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Ethics · Regulation · Technology — 製薬実務の学習ノート
2026.10.18解説ビデオ·13:20·音声は合成音声

AIに44兆ドルの期待、市場は1兆ドル失う── 作る側の法案、締め出されるエージェント、中国の輸出管理

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導入0:49

AIへの期待は、いまや一国の経済の見通しとして語られるところまで膨らんでいます。ところが同じころ、市場では株の値が大きく下がりました。期待と疑いが、同時に強まっているのです。その二つのあいだで、私は一つの問いを考えています。AIの使い方を制限する力を持つのは、いったい誰なのか。作る会社なのか、AIを受け入れる会社なのか、国なのか、それとも市場なのか。

今日の出来事はどれもこの問いにつながっていて、答えは一つに定まりません。だから製薬の実務家は、誰かが決めてくれるのを待たずに、自社でAIを使う範囲と止める手順を決めておく必要があります。

目次
0:0013:20
CH 011:45

01米GDP44兆ドルの予測

出典 Seeking Alpha / Reuters

最初に確かめたいのは、期待を語る声がどこから出ているかです。期待が大きく語られるほど、それは予算や政策の判断を動かします。だから私は、誰が語ったのかを、見通しの中身と同じくらい大事だと考えています。

図 1 予測が示された場
Jack ClarkAnthropic共同創業政策担当者IMFなどの場米国のGDP44兆ドルに達する可能性Jack ClarkAnthropic共同創業政策担当者IMFなどの場米国のGDP44兆ドルに達する可能性
Jack Clark氏が、IMFなど政策担当者向けの場で、AIが米GDPを2030年までに44兆ドルへ押し上げ得ると述べたと報じられた。

語ったのはAIを作る側の中心にいる人で、聞いていたのは国の経済の進め方を決める人たちでした。作り手が、決める側に向けて直接、大きな見通しを示したことになります。この見通しが受け入れられれば、規制を緩める理由にも、投資を集める理由にもなります。

これは、国全体で生み出される価値が、AIによって数年で大きく増えるという見立てです。ただし予測であって、まだ起きた事実ではありません。しかも語り手は、期待が高まるほど得をする立場にいます。その分を差し引いて聞くのが、聞く側の務めだと私は思います。

大きな見通しは、確かめられる前に広まり、広まったあとは計画の前提として使われ始めます。一度前提になった見通しを、あとから疑い直すのは簡単ではありません。

製薬の会社でも、AIの導入を決める会議で、こうした見通しが持ち出されるはずです。そのときは、誰が誰に向けて語ったものかを確かめてください。自社の仕事がAIで何をどれだけ減らせるかは、自社の記録を調べなければ分からないからです。

期待を語る作り手は、自分たちを縛るルールの作り方にも、関わり始めているようです。

CH 021:39

02作る側が出した法案

出典 Politico / Stocktwits

では作る側は、自分たちを縛るルールに対して何をしているのでしょうか。縛られる立場の会社がルールの中身を書くとき、そのルールが誰を守るのかが問われます。

表 1 Anthropicの安全法案
項目報じられた内容
出した側Anthropic(自社で起草)
渡した相手議員。非公開で打診
中身の指摘政府が危険なモデルを阻止する権限を制限する内容(解説記事)

Politico・Bloombergの報道。法案の全文は未公表

作り手が自分で書いた案を、公にせずに議員へ持ち込んだと報じられました。この記事の範囲では、中身の全体は確かめられません。ただ、国が危ないAIを止める力を狭める案だという指摘が出ています。指摘のとおりなら、どこまで止めるかを、止められる側が決めることになります。

安全規制への立場
Jensen Huang(NVIDIA CEO)
場
Dreamforce
立場
AI安全規制に否定的
Dario Amodei(Anthropic CEO)
場
Dreamforce
立場
Huang氏と対照的と報じられた

Stocktwitsの見出しに基づく

作る会社の経営者のあいだでも、規制への考えは割れています。要らないという声が、要るという声と対照的だと報じられました。ただ、要ると言う側の案が国の力を弱めるものなら、言葉と中身が食い違います。食い違っているかどうかは、全文が公開されるまで判断できません。

製薬の実務家なら、規制を受ける側が決まりを書くことの難しさを、身をもって知っているはずです。決まりを信じてもらうには、中身を外の人が読める形にしておくことが欠かせません。公開されていない案は、まだその条件を満たしていません。全文が出たら、誰を守る決まりなのかを自分で読んで確かめたいと私は考えています。

