AIと神経難病・神経免疫疾患 ── 多発性硬化症 ── 2026-10-26
多発性硬化症の治療・治験とAI
- Predicting follow-up cognition using estimated structural and functional connectivity networks and artificial intelligence in multiple sclerosis抄録(全訳)
脳の構造的コネクトーム(SC)と機能的コネクトーム(FC)を調べると、多発性硬化症(MS)患者で脳回路と認知機能がどう関係するかが分かる。ただし、SC と FC の抽出に使う拡散 MRI と機能的 MRI は、費用も時間もかかる。そのため、現在の臨床では使われていない。著者らの先行研究では、MS の病変マスクと人工知能(AI)モデルから、推定 SC と推定 FC(eSC と eFC)を作った。これらで MS の障害度を予測すると、拡散 MRI と機能的 MRI から得た SC・FC と同じくらい有効であった。本研究では、ベースラインと 4 年後の追跡時の認知機能に関連する eSC・eFC の脳回路を特定した。あわせて、eSC・eFC で MS の認知機能をどこまで予測できるかを評価した。
対象は MS 患者 171 人のコホートである。構造 MRI から MS の病変マスクを抽出し、Network Modification ツールでこのマスクから SC を推定した。次に、eSC をエンコーダー・デコーダーモデルの Krakencoder に入力し、FC を推定した。予測精度が最も高かったのは、領域ごとの eSC または eFC で、追跡時の記号数字モダリティテスト(Symbol Digit Modalities Test:SDMT)を予測した場合であった。スピアマンの相関係数の中央値は、eSC で 0.58、eFC で 0.56 であった。追跡時の SDMT スコアが低いことと関連していたのは、小脳での eSC・eFC の低下と、デフォルトモードネットワークでの eFC の上昇であった。以上から、臨床で撮像した MRI と AI モデルで得た eSC・eFC により、認知機能を効果的に予測できることが示された。病変に基づくコネクトームの推定は、臨床試験に役立つ可能性がある。MS の認知機能の改善を目指す非侵襲的な治療で、標的になりうる特定の脳回路を同定できるためである。
研究者らは、AI と臨床で撮像した MRI を使い、MS 患者の脳の結合ネットワークを推定した。この推定値で、4 年後の認知機能を中程度に予測できた。認知機能に関わる主要な脳回路も明らかになった。
掲載誌の IF 相当:18.6(OpenAlex の直近 2 年の平均被引用数・2026-10-25 時点の値、2026-10-26 に取得。正式な IF(Clarivate)ではない)書誌:Tozlu C, Ong D, Piccirillo C, Schwartz H, Jaywant A, Nguyen T, et al. Predicting follow-up cognition using estimated structural and functional connectivity networks and artificial intelligence in multiple sclerosis. Nat Commun. 2026 Oct 23 [Epub ahead of print]. doi:10.1038/s41467-026-75827-7.確認の範囲:抄録のみ確認