断定する、RMPに記載された重要リスクを他剤と比べて「問題ない」と打ち消す——といった論理の飛躍も繰り返し現れる。医療関係者は情報を精査する専門職であると同時に、時間的制約の中で判断を求められる。根拠のない主張はその判断を歪め、患者への不利益に直結する。販提G原則(1)が求める「科学的・客観的な根拠に基づく正確な情報」とは、こうした事例群の裏返しとして読むことができる。

「結衣、このカテゴリーの事例を20件ほど読んで、何か気づいたことはある?」

結衣「数が多くて驚きました。69件ですよね。しかも2016年から2024年まで途切れずに出てきている。同じ失敗が繰り返されています」

「そう。では、その失敗の中身を少し整理してみて。『エビデンスなし』といっても、何種類かパターンがあるはずだよ」

結衣「読んでいると、大きく三つに分かれる気がします。一つ目は、そもそも根拠が存在しないケース——担当者の感想とか、権威ある先生が言っていたという伝聞とか。二つ目は、根拠は存在するけれど信頼性が低いケース——症例数が少ない、査読なしのポスター、民間ニュースが情報源。三つ目が一番厄介で、根拠は存在するが論理を誤って使っているケース——非劣性試験の結果を優位性の証拠として出すとか、作用機序だけで安全性の差を断定するとか」

「よく整理できてる。三つ目の『論理の誤用』は、審査の難易度が高い。なぜか分かる?」

結衣「数字が出ているから、ぱっと見ると正当に見えるからですか?」

「そう。『試験結果』という形式を持っていると、受け手は内容を精査する前に信頼してしまいやすい。非劣性試験が証明するのは、あくまで『一定の差以内に収まること』であって、優位性ではない。それを資材で『本剤の方が優れています』と言い換えるのは、データの偽造ではないが事実の歪曲だ。薬機法66条でいう『虚偽・誇大』に当たる可能性がある」

結衣「販提Gの原則(1)にある4要件のうち、『科学的・客観的な根拠』という部分がまさにここに刺さってくるんですね」

「その通り。では逆に聞く。審査者として、どこを見れば信頼性を判断できると思う?」

結衣「論文の引用であれば、査読の有無、症例数、試験デザイン、主要評価項目か副次評価項目かの区別……あと利益相反の開示も確認しないといけないですね」

「そう。それと、口頭説明や講演での発言は資材とは別の落とし穴がある。記録が残りにくいから担当者が根拠のない発言をしやすい。事例集の中でも、Web講習会や訪問時の口頭説明でのエビデンスなし主張が多い。資材だけ見ていると見落とす」

結衣「つまり、資材審査に合格していても、実際の情報提供の場では別の問題が発生しうるということですね。審査の範囲を意識しながら、何をフォローアップで確認するかまで考える必要がある」

