フロリダ州司法長官が2026年9月28日、独立した第三者の安全承認を経ないAIモデル開発の禁止を求めた申立てを起点に、図は四つの段で論理をたどる。まず開発段への条件付けを示し、次に2018年から動く医療用医薬品の資材審査という先例を置く。続いて審査者・承認者・使用者・苦情の窓口を分ける四つの役割こそが事前承認を動かす仕組みだと示し、最後に州の申立てを同じ物差しで測ると、承認者の選び方・基準・拒否の効果・責任の所在が未定のままだとわかる。年齢の線引きや擬人化の禁止など外から確かめやすい残り四条件は、この仕組みを通らずに済む迂回路として描く。結びでは、四つの空欄が埋まるかどうかで、事前承認が文字のままか手続になるかが分かれると示す。
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2026年9月28日、フロリダ州司法長官のJames Uthmeierは、独立した第三者の安全承認を受けないままOpenAIが新しいAIモデルを開発することを禁じるよう、州の巡回裁判所に申し立てた。作る前に外部の承認を通すという取り決めは、そもそも成り立つのか。成り立つ。医療用医薬品の資材では、使う前に独立した監督部門の審査と承認を通す手続が2018年から動いている。

01州の請求は開発そのものに触れ、AIの事前承認を求めている

この申立ては、表示の仕方や年齢の線引きだけを問題にしていない。州が求めたのは、独立した第三者の安全承認を得ないまま新しいモデルを開発しない、という条件である。求められた条件は、売り方ではなく作る段にかかっている。

売り方と作り方では、規制が働く時点が違う。取引慣行を取り締まる法律は、ふつう、市場に出た後の行為を裁く。開発の段に条件を付けるのは、責任を事後の賠償から事前の承認へ移すということだ。

まだ命令は出ていない。これは求められている救済であって、裁判所の判断ではない。それでも、請求の形そのものが一つの設計案を示している。作る前に外から承認を通す、という設計案である。そしてこの設計案は、日本の製薬の実務では2018年から動いている。

02求められたのは第三者の安全承認と、州内の未成年の利用停止だ

州が開発の段に条件を求めたことを踏まえて、申立てが並べた条件を数えてみる。報じられた限りでは五つある。独立した第三者の安全承認を経ない開発の禁止。州内の未成年へのChatGPTの提供の停止。13歳未満の個人情報を集めることの制限。人間の特性や感情、意識、独立した思考を備えていると示す提示の禁止。そして、利用を続けさせようとする機能の制限である。

申立てを行ったのは第10巡回区のハイランズ郡で、6月1日に提起された訴訟の一部として出された。最初の訴えは、子どもへの危害と欺瞞的な取引慣行を争点にしていた。

図 1 六月の訴えから九月の申立てまで
6月1日の提訴欺瞞的取引の主張9月28日の申立て開発への条件付け6月1日の提訴欺瞞的取引の主張9月28日の申立て開発への条件付け
6月の提訴は製品の売り方を争点にしていた。9月の申立ては、作る前の段に条件を付けるよう求めている。

OpenAIは、ChatGPTが毎日数億人に正当な目的で使われている汎用の道具であり、有害な意図を検出する仕組みを継続して強化していると述べている。同社はまた、最も高性能なモデルの訓練を一時停止したとも説明した。ただし再開の時期は、自社が確信を得た時点だとしている。判断の位置は、会社の内側に置かれたままである。

03医薬品の資材は、使う前に独立した監督部門の審査と承認を通る

五つの条件のうち、開発の段に触れるのはこの一つだけで、残る四つは提供と表示の段にかかる。だから最も重いのは、開発の前に外部の承認を置くというものだ。作る前に外部が承認する手続は、日本の製薬会社で毎日動いている。医療用医薬品の販売情報提供活動のガイドラインは、資材等を使用される前に、あらかじめ販売情報提供活動監督部門の審査を受けることを求めている。審査に当たっては審査・監督委員会の助言を踏まえて承認を行う。

販売情報提供活動監督部門は、資材を作って使う営業の側から切り離されている。審査の作業そのものは外部へ委託できる。ただし承認の責任は委託先へ移らない。ガイドラインは、承認に関する責任を監督部門、ひいては経営陣が負うと書いている。

