AIと神経難病・神経免疫疾患 ── 多発性硬化症 ── 2026-10-25
多発性硬化症の治療・治験とAI
- Predicting Balance Ability and Explaining Control Strategies from VR Motion Sensors: An Interpretable CoP-Derived Balance Score Approach for Multiple Sclerosis抄録(全訳)
仮想現実(VR)でバランスを理解する意義は、利用者が安定か不安定かを測ることだけではない。没入型の操作中に、どのように安定を保っているかを説明することも重要である。これは多発性硬化症(MS)の人では特に重要である。全体のバランスが同程度でも、動きのパターンが人によって異なることがあるためである。既存の VR ベースの手法は、多くが生の動揺信号、併存妥当性の比較、課題ごとの分類に焦点を当てている。バランスを一つの連続的な尺度として捉えることや、安定を保つ背景にある動きのパターンを説明することはまれである。
本研究は、37 人(MS 15 人、非 MS 22 人)の公開マルチモーダルデータセットを用いた。データには、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、コントローラー、足圧中心(CoP)、モーションキャプチャーの記録が含まれる。このデータで、HMD とコントローラーのモーションセンサーからバランス能力を予測し、解釈する 3 段階の枠組みを作った。第 1 段階では、標準的な CoP 特徴量から、連続値をとる CoP 由来のバランススコアを作成した。このスコアは、バランスを一つの伝えやすい尺度で表す。MS と非 MS の参加者で、スコアの一貫性も調べた。第 2 段階では、機械学習を用いて、HMD とコントローラーのセンサーからこのスコアを予測した。第 3 段階では、VR での動きを解析し、バランススコア全体の重症度だけでは分からない探索的なパターンを特定した。さらに、参加者単位でみたパターンの出現割合が、MS 群と非 MS 群で異なるかを検定した。
バランススコアの試行間の信頼性は中程度であった。特徴量とスコアの相関パターンは、MS 群と非 MS 群で似ていた。予測は 2 つのレベルで評価した。ウィンドウレベルの評価では、HMD とコントローラーから得た VR モーションセンサーデータの短い区間を用いた。参加者レベルの評価では、参加者ごとに全区間をまとめ、一つの予測値とした。全体の予測性能は CatBoost が最も高かった。ウィンドウレベルでは、決定係数 R2 = 0.388、平均絶対誤差(MAE)= 0.597、二乗平均平方根誤差(RMSE)= 0.782 であった。参加者レベルでは、R2 = 0.715、Pearson の r = 0.867、Spearman の ρ = 0.838 であった。バランススコアは、モーションキャプチャーから求めた重心(CoM)の平均速度とも対応していた。これにより、利用できたデータセットの範囲内で、生体力学的な裏付けも得られた。
動きのパターンを解析すると、探索的なパターンが 2 つ見つかった。一つは「頭部優位性の低いパターン(Lower head-dominance pattern)」で、手の寄与が相対的に大きいことが特徴である。もう一つは「頭部優位パターン(Head-dominant pattern)」で、頭の寄与が相対的に大きい。頭部優位パターンは、記述的にみたウィンドウレベルでは MS の参加者に多かった。ただし参加者レベルの比較では、群間差を示す統計的に有意な証拠は得られなかった。
以上から、VR ヘッドセットとコントローラーの動きだけでも、参加者レベルのバランス能力の予測に使えることが示された。また、没入型の操作中に頭と手の動きが相対的にどう組み合わさるかについて、探索的な知見も得られる。
掲載誌の IF:不明(照合できず)書誌:Pavel MI, Anjum N, Cordova A, Quarles J, Mahmud MR. Predicting Balance Ability and Explaining Control Strategies from VR Motion Sensors: An Interpretable CoP-Derived Balance Score Approach for Multiple Sclerosis. Proceedings of the 2026 28th International ACM SIGACCESS Conference on Computers and Accessibility. 2026 Oct 24 [Epub ahead of print]. doi:10.1145/3797867.3828977.確認の範囲:抄録のみ確認