「その視点が持てれば、このカテゴリーの事例は単なる失敗例の羅列ではなく、審査の設計を問い直す材料になる」

報告書からの実例 69 件

02-012016年度糖尿病治療薬パンフレット(2016 年 12 月作成)
何が起きたかL社が糖尿病治療薬のパンフレットに「血糖変動を平坦化する」効果を示す他剤比較グラフを掲載したが、症例数はわずか9例(自社4例)で統計解析も実施されていなかった。
当局見解症例数が少ないデータをもとにプロモーションを行っている。 他の医薬品との差別化のために、臨床データのない効能効果を紹介した事例【再掲】
切れた力知識・リスク検知力
次の一手症例数と統計解析の不在を具体的に指摘し、承認効能の範囲を超えた主張に当たるとして是正を文書で求める。
02-022017年度消化薬MR による口頭説明
何が起きたか原料供給不足を背景に、K社MRがモニター医療機関のDI担当者へ「半量投与でも効果は全く変わらない」と根拠なく口頭説明した。試験データは用量依存的な吸収率上昇を示唆しており、半量同等を支持する根拠とはなりがたかった。
当局見解効能効果について根拠のない情報提供を行っている。
切れた力知識・信頼密度
次の一手インタビューフォームと審査報告書の用量依存性に関する記載箇所を示したうえで、半量同等の根拠データを文書で提出するよう企業に求める。
02-032017年度局所麻酔薬MR による口頭説明・パンフレット・商業誌の掲載記事
何が起きたかL社MRが自社局所麻酔薬クリームについて「剤型の異なる他社テープ製剤と同程度の効果」と説明したが、後日「MR同士の立ち話を勘違いして伝えた」と回答した。また、論文に掲載されていないグラフを商業誌記事体広告で使用し効能効果を主張していた。
当局見解他剤との比較について根拠のない情報提供を行っている。また、論文に掲載のないデータ を用いて効能効果を主張している。
切れた力知識・信頼密度
次の一手根拠のない他剤比較発言と論文未掲載データの使用を記録に残し、企業の医薬情報担当部門へ是正を申し入れる。
02-042017年度保湿剤MR による口頭説明
何が起きたか手足症候群に関する特定製剤の文献提供を依頼したところ、M社MRは「ほぼ当社製品が使われていると考えて差し支えない」との口頭発言のみで、具体的な文献を提示しなかった。
当局見解根拠のない情報提供を行っている。
切れた力知識・信頼密度
次の一手実際の文献リストの提出を改めて書面で求め、根拠のない口頭発言の記録を残す。
02-052017年度鎮痛剤MR による口頭説明
何が起きたかN社MRが海外由来の鎮痛薬(医療上必要性の高い未承認薬として発売)を「日本人向けに開発した」と繰り返し説明したが、添付文書・インタビューフォーム・審査報告書のいずれにも該当する記載は存在しなかった。
当局見解根拠のない情報提供を行っている。
切れた力知識・リスク検知力
次の一手「日本人向けに開発」の根拠データを文書で提出するよう求め、提示できない場合は発言の撤回と是正を申し入れる。
02-062017年度胃炎・胃潰瘍治療剤MR による口頭説明
何が起きたかO社MRがオーソライズド・ジェネリック(AG)について「製剤方法や添加物が先発と全て同等であるため最適」と説明し、他社後発品との効能差を示唆したが、データの提示を求めると根拠がないと回答した。企業全体でこの販促手法が用いられている可能性が指摘された。
当局見解根拠のない情報提供を行い、他社製品の誹謗と思われる発言を行っている。
切れた力知識・リスク検知力
次の一手AGと他社後発品の効能差を示すデータの提出を求め、提示できない場合は組織的な誤情報提供として企業の上位窓口に申し入れる。
02-072017年度局所麻酔薬MR による口頭説明
何が起きたかP社MRが後発の局所麻酔薬について「データとして明確に提示できるものはないが」と前置きしたうえで、均一な薬剤分散と低いかぶれ発生率で他剤より優れると説明した。インタビューフォームにも同社ウェブサイトにも根拠となる記載は確認できず、このような情報提供が日常的に行われている様子だった。
当局見解根拠のない情報提供を行い、他社製品の誹謗と思われる発言を行っている。
切れた力知識・信頼密度
次の一手均一分散とかぶれ低減の根拠となる社内試験データまたは公開資料の提出を求め、確認できなければ当該説明の撤回を文書で申し入れる。
02-082017年度造影剤MR によるプレゼンテーション(スライド・口頭説明)
何が起きたかV社MRが医局向け製品説明会で1施設の造影剤6剤比較データ(n数・統計検定なし)を示し自社製品の副作用発現率が最低だと主張した。さらに発現率が最高だった他社製品について「もともと副作用が多いと言われている」と誹謗する発言を行った。
当局見解1 施設の他社製品との比較データをもとに安全性を主張したり、他社製品の誹謗と思われ る発言を行っている。
切れた力知識・リスク検知力
次の一手n数・統計検定のない1施設データによる安全性主張と他剤誹謗発言を記録し、適正な比較根拠データの提出と誹謗発言の撤回を求める。
02-092017年度抗リウマチ薬MR による申請資料
何が起きたかW社MRがプロモーション許可申請資料に「脂質異常の発現が類薬より少ない」と記載したが、根拠を尋ねると添付文書に記載された副作用発現頻度を他剤と単純比較しただけと回答した。試験デザインが異なる添付文書間の数値比較は安全性の優位性の根拠にはならない。
当局見解不適切なデータの比較によって、安全性を誇大に見せている。 根拠なく優位性を主張したり、論文に未掲載のデータをもとに PR した事例【再掲】
切れた力知識・インテリジェンス
次の一手試験デザインが異なる添付文書間の単純比較では安全性の優位性を示せないことを指摘し、申請資料から当該記載の削除を求める。
02-102018年度鎮痛薬企業担当者による口頭説明
何が起きたか担当者が鎮痛薬について作用機序(CYP非関与・グルクロン酸抱合)を根拠に「相互作用がなく他社より安全」と説明したが、添付文書には併用注意薬の記載があり、実際の併用試験データは示されなかった。
当局見解実証したエビデンスを示さずに、作用機序のみで他剤に対する優位性を説明した。
切れた力知識・リスク検知力
次の一手添付文書の併用注意事項を提示したうえで、作用機序だけでは実際の安全性を証明できないとして、相互作用試験データの提出を求める。
02-112018年度酸分泌抑制薬企業担当者による口頭説明
何が起きたか担当者が逆流性食道炎の維持療法に対して酸分泌抑制薬5mg製剤の使用を勧奨し、10mg製剤のデータを援用して「5mg×2回の方が10mg×1回より効果が高い」と説明したが、5mg製剤に関する試験は審査報告書に存在しなかった。
当局見解異なる規格の製剤の情報を援用し、エビデンスに基づかない説明を行った。
切れた力知識・インテリジェンス
次の一手審査報告書に5mg製剤の維持療法データがないことを確認したうえで、異なる規格への拡大解釈説明の根拠資料を提出するよう求める。
02-122018年度漢方薬プレゼンテーション用スライド、製品紹介パンフレット
何が起きたか漢方薬の製品説明会で「全例で有効であった」と述べたが、投与10例のうち3例は来院しなかったため評価できず、実質7例の評価結果であった。この情報はスライドと製品紹介パンフレットの双方に掲載されていた。
当局見解10 例未満のデータをもとに有効性を主張した。
切れた力知識・リスク検知力
次の一手評価不能3例を含む実際の症例構成を確認し、「全例」という表現の訂正とスライド・パンフレット双方の修正を文書で求める。
02-132018年度保湿薬製品紹介パンフレット
