企業の営業担当者が医療機関を訪問して製品情報を提供する場面では、受け取る側——医師・薬剤師・看護師等の医療関係者——の姿勢も結果に影響する。GLの大半は企業側の義務を規律するが、第4章7節は医薬関係者に対しても一定の期待を明示している。
薬機法第1条の5は、医薬関係者が「医薬品等の有効性及び安全性その他これらの適正な使用に関する知識と理解を深めるよう努めなければならない」と定めている。第4章7節はこの法的文脈を踏まえ、販売情報提供活動の適否を客観的に評価する姿勢を医療関係者にも求める。
01医療関係者に期待される姿勢——二つの軸
GLが医療関係者に求めるのは、受動的な情報の受け手にとどまらないことだ。具体的には二つの軸で整理できる。
第一の軸:理解——企業が行うべき適切な活動のあり方をGLに照らして理解すること。担当者がどのような審査を経た資材を使っているか、委員会の承認を得た情報提供かどうか、GLが禁じる行為を求めていないか——これらを知ることが出発点だ。
第二の軸:評価——受けた活動がGLに則って適切かどうかを客観的に評価する姿勢をとること。「なんとなく気になる」ではなく、GLの内容を基準として判断できるよう努めることが求められる。
So what(意味すること): 医療関係者はGLの存在を知り、その内容を理解し、実際の情報提供活動がGLに沿っているかを評価する立場に立つことが期待される。「企業側の問題だから関係ない」では不十分だ。
So why(なぜそう定めるか): 適切な販売情報提供は企業と医療関係者の間でやり取りとして成立する。医療関係者が過剰な接待・不当なプロモーションを拒否し、GL逸脱に気づけば是正を促せる。企業側の内部統制だけでなく、受け取る側の目利きも不適切な活動の歯止めになる。
02「努める」という義務の重み
本条の文言は「努めるよう努める」という努力義務だ。企業側に課される審査義務や委員会設置義務とは異なり、違反したことが直ちに法的な制裁につながるわけではない。
しかし努力義務を軽くみることはできない。法第1条の5を根拠とするこの規定は、医療関係者が単なる情報の消費者ではなく、医薬品の適正使用という公的な目的を共有する当事者であることを確認するものだ。GL全体の文脈で読めば、企業が一方的に責任を負い、医療関係者は責任を持たないという構図を否定している。
So what(意味すること): 法的制裁がないからといって、努力義務を「努力しなくてよい」と読むのは誤りだ。医療関係者が自ら知識を持ち評価する姿勢を示さなければ、不適切な情報提供が黙認される状況が生まれる。
So why(なぜそう定めるか): 医薬品の適正使用は患者の安全に直結する。情報の非対称性が大きい領域で医療関係者が無批判に情報を受け入れれば、企業の内部管理が不十分な場合に誰も歯止めをかけられない。医療関係者の主体的な評価眼が、システム全体の最後の安全弁として機能する。
03GLの周知と自律的な判断
GLに照らして活動を評価するには、GLの内容を知っていなければならない。企業は担当者の教育・訓練義務を負うが、医療関係者側も自発的にGLにアクセスし、何が適切か・何が不適切かの基準を持つことが期待される。
厚生労働省はGLを公開しており、関係学会や業界団体を通じた情報提供も行われている。「GLを知らなかった」という理由は、この努力義務の免責にはならない。
So what(意味すること): GLは公開されており、医療関係者がアクセスすることを前提として設計されている。GLを読んで理解し、活動の適否を自分で判断できる状態を維持することが、本条の求める姿勢の中身だ。
So why(なぜそう定めるか): ルールを知らない者が守れるのは偶然にすぎない。医療関係者がGLを理解した上で企業活動を評価することで、不適切な活動への意識的な抵抗が生まれる。これは企業への行政監督と並ぶ、もう一本の抑止の柱だ。
第4章7節が示すのは、GLの効力が企業の内部管理だけで完結しないという設計思想だ。医療関係者がGLを知り、受け取る活動の適否を自分で評価できる状態にあることで、不適切なプロモーションの最終的な防波堤が形成される。努力義務という形式にかかわらず、その実質的な意味は重い。