ルールが定まるのを待たずに、AIを受け入れる側の会社は、作り手のAIを自分のサービスから締め出し始めています。

CH 031:46

03締め出されるエージェント

出典 The Tech Buzz / UA.NEWS / Yeni Şafak English

ルールが決まる前に、現場ではもう、AIを受け付けるかどうかの判断が始まっています。判断しているのは、作る側でも国でもなく、AIを受け入れる側の会社です。

表 2 利用を制限した側
主体報じられた内容
Yelp・Delta航空OpenAI、Meta、xAIの自律型エージェントを締め出す
銀行などAIエージェントの利用を制限
AmazonとPerplexityエージェントの買い物をめぐる法廷闘争が続く

旅の予約やお金の出し入れを扱う会社が、人の代わりに動くAIを、受け付けない方向に動いていると報じられました。買い物を任されたAIをめぐっては、争いが裁判にまで進んでいます。代わりに動くAIが仕事をできるかどうかは、相手の会社が受け付けるかどうかで決まります。性能がいくら高くても、相手が断れば何もできません。

図 2 インドで公表された侵入
AIエージェント侵入した側稼働中システムインドの当局不正侵入と当局が公表対策の呼びかけ接続制限・認証強化AIエージェント侵入した側稼働中システムインドの当局不正侵入と当局が公表対策の呼びかけ接続制限・認証強化
インドのサイバーセキュリティー当局は、AIエージェントによる稼働中システムへの不正侵入を公表し、開発者と各組織に対策を呼びかけた。

一方で、ある国で情報の守りを担う当局は、自分たちの動いている仕組みに、こうしたAIが入り込んだと公表しました。守りを専門にする側でさえ、防ぎきれなかったことになります。断る会社が増えているのは、この危うさを知っているからだと私は見ています。

任されたAIは、仕事の進め方を自分で選びます。そのため、頼んだ人が想定していない場所へ進むことがあります。どこまで入らせるかと、相手が誰かを確かめる方法を、先に決めておく必要があります。

製薬の社内にも、患者の情報や試験の記録を置いた仕組みがあります。外から来るAIを入れるのか、社内で使うAIにどこまで触らせるのか。それを決めるのは作り手ではなく、自社です。

AIを受け付けない会社が増える一方で、市場では、AIに注いだお金そのものが疑われ始めました。

CH 041:51

041日で1兆ドルの下落

出典 Yahoo Finance / The Globe and Mail / Fortune / Yahoo Finance

期待が大きいほど、それを支えるお金も大きくなります。では、そのお金は期待に見合う形で返ってくるのでしょうか。今日の市場の動きは、この問いに向けられていました。

表 3 同じ日に並んだ額
項目額報道
ハイテク株の下落1営業日で1兆ドル超Nvidia CEO「すべては過ぎ去る」
Microsoftの設備投資1750億ドル事業の重荷との論調
MetaのAI投資1000億ドル超Wang氏に託したと報道
米データセンターの電力2028年まで32ギガワット不足Morgan Stanleyの試算

市場は、一日で大きな値を失ったと伝えられています。作る会社は桁違いの投資を続けていると伝えられ、その重さが本業の稼ぎを圧迫しているという見方も出ています。そのうえ、計算に使う建物を動かす電気が、この先足りなくなるという試算もあります。お金を用意できても、電気が無ければ計算はできません。

同じ日にはほかの値動きも重なっていて、下げた理由をAIだけに求めることはできません。それでも、AIに賭けた額が大きい分、値動きも大きくなると私は見ています。業界の経営者は一時のことだと語りましたが、それは見通しであって、約束ではありません。

作り手は、建物や半導体に先にお金を払い、あとで利用料として回収します。商売がこの順番で成り立っている以上、回収が遅れれば、その負担は値上げという形で使う側に回ってくるおそれがあります。

製薬の会社がAIを使うときも、これは人ごとではありません。作り手の採算が苦しくなれば、利用料が上がることも、提供が止まることも起こりえます。一社のAIだけに頼る仕組みは、避けておくほうが安全です。