何が起きたか保湿薬の製品紹介パンフレットにおいて、クロスオーバーなしのシングルアーム切り替え試験を根拠に「切り替え後の有効性・安全性を確認」と説明し、患者プロファイルや主要評価項目の詳細も示されていなかった。また、薬物動態説明のコントロール群が同パンフレット内の臨床試験と剤形が異なり、データ間の整合性が取れていなかった。
当局見解信頼性に欠けるデータや詳細の説明が不十分なデータを用いてプロモーションを行った。
切れた力知識・リスク検知力
次の一手各記載の根拠となる試験デザインを確認し、シングルアーム試験・患者アンケートを有効性エビデンスとして使用している箇所および剤形不整合の箇所に具体的な差し戻しコメントを付けて改訂を求める。
02-142018年度子宮筋腫治療薬企業担当者による口頭説明
何が起きたか子宮筋腫治療薬のMRが、非劣性試験における投与後開始初期の時点でのデータを流用し、「既存薬と比較して効果が速やかに認められる」と口頭で優越性を主張した。
当局見解非劣性試験の結果を用いて優位性を主張した。
切れた力知識・伝達力
次の一手非劣性試験の目的と優越性主張の論理的差異をMRに確認させ、当該口頭説明の内容を訂正するよう企業に求める。
02-152018年度抗ウイルス薬企業担当者の口頭説明
何が起きたか抗ウイルス薬について、MRが副次評価項目であるウイルス力価の減少速度および排出停止時間を根拠に、「他者へうつすリスクを減少させる可能性がある」と優越性を口頭説明した。感染リスク低下を直接示すデータは存在しなかった。
当局見解直接的なデータを示すことなく、他剤に対する優位性を説明した。
切れた力知識・リスク検知力
次の一手副次評価項目を主要評価項目と同等に扱っている点、および感染リスク低下の直接エビデンスが存在しない点を明示し、当該説明の撤回と修正を求める。
02-162018年度鎮痛薬医療関係者向け情報サイト上の製品紹介動画
何が起きたか医療関係者向け情報サイトの製品紹介動画で、医師が鎮痛薬を高齢者疼痛対策の「第1選択」として推奨したが、他剤を選ばない根拠は示されておらず、添付文書には高齢者で副作用が現れやすい旨が記載されていた。
当局見解十分な根拠なく医師個人の意見を宣伝に用いた。
切れた力リスク検知力・知識
次の一手添付文書の高齢者安全性情報との矛盾と比較根拠の欠如を指摘し、「第1選択」表現を削除・修正するよう企業に要請する。
02-172018年度抗菌薬企業担当者による口頭説明
何が起きたか医局での製品説明会において、抗菌薬の除菌率に関する非劣性試験の結果を用いて、本剤の優位性を強調するかのような説明が行われた。
当局見解非劣性試験の結果を用いて優位性を主張した。
切れた力知識・伝達力
次の一手非劣性試験の結果から優越性は主張できないことを担当者に伝え、説明会での発言内容の即時訂正と再説明を企業に求める。
02-182018年度抗アレルギー薬企業担当者による口頭説明
何が起きたか薬剤部向け説明会で担当者が、作成プロセスが不明な国土交通省の指針を根拠に「パイロットへの投薬制限がなく眠くならない」と説明し、粉砕時の味・においについては根拠のない主観的発言を行った。
当局見解プロモーションに不適切な資料を根拠とした説明や、根拠のない主観的な説明を行った。
切れた力知識・インテリジェンス
次の一手引用した指針の適切性と科学的根拠を企業に確認させ、臨床主張への使用可否を判断した上で該当資材の使用停止を求める。
02-192018年度高リン血症治療薬製品紹介パンフレット
何が起きたか高リン血症治療薬のパンフレットに「義歯にはさまりにくい」等の製剤的メリットが記載されていたが、その根拠データも比較対象も明示されていなかった。
当局見解十分なエビデンスを示すことなく、製剤的特徴をメリットとして説明した。
切れた力リスク検知力・知識
次の一手各メリット訴求について根拠データと比較対象を明示するよう改訂を求め、データが存在しない場合は当該表現を削除させる。
02-202018年度子宮内膜症治療薬企業担当者による口頭説明
何が起きたか院内説明会で子宮内膜症治療薬の担当者が「他社製品より味が良い」と発言した。確認したところ、根拠は担当者本人が服用してみた主観的感想であり、客観的なエビデンスは存在しなかった。
当局見解企業担当者個人の主観をもとに、他剤に対する優位性を説明した。
切れた力知識・リスク検知力
次の一手担当者個人の服用経験は他剤比較の根拠として認められないことを伝え、当該発言の撤回と根拠のない優越性表現の禁止を企業に求める。
02-212018年度漢方薬企業担当者による口頭説明
何が起きたか漢方薬の担当者が他社製品との比較資料を持参し「安価で論文数が多く品質が優れている」と説明したが、実際の1日薬価は本剤の方が高く、論文数のみをもって品質の優位性の根拠とする説明も不適切であった。
当局見解不正確な情報・理解に基づき、他社製品に対する優位性を説明した。
切れた力知識・インテリジェンス
次の一手薬価情報の事実誤りを具体的に指摘し、論文数と品質の同一視が不適切であることを確認した上で、当該比較資料の即時使用停止を求める。
02-222018年度利尿薬プレゼンテーション用スライド
何が起きたか薬剤部勉強会で利尿薬について「心不全による再入院を減少させる」と断定的に説明されたが、引用された原著論文の主題は再入院ではなく尿アクアポリン2との関係であり、心不全ガイドラインも長期予後改善効果が確立されていないと記述していた。
当局見解不十分なエビデンスしかないにもかかわらず、断定的な表現で有効性を説明した。
切れた力知識・リスク検知力
次の一手原著論文の研究目的とガイドライン記述を照合し、断定表現を「可能性を示唆する報告がある」レベルに修正するようスライドの改訂を求める。
02-232018年度抗がん剤企業担当者による提供資料
何が起きたか抗がん剤の担当者が包装変更の情報提供時に「活用してほしい」と述べ、本剤を扱った学会ポスター発表を撮影した写真を資料として提供した。そのポスターは結果の解釈に誤りがあり、正確性に欠けると判断された。
当局見解査読のないポスター発表の写真を情報提供に用いた。
切れた力リスク検知力・インテリジェンス
次の一手査読なしのポスター写真を医療情報として配布することの問題点を指摘し、当該資料を回収させるとともに、社内の情報提供基準に照らした審査プロセスの見直しを求める。
02-242019年度腎性貧血治療薬企業担当者による口頭説明
何が起きたか腎性貧血治療薬の国内第Ⅲ相試験では関節リウマチ患者が除外されていたにもかかわらず、担当者が「従来製剤で効果が薄かった関節リウマチ患者に効果が期待できる」と口頭で説明した。
当局見解臨床試験において対象から除外された疾患に対しても効果が期待できると説明した。
切れた力知識・リスク検知力
次の一手臨床試験の除外基準を担当者に確認させ、対象外疾患への効果言及が適応外使用を誘導しうることを伝え、当該説明を即時中止するよう企業に求める。
02-252019年度夜尿症治療薬企業担当者による口頭説明(企業の製品説明会の場において)
何が起きたか製品説明会において担当者が医療関係者の求めなく民間ニュースのWebページを提示し、国内ガイドラインに記載のない「次期改訂で推奨グレードAになる見通し」という未確定情報を根拠に製品の有効性を訴求した。
当局見解民間ニュースを情報源とする未確定の情報を用いて製品の有効性を訴求した。
切れた力知識・リスク検知力
次の一手情報の確定度と出典の信頼性を確認し、未確定の推定情報による有効性訴求を指摘して説明内容の撤回と是正を求める。
02-262019年度パーキンソン病治療薬企業担当者による口頭説明
何が起きたか担当者が他剤との比較試験を実施していないにもかかわらず、ドパミン等価換算表のみを根拠として「力価が高い本剤への変更例がある」と他剤に対する優位性を口頭説明した。
