AIと神経難病・神経免疫疾患 ── ALS ── 2026-10-12
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療・治験とAI
- Computational models for biomarker identification in amyotrophic lateral sclerosis using transcriptomics and artificial intelligence抄録(全訳)
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は進行性の神経変性疾患で、運動ニューロンが次第に失われていく。原因は単一ではなく、複数の要因が関わっている。分子レベルの発症機序はまだよく分かっていない。とくに早期に診断バイオマーカーや有効な治療法を見つけることはまだ難しい。
本研究は、トランスクリプトミクスと人工知能の手法で ALS の新しいバイオマーカーを特定し、その分子機序を明らかにすることを目的とした。NCBI GEO データベースから、ALS の RNA-seq データセット 2 件(GSE277709、GSE234297)を取得した。まず、品質管理とフィルタリングを含む前処理を行った。次に両データセットに共通する遺伝子(12,281 遺伝子)を特定した。これらを 216 検体からなる一つのデータセットに統合した。バッチ効果は ComBat-seq で補正した。補正の効果は、主成分分析と分散分析(ANOVA)に基づく R² 解析で検証した。
発現変動遺伝子(DEG)は機械学習(ML)モデルで特定した。用いたモデルは、ロジスティック回帰(LR)、サポートベクターマシン(SVM)、ランダムフォレスト(RF)、eXtreme Gradient Boosting(XGBoost)などである。特定したバイオマーカーは、さらに DESeq2 で検証した。基準は log₂ fold change の閾値 0.6、p 値 < 0.05 とした。最後に、特定した DEG について Enrichr で機能エンリッチメント解析を行った。
バッチ補正で、バッチに由来するデータの分離は顕著に減った。主成分の分散は、補正前の 70.2% から補正後には 19.9% に下がった。ANOVA に基づく R² 解析でも、バッチに関連する分散が 86.65% 減ったことを確認した。DESeq2 と ML モデルの間で見つかった遺伝子は、計 67 遺伝子(コード遺伝子 29、非コード遺伝子 38)であった。ただし ML モデル同士で共通する遺伝子は少なく、得られたのは計 41 遺伝子であった。内訳はコード遺伝子 18、非コード遺伝子 22 で、1 つの Ensembl ID は遺伝子シンボルが得られなかった。
LR、SVM、RF、XGBoost などの ML モデルのバランス正解率は、それぞれ 77.46%、80%、77%、75.82% であった。エンリッチメント解析で、10 個の DEG が ALS 関連の生物学的経路 34 件に関わることが分かった。とくに CCND1 と MYL9 は、GO、KEGG、Reactome のいずれの経路にも関与していた。以上から、トランスクリプトミクスと人工知能を組み合わせた計算モデルは、ALS のバイオマーカー特定と経路探索を効果的に支えうることが示された。
掲載誌の IF 相当:3.1(OpenAlex の直近 2 年の平均被引用数・2026-10-11 時点の値、2026-10-12 に取得。正式な IF(Clarivate)ではない)書誌:Yadav R, Sriram Kumar P, Pragya P, Ronickom JFA. Computational models for biomarker identification in amyotrophic lateral sclerosis using transcriptomics and artificial intelligence. Discov Artif Intell. 2026 Oct 10;6(1):1421. doi:10.1007/s44163-026-02415-5.確認の範囲:抄録のみ確認