AIとがん研究 ── 乳がん ── 2026-10-11
乳がんの治療・治験とAI
- Ultrasound-based deep learning-derived radiomics for preoperative prediction of sentinel lymph node metastasis in invasive breast cancer: a two-center retrospective study抄録(全訳)
浸潤性乳がん(IBC)では、センチネルリンパ節(SLN)転移を術前に評価できれば、腋窩の治療を患者ごとに決めやすくなる。本研究の目的は、SLN 転移を予測するモデルを作り、外部で検証することである。モデルには、深層学習で得た超音波ラジオミクスを用いる。2 施設の後ろ向き研究で、病理学的に IBC と確定した 246 人を登録した。施設 A の 194 人は、訓練コホート(n = 155)と内部テストコホート(n = 39)に分けた。施設 B の 52 人は外部検証コホートとした。術前の超音波画像から、ResNet50 で深層特徴量を抽出した。訓練コホート内で特徴量を選んだのち、勾配ブースティング決定木で分類器を作った。モデルの識別能は、受信者動作特性(ROC)解析で評価した。決定曲線分析は、正味の利益を探索的に評価するために用いた。最終的に、深層学習由来の特徴量 22 個が残った。受信者動作特性曲線下面積(AUC)は、訓練コホートで 0.734(95% 信頼区間 0.655〜0.813)であった。内部テストコホートでは 0.761(95% 信頼区間 0.601〜0.920)であった。外部検証コホートでは 0.742(95% 信頼区間 0.598〜0.886)であった。外部コホートでの正確度は 0.769、感度は 0.650、特異度は 0.844 であった。陽性的中率(PPV)は 0.722、陰性的中率(NPV)は 0.794 であった。決定曲線は探索的なものであり、臨床的な有用性を示すものではない。SLN 転移に対するモデルの識別能は中程度であった。AUC の点推定値はコホート間で近かったが、信頼区間は広かった。このモデルで得られるのは、予備的な識別とリスクの順位付けだけである。現時点では、臨床判断には使えない。臨床で使う前に、より大きなコホートで前向きに検証する必要がある。
掲載誌の IF 相当:3.8(OpenAlex の直近 2 年の平均被引用数・2026-10-02 時点の値、2026-10-03 に取得。正式な IF(Clarivate)ではない)書誌:He K, Qiu Y, Zeng B, Huang Z, Lin J, Chen J, et al. Ultrasound-based deep learning-derived radiomics for preoperative prediction of sentinel lymph node metastasis in invasive breast cancer: a two-center retrospective study. BMC Med Imaging. 2026 Oct 9 [Epub ahead of print]. doi:10.1186/s12880-026-02919-7.確認の範囲:抄録のみ確認 - Artificial Intelligence Model’s assessment of intra-sample heterogeneity of HER2 IHC in breast cancer is related to interobserver and intraobserver agreement among pathologists抄録(全訳)
乳がんでは、HER2 の状態を正確に評価することが治療方針の決定に欠かせない。抗体薬物複合体が登場し、HER2 低発現の腫瘍にも適応となった。このため、その重要性はさらに増している。しかし、HER2 免疫組織化学染色(IHC)のスコアは、病理医の間でも、同じ病理医の中でもばらつく。そのため、スコアの再現性には限界がある。人工知能(AI)モデルには、診断を標準化し、精度を高める可能性がある。AI モデルは、現在の診療の弱点について新たな知見をもたらす可能性もある。
本研究では、ブラジル各地の Rede D'Or の施設から、一般病理医と専門病理医を募った。病理医には、デジタル化した HER2 IHC のホールスライド画像を評価してもらった。同じ画像を、1 か月の間隔をおいて病理医に再び示した。同じ画像を、AI モデル AIM-HER2(PathAI®、米国マサチューセッツ州ボストン)にも評価させた。乳がん検体 126 件で、観察者内・観察者間の一致度と、AI との一致度を測った。また、AI による空間的な内訳データを用いて、検体の特徴と一致度の指標との関連を調べた。
病理医の観察者内一致度の中央値は 66.67% であった。AI との一致度の中央値は 60.8% であった。観察者間一致度の中央値は 67.65% であった。一致度が高かった(85% 超)のは、検体の 25.4% であった。すべての一致度の指標の間に、有意な正の相関がみられた。AI の空間的内訳スコアで検体内不均一性が低いと判定された検体は、一致度の高さと関連していた。
この結果から、病理医による HER2 IHC スコアには大きなばらつきがあることが分かる。AI で評価した検体内不均一性は、病理医間の一致率の低さと相関していた。著者らは、これが現在のスコア判定方法の限界を示す可能性があると考えている。また、AIM-HER2 などの AI モデルは、評価者の間で診断が食い違いやすい検体を示せる。それによって、解析の再現性を高める役割を果たしうると著者らは考えている。
掲載誌の IF 相当:3.9(OpenAlex の直近 2 年の平均被引用数・2026-10-09 時点の値、2026-10-10 に取得。正式な IF(Clarivate)ではない)書誌:Ferrari P, Petaccia de Macedo M, Werneck da Cunha I, Soares-Souza GB, Soares FA, Breast Cancer Cooperative Study Group, et al. Artificial Intelligence Model’s assessment of intra-sample heterogeneity of HER2 IHC in breast cancer is related to interobserver and intraobserver agreement among pathologists. BMC Cancer. 2026 Oct 9 [Epub ahead of print]. doi:10.1186/s12885-026-17049-0.確認の範囲:抄録のみ確認