当局見解明確な根拠なく、他剤に対する優位性を説明し、本剤を推奨した。
切れた力知識・インテリジェンス
次の一手比較試験の有無を確認し、等価換算表のみを根拠とした優位性訴求は科学的根拠を欠くことを指摘して説明の撤回を求める。
02-272019年度利尿剤企業担当者による口頭説明、提供資料
何が起きたか担当者が使用成績調査のデータを用い「退院後は副作用が少なくなる」と説明したが、資料は入院・退院を比較した設計ではなく、担当者が「7日以内=入院、8日以降=退院」と独自に読み替えたうえ、副作用の発現パターンもその主張を支持しない内容だった。
当局見解エビデンスなく、副作用が少なくなると情報提供を行った。
切れた力知識・リスク検知力
次の一手使用成績調査の試験設計と実際の説明内容を照合し、担当者による恣意的なデータ解釈を特定して是正と訂正情報の提供を求める。
02-282019年度抗リウマチ薬企業担当者による持ち帰り資料
何が起きたか持ち帰り資料に「腎障害時でも安全に使用できる」と記載されていたが、第Ⅲ相試験では腎障害患者が除外されており、腎障害時の薬物動態は単回投与での確認にとどまっていた。
当局見解十分な検証が行われていないにもかかわらず、安全性を説明した。
切れた力知識・リスク検知力
次の一手添付文書・試験デザインと資料の安全性記載を照合し、除外基準の対象となった患者集団への過大な安全性標榜を指摘して資材の回収・修正を求める。
02-292019年度COPD 治療薬企業担当者による口頭説明
何が起きたか担当者が本剤の承認根拠であるIMPACT試験ではなく参考資料のFULFIL試験の結果を主体に有効性・安全性を説明しており、施設種別によって使用する試験データを使い分けていた。
当局見解承認時の評価試験ではなく参考の評価試験の結果のみから有効性及び安全性についての 情報提供を行った。不正確かつ不十分な情報提供となった。
切れた力知識・伝達力
次の一手承認根拠試験と参考試験の位置づけを整理し、対象者に応じて使用する試験データを使い分ける行為が不正確・不十分な情報提供にあたることを指摘して是正を求める。
02-302019年度鎮痛剤企業担当者による口頭説明
何が起きたか医師から「他製品より副作用が少ない根拠は何か」と質問されたのに対し、学術担当者が直接比較データは存在しないと認めながらも、論文化されていない医師向けアンケート結果のみを根拠に他剤に対する安全性優位性を説明した。
当局見解科学的根拠がなく、アンケート結果のみで安全性にかかる他剤に対する優位性を説明し た。
切れた力知識・リスク検知力
次の一手回答に使用した根拠資料を確認し、査読・論文化されていないアンケートのみによる安全性比較訴求は科学的根拠を欠くと指摘して発言内容の訂正を求める。
02-312019年度腎性貧血治療薬企業担当者による口頭説明
何が起きたかRMPおよび適正使用ガイドで血栓症リスクへの注意喚起が行われているにもかかわらず、担当者が「既存薬と比較して治療抵抗例や血栓症リスクが改善できる可能性がある」と明確な根拠なく説明した。
当局見解RMP 等でリスクについて注意喚起が行われているにもかかわらず、明確な根拠なく、他 剤に比べてリスクが改善できると説明した。
切れた力リスク検知力・知識
次の一手RMP記載のリスク注意喚起と説明内容の齟齬を確認し、安全性情報を軽視した根拠なきリスク改善訴求を指摘して説明内容の撤回と社内指導の実施を求める。
02-322019年度入眠剤Web 講習会
何が起きたかWeb講習会の演者医師が「ある著名な先生が**系睡眠薬は非常に良い薬と言っていた」と述べ、科学的根拠を示さない推奨説明を行った。スポンサー企業はこの発言に責任を負う立場にあった。
当局見解演者の発言であってもスポンサー企業に責任があるが、演者が「ある著名な先生が推奨し た」という根拠のない情報提供を行った。
切れた力リスク検知力・関係構築力
次の一手講習会のスポンサーとして演者の発言内容を事前に確認する体制が整っていたか検証し、根拠のない推奨発言についての訂正と再発防止策の提示を企業に求める。
02-332019年度緑内障・高眼圧症治療薬企業担当者による口頭説明
何が起きたか他剤が供給停止となったタイミングで担当者が、作用機序が異なり比較試験も実施されていない本剤について、比較試験や診療ガイドラインへの言及なく「代替薬となる」と説明した。
当局見解エビデンスなく、作用機序が異なる他剤の代替薬になるとの説明を行った。
切れた力知識・リスク検知力
次の一手作用機序の違いと比較データの不在を文書で確認し、代替可能との説明の撤回と、医療機関への訂正情報の提供を企業に求める。
02-342019年度抗がん剤企業担当者による口頭説明
何が起きたかグレード3以上の副作用発現率が既存薬と数%しか差がないデータにもかかわらず「副作用が少ない傾向」と説明し、さらに「経験がないから注意不要」「血液毒性は医師が慣れているから問題ない」と複数の根拠なき安全性説明を行った。
当局見解データ上大きな差がなかったにもかかわらず、副作用が少なく優れているとの情報提供 を行った。また、根拠のない説明を行った。
切れた力知識・リスク検知力
次の一手有害事象発現率の数値と統計的差異を確認し、優位性訴求の根拠の薄さ、相互作用および血液毒性に関する根拠なき安全性軽視発言の各問題点を列挙して是正を求める。
02-352020年度透析液オンライン面談にて、企業担当者によるデータ提供
何が起きたかインタビューフォームや審査報告書に掲載がなく引用元も示されていないデータを含む説明資材を用いて有効性の説明が行われた。また、本剤の承認根拠となった従来製品との有効性・安全性比較については説明がなかった。
当局見解引用元が示されていないデータをまとめた説明資材を用いた。
切れた力知識・インテリジェンス
次の一手説明資材に含まれる全データの引用元を確認し、出典不明のデータが含まれる資材の使用中止と修正、および承認根拠情報の適切な開示を企業に求める。
02-362020年度パーキンソン病治療薬オンライン面談における企業担当者による説明
何が起きたか投与タイミングについての質問に対し、担当者が問われていない他剤の吸収阻害を説明したが、審査報告書等に当該他剤の吸収阻害についての記載はなかった。
当局見解エビデンスなく、他剤の吸収阻害について説明した。
切れた力知識・リスク検知力
次の一手審査報告書・添付文書・インタビューフォームを確認して吸収阻害の根拠がないことを文書化し、根拠のない相互作用説明の撤回と訂正情報の提供を企業に求める。
02-372020年度抗リウマチ薬オンラインのグループ面談における企業担当者による説明
何が起きたかオンラインのグループ面談で、担当者が既存の同種同効薬との比較臨床試験が存在しないにもかかわらず「選択性が高く、既存の同効薬より優れている」と説明した。さらにRMPに重要な潜在的リスクとして記載されている有害事象についても適切に伝えなかった。
当局見解エビデンスなく、他剤よりも優れていると説明した。
切れた力知識・リスク検知力
次の一手同種同効薬との比較主張には直接比較試験の有無を必ず確認し、RMP記載のリスク情報が説明から欠落していないかを照合する。
02-382020年度鉄欠乏性貧血治療剤メール・電話による企業担当者の説明
何が起きたか鉄欠乏性貧血治療剤に関してRMPに重要な潜在的リスクとして明示されている疾患について質問したところ、担当者は「有害事象は認められないため臨床的に問題ない」と回答した。
当局見解RMP に重要な潜在的リスクとして挙げられているにもかかわらず、臨床的に問題ないと 説明した。
