AIと神経難病・神経免疫疾患 ── 多発性硬化症 ── 2026-10-08

多発性硬化症の治療・治験とAI
- A Feasible Machine Learning Approach to Improve Cognitive Screening in Multiple Sclerosis抄録(全訳)
背景:認知機能障害は、多発性硬化症(MS)でよくみられる症状である。スクリーニング検査として推奨されているのは、BICAMS(Brief International Cognitive Assessment for Multiple Sclerosis)である。しかし日常診療では、MoCA(Montreal Cognitive Assessment)のほうがよく使われている。既報のMoCAカットオフ値で、MSに特有の認知機能障害を検出できるかは、まだよく分かっていない。
目的:本研究の目的は二つである。一つ目は、既報のイタリア版MoCAカットオフ値の診断性能を評価することである。評価の対象は、MSに特有の認知機能障害とした。二つ目は、スクリーニングの精度を高める機械学習(ML)パイプラインを開発することである。
方法:MS患者222例を前向きに登録した。全例でMoCAとBICAMSの両方を実施した。BICAMSの検査のうち、少なくとも一つで成績が5パーセンタイル未満であれば、認知機能障害ありと定義した。既報のイタリア版MoCAカットオフ値4種について、感度、特異度、バランス正解率を算出した。認知機能障害を予測するため、elastic-net罰則付きロジスティック回帰モデルを作った。モデルには年齢、教育歴、MoCAの素点を組み込んだ。学習には、入れ子型の5分割交差検証を用いた。さらに、身体障害と疲労の影響も評価した。さらに、障害度と疲労が認知機能障害とモデルの性能に及ぼす影響も検討した。
結果:認知機能障害は62例(27.9%)でみられた。MoCAの素点は、認知機能が保たれた群より障害のある群で有意に低かった(22.68 ± 4.29 対 25.77 ± 3.67、p < 0.0001)。ところが既報のMoCAカットオフ値は、特異度が極めて高かった(0.92〜0.99)。その一方で、感度は偶然の水準を下回った(0.10〜0.44)。このため、バランス正解率は低かった(0.54〜0.68)。MLモデルの識別能は良好であった(ROC曲線下面積(ROC-AUC)0.787、95% 信頼区間 0.717〜0.852)。感度は0.69、特異度は0.72、バランス正解率は0.71であった。
結論:既報のイタリア版MoCAカットオフ値は、MSに特有の認知機能障害のスクリーニングには感度が足りない。MLを用いたスコアリングでは、特異度を許容できる水準に保ったまま、感度が大きく向上した。この手法は、MSの認知機能スクリーニングを強化する実用的なツールとなる。
掲載誌の IF 相当:5.2(OpenAlex の直近 2 年の平均被引用数・2026-10-07 時点の値、2026-10-08 に取得。正式な IF(Clarivate)ではない)書誌:Dini M, Turchi L, Gamberini G, Caporali A, Lucchini G, Tacchini M, et al. A Feasible Machine Learning Approach to Improve Cognitive Screening in Multiple Sclerosis. Biomedicines. 2026 Oct 6;14(10):2262. doi:10.3390/biomedicines14102262.確認の範囲:抄録のみ確認