AIとがん研究 ── 肝臓がん ── 2026-10-11
肝臓がんの治療・治験とAI
- Multiparametric MRI habitat radiomics and longitudinal dynamic clinical parameters predict TACE refractoriness in HCC抄録(全訳)
肝細胞がん(HCC)の治療戦略を最適にするには、肝動脈化学塞栓療法(TACE)への不応を予測することが重要である。しかし、そのリスクを正確に評価するのはまだ難しい。初回治療への反応は、画像と臨床指標でとらえられる。この反応には腫瘍が本来もつ治療感受性が表れており、長期的な不応を予測するうえで大きな価値がある。本研究では、初回TACE後の治療効果のばらつき(不均一性)を評価した。それをもとに、TACEを繰り返した後の不応を予測するマルチモーダルのノモグラムを作った。
マルチパラメトリックMRIの空間的ハビタットラジオミクスで、画像上で区別される3つのハビタット(領域)を特定した。それぞれの信号パターンは、融解壊死、生き残った腫瘍、凝固壊死に似ていた。ハビタット特徴と従来のラジオミクス特徴を合わせ、8種類の機械学習アルゴリズムで解釈可能なラジオミクススコアを作った。次に、このスコアに経時的に変化する臨床指標を組み合わせ、臨床・ラジオミクス統合ノモグラムを作った。このノモグラムの曲線下面積(AUC)は、訓練コホートで0.924、内部検証コホートで0.860、外部検証コホートで0.864であった。
以上の結果から、ハビタットラジオミクスと臨床指標の経時変化を組み合わせると、その後のTACE不応のリスクを層別化しやすくなる可能性が示唆される。層別化を行う時点は、初回TACEの後で、反復治療の前である。初回の TACE 後、反復治療の前に、その後の TACE 不応のリスクを層別化できれば、早期の治療効果判定や個別化した臨床判断の支えになりうる。
掲載誌の IF 相当:5.2(OpenAlex の直近 2 年の平均被引用数・2026-10-04 時点の値、2026-10-05 に取得。正式な IF(Clarivate)ではない)書誌:Liu JK, Gu YQ, Sun QA, Chang JH, Zhao J, Liu YB, et al. Multiparametric MRI habitat radiomics and longitudinal dynamic clinical parameters predict TACE refractoriness in HCC. Sci Rep. 2026 Oct 9 [Epub ahead of print]. doi:10.1038/s41598-026-74555-8.確認の範囲:抄録のみ確認 - A deep-learning pipeline to assist portal vein identification during laparoscopic ultrasound scanning for anatomical liver resection in real time抄録(全訳)
肝細胞がん(HCC)の解剖学的肝切除では、術中に門脈の解剖を正確に同定できるかどうかが大きく左右する。術中超音波(IOUS)は、肝臓の手術中にリアルタイムで血管をたどるゴールドスタンダードとされている。それでも、区域ごとの門脈枝を見分けるのは技術的に難しく、術者の経験に大きく左右される。人工知能(AI)で超音波画像の読影を支援すれば、術中の血管認識の効率と一貫性が上がる可能性がある。ただし、これまでの研究の多くは静止画像の解析にとどまり、実際の手術でリアルタイムに使われてはいなかった。
本研究の目的は二つある。一つは、腹腔鏡下術中超音波で特定の門脈枝を自動認識する深層学習パイプラインを、YOLOv5をもとに開発・評価することである。もう一つは、解剖学的肝切除中にリアルタイムで運用できるかを検討することである。HCCに対して解剖学的肝切除を受けた連続100例から、腹腔鏡下術中超音波画像3254枚を後ろ向きに収集した。画像には、経験豊富な肝胆膵外科医が手作業で注釈を付けた。注釈付きデータは、患者単位で訓練・検証・テストの独立したコホートに分けた(それぞれ80%、15%、5%)。最終的なYOLOv5モデルは、あらかじめ定めた右側の門脈5クラス(P58、P67、P6、P7、P8d)で訓練した。20例の前向きリアルタイム検証でも、この5クラスモデルを再訓練やクラス変更なしにそのまま使った。
独立したテストデータセットでの平均適合率([email protected])は0.941であった。F1スコアは信頼度閾値0.202で最大の0.58となった。適合率は信頼度閾値0.764で1.00に達した。フレーム単位の枝別正解率は、P58で0.81、P67で0.81、P8dで0.80、P7で0.79、P6で0.78であった。前向きの術中検証では、システムは連続してリアルタイムに認識を続け、処理の遅延は1フレームあたり50 ms未満であった。
このパイプラインにより、腹腔鏡下術中超音波中に選択した右側門脈5クラスをリアルタイムに認識できる技術的実現可能性が示された。一般化できるか、臨床で役立つかを確かめるには、さらなる多施設研究が必要である。その研究では、より広い解剖範囲を対象にし、より大きな前向きコホートを使う必要がある。
掲載誌の IF 相当:3.5(OpenAlex の直近 2 年の平均被引用数・2026-10-10 時点の値、2026-10-11 に取得。正式な IF(Clarivate)ではない)書誌:Xu J, Zhang X, Li S, Wei Y, Huang S, Cao L, et al. A deep-learning pipeline to assist portal vein identification during laparoscopic ultrasound scanning for anatomical liver resection in real time. Eur J Med Res. 2026 Oct 9 [Epub ahead of print]. doi:10.1186/s40001-026-05291-y.確認の範囲:抄録のみ確認