切れた力知識・リスク検知力
次の一手RMPの重要な潜在的リスク欄を事前に確認し、担当者の回答と照らし合わせて「問題ない」という断言が根拠を伴っているか検証する。
02-392020年度がん疼痛治療薬企業担当者による口頭説明
何が起きたかがん疼痛治療薬の担当者が、他剤は粘着力が強く剥がす際に痛みを伴うという理由で自社品が優れていると、エビデンスなしに口頭で説明した。
当局見解エビデンスなく、他剤に対し優位性があると説明した。
切れた力知識・伝達力
次の一手他剤との優位性主張には比較試験データの開示を求め、「体感」や「印象」に基づく説明と科学的根拠のある説明を区別して評価する。
02-402021年度化膿性疾患用薬オンライン面談時における企業担当者の説明
何が起きたか外用剤について「1日1回塗布でよい」と説明した担当者が、その根拠として経口剤のグラフを使用した。外用剤に関するエビデンスを尋ねると「ない」と回答した。
当局見解投与経路・製剤の剤形を考慮することなく、安易にエビデンスのない説明を行った。MR の知識不足が懸念される。
切れた力知識・伝達力
次の一手投与経路が異なるデータを混用して説明していないか確認し、剤形ごとの有効性データが揃っているかを担当者に明示的に問い直す。
02-412021年度不眠症薬電話による企業担当者の説明
何が起きたか不眠症薬について割線のない錠剤を「半錠にできる」と担当者が医師と薬剤部に説明したが、同社コールセンターへの確認では「半錠に関するデータはない」と回答があり、同社ホームページにも「半割は推奨しない」と明記されていた。
当局見解企業担当者が、同社が提供している情報内容を十分に把握せず、都合が良いように情報を 拡大解釈し情報提供を行ってきた。企業担当者の資質に懸念を感じる事例。
切れた力知識・信頼密度
次の一手用法用量に関わる説明は同社の添付文書・公式資料と照合し、担当者の口頭説明と公式情報源の間に矛盾がある場合はメーカーの窓口に直接確認する。
02-422021年度抗ウイルス薬電話による企業担当者の説明
何が起きたか抗ウイルス薬の担当者が、ヒアリングとは別の電話で「本剤は〇〇に効果が高い」と伝えてきたが、同社ウェブサイトに掲載されているのは前臨床データのプレスリリースのみであり、臨床上の効果が確立しているかのような伝え方は誤解を招く内容だった。
当局見解企業担当者から一貫性に欠ける情報提供が行われた。企業担当者の資質に懸念を感じる 事例である。
切れた力知識・伝達力
次の一手前臨床データと臨床データの区別が説明中に明示されているか確認し、発言が公式情報の範囲を超えていると判断した場合は書面での根拠提示を求める。
02-432021年度腎性貧血治療薬企業担当者による説明
何が起きたか腎性貧血治療薬の担当者が、臨床試験で血栓塞栓症の発現が少ないという事実がないにもかかわらず、「緩徐なHb値上昇が特徴であり血栓塞栓症リスクが低い」と説明し、競合他剤と比べてもリスクが低いという誤認を与えた。
当局見解企業担当者が、エビデンスがないにもかかわらず、血栓塞栓症リスクが低いと安全性を軽 視した情報提供を行った。企業担当者の資質に懸念を感じる事例。
切れた力リスク検知力・知識
次の一手安全性プロファイルの比較主張には臨床試験での実測データを確認し、機序から類推した安全性の説明を事実として扱わないよう審査する。
02-442021年度麻酔薬企業担当者による説明
何が起きたか麻酔薬について担当者が自発的に、添付文書に記載のない低用量(0.3〜0.6 mg/kg/時)が一部医療機関で使われているとして推奨したが、論文や学会発表等のエビデンスは一切存在しなかった。
当局見解企業担当者が、エビデンスがないにもかかわらず、添付文書には記載のない用法用量を説 明した。
切れた力知識・リスク検知力
次の一手添付文書外の用法用量に関する説明には裏付け文献の提出を求め、「他の施設で使われている」という説明が科学的根拠を代替しないことを確認する。
02-452021年度血液凝固阻止薬オンライン面談時における企業担当者の説明
何が起きたか血液凝固阻止薬の担当者が、各薬剤間の直接比較試験が存在せずガイドラインでも間接比較にとどまる状況で、「本剤は他剤より出血リスクの面で有意に安全である」と説明した。
当局見解直接的に比較したエビデンスがないにもかかわらず、同種同効の他剤よりも「有意に安全 である」と説明を行った。
切れた力知識・伝達力
次の一手「有意に安全」という表現には直接比較試験データの有無を確認し、間接比較のみで成立する主張かどうかを設計・背景因子の差異も含めて評価する。
02-462021年度多発性硬化症治療薬製品パンフレット
何が起きたか多発性硬化症治療薬のパンフレットに「長期予後を見据えて」「10年後を見据えて」と記載されていたが、長期投与試験データは存在せず、RMPの「重要な不足情報」にも「長期投与時の安全性」が明示されていた。
当局見解評価できる十分な試験データがなく、RMP の「重要な不足情報」にも挙げられているに も関わらず、製品パンフレットに根拠が希薄なキャッチコピーを記すのは適切ではない。
切れた力知識・リスク検知力
次の一手パンフレット上のキャッチコピーがRMPの「重要な不足情報」と矛盾していないか照合し、データが存在しない期間や領域を暗示させる表現を許容しない立場で審査する。
02-472021年度その他の代謝性医薬品オンラインでの企業担当者の情報提供
何が起きたか添付文書改訂に関するオンライン情報提供で、担当者がMACEや悪性腫瘍等による死亡リスクについて「増加することもありません」と記載した文書を送付した。確認したところ、これらのリスクはまだ評価中の試験で検証中であり、「データなし=安全」として扱う誤った表現だった。
当局見解評価する情報がなく明確になっていないことが、あたかも「情報がない」=「安全」と結 びつける不適切な情報提供である。
切れた力知識・リスク検知力
次の一手「〜のリスクはない」という断言に対しては評価試験の実施状況を確認し、試験実施中のリスクを「確認されていない=存在しない」と結論づける表現を問題として記録する。
02-482021年度腎性貧血治療薬企業担当者による説明
何が起きたか医師が薬剤部へ提出した採用申請書に「同効薬と比較して効果発現が早い」と記載されており、根拠資料を確認したところ、提示されたのは薬理作用が異なる腎性貧血治療薬との比較データであり、薬理作用類似薬との比較ではなかった。
当局見解比較対象を拡大解釈し、具体的に示すことなく「同効薬と比較して効果発現が早い」とい う曖昧な表現を用い誤認を与える説明を行った。企業担当者の資質に懸念を感じる事例。
切れた力知識・伝達力
次の一手「同効薬比較」という表現には比較対象薬の作用機序を確認し、薬理作用類似薬と異なる機序の薬剤を同一カテゴリとして扱っていないかを採用申請書の段階で精査する。
02-492021年度関節リウマチ治療薬企業担当者による説明・説明スライド
何が起きたか関節リウマチ治療薬の企業担当者が、薬剤部向け説明で異なる第Ⅲ相試験間の間接比較データを用い、本剤の帯状疱疹発生率が他の同効薬より低いと強調した。本剤のRMPに帯状疱疹が重要な特定されたリスクとして記載されているにもかかわらず、安全性を軽視した形でプロモーションが行われた。
当局見解企業担当者が、個別の情報を強引に結びつけた整合性に欠けるデータを強調して、安全性 を軽視した情報提供を行った。
切れた力知識・リスク検知力
次の一手間接比較データの使用制限とRMP記載リスクの取り扱いについて社内基準を確認し、該当スライドの修正または使用停止を担当部門に申請する。
02-502022年度無機質製剤企業担当者による説明(オンライン)