見るところ州が求めた取り決め資材の審査で動く取り決め
判断の時点モデルを開発する前資材を使用する前
審査する主体独立した第三者(未定)販売情報提供活動監督部門
外部委託第三者が前提審査の作業は可、承認は不可
承認の責任者定められていない監督部門と経営陣

二つの制度は目的も相手も違う。州は消費者の保護を目的に裁判所へ申し立てており、ガイドラインは医療関係者への情報提供の適正さを保つために行政が示したものだ。重なるのは、判断が下る時点と、責任の固定先という二点だけである。

04事後の賠償では、作る前の判断を変えられない

資材は使われる前に承認を受ける。AIのモデルは、人に使われた後で責任を問われる。州の請求は、この後の側の限界に向けられている。

フロリダ州の取引慣行法は、不公正な競争方法と、良心に反する行為、そして不公正または欺瞞的な行為を違法とする。強い規定だが、違法かどうかが決まるのは行為の後である。子どもが害を受けた後に賠償を命じても、その子に起きたことは戻らない。

図 2 事前の承認と事後の責任
資材(事前の承認)AIモデル(事後の責任)資材の作成監督部門の審査承認して使用モデルの開発提供と利用訴訟と賠償資材(事前の承認)AIモデル(事後の責任)資材の作成監督部門の審査承認して使用モデルの開発提供と利用訴訟と賠償
上の段では使用の前に審査と承認が入る。下の段では提供と利用が済んだあとに責任が問われる。

だから州は賠償ではなく、開発の段の条件を求めた。同じ理屈は、資材の世界では2018年に手続として決着している。誤った資材が医師の手に渡ってから回収しても、その資材を見て処方を決めた患者のところには戻れない。資材の審査が使用の前に置かれているのは、この点で理にかなう。

05ガイドラインは承認の責任を経営陣に置き、外部委託を審査に限った

事後の責任が作る前の判断に届かないのなら、事前の承認は具体的に何を決めているのか。ガイドラインが書き分けているのは、次の四つである。

①

審査

資材等は使用される前に、あらかじめ監督部門の審査を受ける。作った側は自分で通せない。

②

承認

監督部門が審査・監督委員会の助言を踏まえて承認する。承認の責任は監督部門と経営陣にある。

③

使用の制限

担当者は、審査で適切と認められた資材等以外を使えない。手元にある資料を勝手に配れない。

④

苦情の窓口

外部から認識できる窓口を置き、苦情があれば速やかに事実関係を調べて必要な措置を講じる。

四つに共通するのは、誰が何を負うかが役割で書かれていることだ。審査する人、承認する人、使う人、苦情を受ける人が分かれている。分かれているから、後から誰に尋ねればよいかが決まる。

州の申立てには、役割の書き分けがまだ無い。独立した第三者という語はあるが、その第三者を誰が選ぶのかは書かれていない。

06開発の停止、年齢の線引き、擬人化の禁止は、別の重さを持つ

資材の審査では、審査する人、承認する人、使う人が分かれていることで事前承認が動いている。同じ分かれ方を求められるかどうかで、州が一つの申立てにまとめた条件を測り直してみる。

開発への条件付けが最も重い。承認者が決まらなければ、命令が出ても実行できないからだ。誰が第三者を選ぶのか、その独立をどう確かめるのか、承認を拒まれたときに開発が止まるのか。三つとも未決のままでは、条件は文字のまま残る。

年齢の線引きは、これとは逆の性質を持つ。州内の未成年に提供していないかどうかは、外から確かめやすい。ただし確かめられるのは提供の有無だけで、モデルが何をするかには触れない。子どもを危険から遠ざけるが、危険そのものは残る。

擬人化の禁止は、既にある広告の規制に近い。人間の特性や感情、意識を備えていると示す提示を禁じるという要求は、製品の性質について誤った印象を与える表示を禁じる規制と同じ構えだ。医薬品の広告では、承認された効能効果の範囲を暗示的にも超えてはならないという線が引かれている。表示に線を引く手法は、規制として古くから使われてきた。