何が起きたか無機質製剤の電子添文には100mL生理食塩液での用時希釈が定められているにもかかわらず、企業担当者が医療従事者の質問なしに自発的に「他施設では50mL生食や5%ブドウ糖液でも問題なかった」と口頭で説明した。いずれの投与方法にもエビデンスがなく、添文逸脱の使用を誘導する情報提供だった。
当局見解医療従事者からの質問があったわけではない中、企業担当者がエビデンスのない投与方 法を積極的に説明するのは不適切である。
切れた力知識・リスク検知力
次の一手添文の用法・用量から逸脱した投与方法を自発的に案内することは薬機法68条の2の情報提供義務の趣旨にも反するため、担当者へのフィードバックと再教育を医療機関から企業に申し入れる。
02-512022年度免疫疾患治療薬企業担当者による説明(オンライン)
何が起きたか免疫疾患治療薬の企業担当者が、国際共同第Ⅲ相試験の全体集団と日本人部分集団のグラフを並べ、「日本人でより高い有効性が期待できる」と説明した。審査報告書は「全体集団と日本人部分集団の有効性に顕著な差異は認められなかった」と記載しており、直接比較データも存在しないため根拠を欠く説明だった。
当局見解全体集団と日本人集団との直接比較をしたデータがないにもかかわらず、企業担当者が 自発的に、日本人でより高い有効性が期待できると説明した。医療従事者から「日本人で のデータはどうか」と質問されたことに対し、日本人でのデータを紹介すること自体は問 題ないが、本事案はエビデンスなく、日本人でより有効性が高いと説明しており、不適切 である。
切れた力知識・インテリジェンス
次の一手部分集団データと直接比較データの違いを担当者に明示するよう企業に要求し、審査報告書の記載と矛盾する説明が再発しないか今後の情報提供を注視する。
02-522022年度抗てんかん剤企業担当者による説明(オンライン)
何が起きたか抗てんかん剤の説明会で企業担当者が「効果の強さ」を初回単剤療法の要件として示すスライドを提示したが、データによる裏付けはなく、確認したところ「臨床で使っている先生からそのように聞いている」という回答だった。科学的根拠なく有効性の印象を与えるスライドが使用されていた。
当局見解エビデンスなく、「効果の強さ」があると印象づけるように説明した。
切れた力知識・リスク検知力
次の一手根拠のない有効性訴求スライドの使用中止を企業に要求し、スライドの科学的根拠審査プロセスが機能しているか確認を求める。
02-532022年度その他の循環器官用薬企業担当者による説明(オンライン)
何が起きたか循環器官用薬の企業担当者が、2021年版治療ガイドラインに本剤の記載はないとしながらも「追補版に掲載予定で、既存薬より推奨度が高くなることが予想される」と説明した。この情報に根拠はなく、実際に最新版ガイドラインにも掲載されていなかった。
当局見解根拠なく、治療ガイドラインに掲載される予定と説明し、推奨度が他剤よりも高くなるこ とが予想されるとプロモーションを行った。治療ガイドラインに掲載される予定という 情報に明確な根拠があればプロモーションとしては問題ないが、根拠がないのであれば 不適切である。
切れた力知識・インテリジェンス
次の一手ガイドライン掲載に関する将来予測を根拠なく伝えることは薬機法66条の誇大広告に抵触しうるため、該当説明の撤回と文書による謝罪を企業に求める。
02-542022年度その他の呼吸器官用薬企業担当者による説明(オンライン)
何が起きたか呼吸器官用薬の企業担当者が質問されていないにもかかわらず、「ある大学病院の医師がおっしゃっていた」として他社製品より副作用が出にくいと自発的に説明した。「データはないので参考として」と断り書きを付けたものの、他社製品名を出した上でのエビデンスのない優越性訴求だった。
当局見解データがないにもかかわらず、医師の意見を根拠に他剤よりも副作用が少ないと説明を 行った。「データはないので参考として」と断ってはいるもののエビデンスのない説明を 行うのは不適切と言える。
切れた力知識・リスク検知力
次の一手他社製品名を挙げた上での口頭の優越性訴求は販提Gの原則(1)の科学的根拠要件および原則(2)の七つの禁止行為に抵触するため、企業にその旨を指摘して説明内容の是正を求める。
02-552022年度免疫疾患治療薬企業担当者による説明(オンライン)
何が起きたか免疫疾患治療薬の採用審査ヒアリングで企業担当者が作用機序の結合部位の違いを根拠に「他の3種類の同効薬より優れている」と説明した。医療従事者が文献・データを確認したところ、どちらが優れているかを示す比較データは存在しないと認めた。
当局見解エビデンスがないにもかかわらず、作用機序の違いをもって他剤よりも優れていると説 明するのは不適切である。
切れた力知識・インテリジェンス
次の一手作用機序の相違を臨床的優越性の根拠として用いることは許容されないため、採用審査の場で誤った印象を与えた点について企業に説明の修正を求め、採用判断の参考記録に注記する。
02-562022年度先天性代謝異常症治療薬企業担当者による説明(オンライン)
何が起きたか先天性代謝異常症治療薬の電子添文改訂説明の場で、企業担当者が改訂内容と無関係に「凍結乾燥製剤は液剤より搬送時の衝撃への安定性が高い」と自発的に説明した。凍結乾燥製剤と液剤の安定性を比較したエビデンスは存在しない。
当局見解凍結乾燥製剤と液剤について安定性を比較したエビデンスがないにもかかわらず、自社 の凍結乾燥製剤の優越性を説明するのは不適切である。
切れた力知識・リスク検知力
次の一手添文改訂説明の場で無関係な優越性訴求が自発的に行われた点を記録し、企業に根拠のある情報のみを提供するよう書面で申し入れる。
02-572022年度その他の腫瘍用薬企業担当者による説明(オンライン)
何が起きたか腫瘍用薬のオンライン面談で企業担当者が自社製品の5年フォローアップデータを提示した後、他社製品名を挙げて「他社製品ではここまでのデータは出ていませんでしたが、先生どのようにお考えでしょうか」と質問し、医療従事者から他社製品への否定的コメントを引き出そうとした。他社製品との直接比較データは提示されていない。
当局見解他社製品と直接比較したデータがないにもかかわらず、自社製品の臨床試験の結果のみ を示しながら「他社製品ではここまでのデータは出ていない」と自社製品の優越性を説明 するのは不適切である。
切れた力第六感・リスク検知力
次の一手医療従事者から他社製品への批判的コメントを誘導する手法は販提Gの原則(2)の禁止行為に相当するため、その場でMRの意図を確認し、やり取りの記録を施設内の担当窓口と共有する。
02-582022年度糖尿病治療薬企業の WEB 製品説明会
何が起きたか糖尿病治療薬のWEB講演会で、「他剤はCKD適応があるが本剤はどうか」という質問に対し、企業担当者が「本剤の開発治験は腎硬化症例を含みより実態に近い」と他剤の治験設計を批判的に比較して回答した。腎生検実施状況を問われると「知らない」と答え、自剤の治験詳細も把握していなかった。
当局見解医療従事者からの質問に対する回答として治験の状況を説明するのは問題ないが、エビ デンスがあること、他社製品を誹謗中傷しない形で説明するなど、留意する必要がある。
切れた力知識・インテリジェンス
次の一手自剤の治験設計を把握しないまま他剤の試験設計を批判する回答は情報精度と信頼性の両面で問題があるため、企業に正確な治験情報の文書提供を要求し、口頭回答への依存を避ける。
02-592023年度耳鼻科用剤企業担当者による説明(オンライン)
何が起きたか耳鼻科用剤の説明会で企業担当者が、第3相試験の評価委員会に当該地域在住の医師が複数参加していることを挙げ、「よく効く、期待している薬剤という評価をいただいている」「本県にゆかりある薬剤」と説明した。科学的・客観的根拠のない権威者の感想を引用した情報提供だった。
当局見解科学的または客観的な根拠なく権威者等の感想を引用し、恣意的な自社製品に関する情 報提供を行った。
切れた力知識・リスク検知力
次の一手権威者の感想を地域帰属とともに用いた説明は恣意的な購買誘導に当たるため、企業に科学的根拠に基づく情報提供への切り替えを文書で求める。
02-602023年度制酸・緩下剤企業担当者による説明(直接対面)
何が起きたか制酸・緩下剤の説明会で企業担当者が「入れ歯の患者にざらつき感が少ない」と説明した。薬剤部がデータを求めると「アンケートなどはなかった」と認め、後日の回答も全国MRからの口コミと粒子径に関する推論に留まった。客観的データのない使用感の訴求だった。
当局見解科学的または客観的な根拠なく自社製品に関する情報提供を行った。
切れた力知識・リスク検知力
次の一手口コミと推論のみを根拠とした使用感の訴求はエビデンスなし情報提供に当たるため、企業に客観的データが得られるまで当該説明を控えるよう申し入れる。
02-612023年度抗悪性腫瘍剤企業担当者による説明(直接対面)
何が起きたか抗悪性腫瘍剤の病院ヒアリングで、MRが日本人と外国人の副作用発生数の差について「日本の医師が真面目なので報告が多い」と科学的根拠のない説明を行った。PMDAの審査報告書には国内外差について安全性上の注意が明記されており、MRはその事実を把握していなかった。
当局見解日本人と外国人との副作用発生数の違いの理由について、MR がエビデンスのない説明を 行った。国内外差については審査報告書にも言及があるが、MR がこの事実を認識してお らず、安全性に関する情報を適切に提供できていないことが示唆される。
切れた力知識・リスク検知力
次の一手審査報告書の安全性評価セクション(国内外差の記載)を確認し、MRが提供した説明との齟齬を自社の安全性担当部門に報告する。
02-622023年度鉄欠乏性貧血治療剤企業担当者による説明(オンライン)
何が起きたか鉄欠乏性貧血治療剤のオンラインヒアリングで、MRが他社製品と比較して「本剤は免疫原性が低く過敏症が起こりにくい」と説明したが、後日の確認で他社製品との比較免疫原性試験は実施されていないことが判明した。
当局見解他社製品と比較したデータ(エビデンス)がないにもかかわらず、他社製品名を出して自 社製品の優位性に言及した不適切な情報提供である。
切れた力知識・インテリジェンス
次の一手自社製品と他社製品との比較を主張する場合は、資材審査段階でヘッドtoヘッド試験の有無を必ず確認し、試験が存在しない比較表現は削除するよう申し入れる。
02-632023年度耳鼻科用剤企業担当者による説明(オンライン)
何が起きたか耳鼻科用剤の新薬ヒアリングで、MRが「耳鼻科領域でも他社製品と同様に耐性化の懸念がある」と説明したが、その他社製品は感受性サーベイランスの対象薬剤に採用されておらず、耐性化との関連を示すデータが存在しなかった。
当局見解エビデンスなく、他社製品の誹謗中傷と思われる情報提供を行った。
切れた力知識・リスク検知力
次の一手他社製品の耐性化リスクに言及する説明を資材や口頭説明に含める場合は、学会サーベイランスデータへの収載状況を事前確認し、エビデンスのない比較表現を排除する。
02-642023年度漢方製剤企業担当者による説明(直接対面)
何が起きたか漢方製剤の製品説明で、MRが「他社製品と異なり本剤は特定成分を含み抗うつ作用がある」と説明したが、裏付けデータは動物実験のみでヒトでの有効性は確認されていなかった。また、他社製品との比較データも存在しなかった。
当局見解同社製品の抗うつ作用については動物実験での結果であり、ヒトでの有効性を示すデー タはなかった。また、他社製品との比較データがないにもかかわらず誹謗中傷と思われる 情報提供を行った。
切れた力知識・伝達力
次の一手動物実験由来のデータをヒトへの効果として伝える説明は資材審査で差し戻し、「ヒトでの有効性は未確認」の明示を条件に記載を認めるか否かを判断する。
02-652023年度高カリウム血症改善剤企業担当者による説明(直接対面)
何が起きたか高カリウム血症改善剤の説明で、MRが「本剤は他社製品よりカリウム値が下がる」と説明し、他社製品との換算量も示したが、これらを裏付けるエビデンスは確認できなかった。
当局見解エビデンスなく他剤よりも効果があることに言及し、他剤との換算量を示し、不適切な情 報提供活動を行った。
切れた力知識・リスク検知力
次の一手他剤との有効性比較および換算量の提示は、直接比較試験または薬学的根拠の確認なしには資材・口頭説明ともに不可とし、当該MRの所属組織に是正を求める。
02-662023年度神経障害性疼痛治療剤企業担当者による説明(直接対面)
何が起きたか神経障害性疼痛治療剤の説明で、同効他剤との直接比較データが存在しないにもかかわらず、MRが「他剤よりも有効である」と繰り返し説明した。同様の報告が複数施設から寄せられていた。
当局見解同効他剤と直接比較を行ったデータがないにもかかわらず、自社製品の優位性を強調し た。同様の報告が複数の施設でみられた。
切れた力知識・インテリジェンス
次の一手複数施設から同一パターンの報告が上がっていることを踏まえ、組織的な教育不足または資材の問題として捉え、製品担当部門への組織的改善要求として申し入れる。
02-672023年度抗ウイルス剤電子メールによる DM
何が起きたか抗ウイルス剤のメール一斉配信で、「薬物相互作用が少なく使いやすい」と記載されていたが、他社品との科学的比較根拠は示されていなかった。また、自社品の併用禁忌・注意薬剤を使用中の患者にも「使いやすい」と誤解させる可能性があった。
当局見解エビデンスを示さずに、自社製品の優位性を主張した。
切れた力知識・リスク検知力
次の一手一斉配信資材の「使いやすい」「相互作用が少ない」等の包括的表現は、自社の禁忌・注意薬剤との関係で誤解を生む可能性を審査段階で点検し、根拠提示なしの比較優位表現を削除する。
02-682024年度中枢神経系用薬企業担当者による説明(直接対面)
何が起きたか中枢神経系用薬の製品説明で、MRが「本剤形は血中濃度のピークがなだらかなため副作用が出にくく使いやすい」と説明したが、そのエビデンスは存在せず、審査報告書では錠剤より副作用がやや多いとされていた。MRの上司も同席していたが訂正しなかった。
当局見解エビデンスがないにもかかわらず、副作用が少ないと説明した。 (MR の上司も同席して いたが訂正もなかった。 )
切れた力知識・信頼密度
次の一手審査報告書と矛盾する副作用比較の主張を上司同席のもとで放置したことを重大な管理問題と認識し、当該組織の資材審査・MRトレーニング体制の全体的な見直しを求める。
02-692024年度中枢神経系用薬企業担当者による説明(オンライングループ面談(院内))
何が起きたか中枢神経系用薬の企業ヒアリングで、MRが主要評価項目の図を示しながら「18か月投与でプラセボより6か月の進行遅延が期待でき、18か月以降も投与継続でその差がさらに開くと予想される」と説明した。長期投与試験の中間解析結果は未公開であり、公開データに基づかない予想を有効性の根拠として提示したものだった。
当局見解長期投与の有効性に関するデータが公開されていない状況下で、予想で有効性を説明し た。
切れた力知識・リスク検知力
次の一手公開されていない試験データを根拠とした有効性の「予想」発言は薬機法66条に抵触し得るため、当該発言を記録し、企業の医薬情報担当部門に公式照会を行う。