図 3 事前承認を実行に移す段
承認者を決める審査の基準を置く拒否の効果を定める責任者を名指す承認者を決める審査の基準を置く拒否の効果を定める責任者を名指す
承認者、基準、拒否したときの効果、責任者の四つが決まって初めて事前承認は動く。資材ではこの四つが書かれている。

07命令が出れば、承認する第三者を誰が選ぶかが残る

開発に外部の承認を求める条件が、実際に命令になったとする。そこから先に何が決まっていないか。決まっていないのは三つある。加えて、審査の基準を誰がどう置くのかも示されていない。

①

承認者の選び方

誰が第三者を選び、その独立をどう確かめるのかが決まっていない。

②

拒否の効果

承認が得られないとき、開発が止まるのか、条件付きで進むのかが決まっていない。

③

責任の固定先

承認の責任を負う役職が名指しされていない。

資材の審査では、三つとも答えが書かれている。監督部門を置くのは製造販売業者で、その独立性は営業部門からの分離によって確かめられる。審査で適切と認められなければ担当者は使えない。責任は監督部門と経営陣にある。

なお、命令が出るかどうかは私には分からない。期日も、被告側の応答も、この記事を書いた時点では確かめられていない。書けるのは、求められた条件の中身と、その条件を動かすために何が決まっていないか、という二つだけである。

Key Points ── 持ち帰る 3 つ
  1. フロリダ州は2026年9月28日、独立した第三者の安全承認を経ない開発の禁止を求めた。請求の対象が製品の売り方から、作る前の段へ移っている。
  2. 医療用医薬品の資材は使用前に監督部門の審査と承認を通り、審査の作業を外部に委託しても承認の責任は経営陣に残る。資材という領域では、事前の承認が設計の問題として既に解かれている。
  3. 州の申立ては承認者を誰が選ぶかを定めていない。承認者・基準・拒否の効果・責任者の四つが決まらなければ、事前承認の条件は命令になっても動かない。
結語

外部の承認を受けるまで作れない。この取り決めは成り立つ。日本の製薬会社では、資材の一枚が医師の前に出るまでに、作った当人ではない部門が読み、助言を受けて承認し、その責任を経営陣が引き受ける。八年動いている。

AIの開発に同じ形を持ち込むのが易しいとは言わない。資材は一枚ずつ数えられ、モデルの訓練は数えにくい。それでも、易しくないことと、発想として成り立たないことは別である。

フロリダ州の申立てに足りないのは、思いつきではない。承認者を誰が選ぶか、基準は何か、拒まれたらどうなるか、責任は誰の役職に載るか。この四つを書き込めるかどうかで、事前の承認は文字のままか、手続になるかが分かれる。

出典·参考文献
  1. Engadget. Florida AG requests emergency order to stop OpenAI model development. 2026-09-28.(申立ての日付と請求の骨格、OpenAI側の説明)
  2. News4JAX (WJXT). Uthmeier asks court to temporarily block OpenAI from offering ChatGPT to minors. 2026-09-28.(第10巡回区ハイランズ郡、求められた五つの条件、6月1日の提訴で挙げられた請求原因)
  3. PYMNTS. Florida Asks Judge to Stop OpenAI Model Development Over Safety Risks. 2026-09-28.(独立した安全承認という条件の文言、訓練停止と再開の判断が自社に置かれていること)
  4. Reuters. フロリダ州、子供への危害を巡る訴訟の一環として、裁判所に対しOpenAIの新モデル開発禁止を求める. 2026-09-28.(訴訟の位置づけと請求の対象)
  5. Florida Statutes. Fla. Stat. § 501.204 — Unlawful acts and practices.(不公正または欺瞞的な行為を違法とする規定。違法性の判断が行為の後に下されること)
  6. 厚生労働省医薬・生活衛生局長(薬生発0925第1号). 医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン. 2018-09-25.(使用前の審査と承認、外部委託の可否、承認責任の固定先、苦情窓口と使用の制限)
  7. OpenAI. 訓練の一時停止と再開の判断に関する説明. 2026-09.(最も高性能なモデルの訓練を停止し、再開は自社が確信を得た時点とするという説明)