しくじりの解剖 ── カテゴリー一覧(全 8 区分)

  1. 01. 未承認・適応外の効能効果・用法用量を示す(33件)
  2. 02. エビデンスなし・信頼性を欠く説明(69件)(本カテゴリー)
  3. 03. データの抜粋・改変・恣意的加工(33件)
  4. 04. 誇大・事実誤認の表現(28件)
  5. 05. 有効性のみ強調・安全性を軽視した情報提供(22件)
  6. 06. 他社製品の誹謗・中傷(28件)
  7. 07. 利益相反(COI)の不開示と講演・処方誘導の逸脱(10件)
  8. 08. 分類横断・手続き不全による複合違反(4件)
この区分の要点
  1. エビデンスなしの主張は三層構造を持つ——根拠ゼロ、低信頼性根拠の使用、根拠の論理的誤用(非劣性→優位性への転用、作用機序のみによる安全性断定など)。審査では各層に対応した確認が必要。
  2. 形式的に「試験データ」が存在するだけでは不十分。査読の有無、症例数、主要/副次評価項目の区別、試験デザインの適切性、利益相反開示の有無を一貫してチェックする。
  3. 資材審査の射程は文書に限られる。口頭説明・講演・Web講習での発言は記録が残りにくく、根拠なき主張が発生しやすい。審査範囲の外で何が起きているかを把握するフォローアップの設計が求められる。
出典・参考
  1. 厚生労働省「医療用医薬品の販売情報提供活動監視事業(旧:広告活動監視モニター事業)報告書」(2016〜2024年度)。
  2. 販提G 第1の3 原則(1):医薬品等の情報提供に関する4要件(正確・最新・偏りなし・科学的客観的根拠)
  3. 販提G 第1の3 原則(2):七つの禁止行為 ⑥ 客観的な根拠なく他の医薬品等を誹謗すること
  4. 薬機法第66条:誇大広告等の禁止(虚偽・誇大な記事の記述・流布の禁止)