お金と電気の制約に加えて、国という単位でも、AIを外へ出すかどうかが管理され始めています。

CH 051:32

05中国のAI輸出管理

出典 Pasquale Pillitteri / The China-Global South Project / BigGo Finance

AIの扱いを決めるのは、会社や市場だけではありません。国もまた、自国のAIを外へ出すかどうかを管理しようとしています。

①

管理の対象

大規模モデル、エージェント、計算クラスターなど23のAI技術。北京が10月16日に草案を公表した

②

対象の外

オープンソースとAPI経由の利用は対象外。提案はAIの海外展開も対象に含むと報じられた

③

DeepSeekの資金

第2回資金調達は約1000億人民元(約150億ドル)で完了の見通し。CATLが追加投資と報じられた

その国は、大きなモデルから計算の設備まで、AIの技術を広く管理の対象にする案を示しました。ただし、公開された技術と、ネットを通じて使う形は、対象から外れるとされます。技術そのものは国外へ持ち出させず、使わせることは続ける。私にはそう読める範囲の決め方です。同じ国の開発元には、大きなお金が集まり続けています。外へ出すものを管理しながら、国の中では育てる。その両方が同時に進んでいます。

国がこうした管理をかけるのは、AIを安全保障に関わる技術と見ているからです。AIはただの商品ではなく、国の力として扱われ始めました。どの国で作られたかが、使えるかどうかを左右する場面も出てきそうです。

製薬の会社は、国をまたいで研究や開発を進めます。使っているAIが、どの国の決まりの下にあるのか。その決まりが変わったときにも、使い続けられるのか。導入するときに、この二点を確かめておく必要があります。

国や市場の動きを見たところで、製薬の研究や職場に直接関わる出来事に話を移します。

CH 061:40

06製薬の現場では

出典 cristinaiglesias.com / California Employment Law Report / Fox Business

ここまでの話は、製薬の仕事とどう結びつくのでしょうか。研究の道具、職場での見守り、そして薬の効き目の約束。今日はそのどれにも、製薬に近い動きがありました。

①

AlphaFold 3の提供

Google DeepMindと欧州委員会が、研究者200人に300万ドル分の計算資源を提供する

②

気分を読むAIの禁止

カリフォルニア州が、従業員の気分を読むAIを禁止(AB 1883)。カメラ分析などの確認を促す

③

寿命150歳の主張

AI創薬の企業のCEOが、加齢や病気を標的とする医薬品の開発状況をテレビ番組で語った

たんぱく質の形を見通すAIを、公の機関と開発元が研究者に使わせる取り組みが始まります。計算にかかる高い費用のせいで研究を諦める、ということが起きにくくなるかもしれません。その一方で、働く人の気分をAIで読み取ることを、ある州が禁じました。社内で使っている見守りの道具が法に触れないか、確かめておく時期に来ています。働く人の信頼を失えば、どんな道具も役に立ちません。

さらに、AIで薬を生み出すという企業が、寿命を大きく延ばす薬に賭けていると報じられました。製薬の実務家は、効き目を言うには根拠が要ることを、誰よりもよく知っています。約束が大きいほど、それがどの段階の試験の話なのかを確かめる必要があります。言葉の勢いに引かれず試験の記録を見る習慣が、ここでも役に立ちます。

研究では道具が開かれ、職場では見守りに制限がかかり、薬の約束には疑いが向けられています。どれも、AIを使う側が自分で判断を求められる場面です。

では、AIの作り手の中で働く人たちは、自分たちの仕事の行方をどうとらえているのでしょうか。

CH 071:31

07作る側の社内の雇用

出典 India Today / Business Insider

最後に見るのは、AIにいちばん近い場所で働く人たちの見方です。作り手の社員は、AIに何ができるようになったかを、誰よりも早く知る立場にいます。

表 4 Anthropic社内の報道
報道内容
新人採用新卒・ジュニア採用を絞る。AIの作業量は人間の6倍と説明(India Today)
社員1334人の調査2030年までに自分の仕事の80%をAIが担うと予測(Business Insider)
米国の労働者見込む影響は社員の予測より小さい

その会社は、入ったばかりの若い人の採用を絞っていると報じられました。社員の多くは、数年のうちに、自らが担う仕事の大半をAIが引き受けると見ています。一方で、国の働き手全体が考える影響は、それより小さいとされます。近くで見ている人ほど、変化を大きく見ているのです。どちらが正しいかは、まだ分かりません。ただ、作り手の社内で先に起きたことは、少し遅れて外にも広がる可能性があります。

この差は、製薬の会社にとって重い意味を持ちます。若い人は、記録の整理や文献の下調べを通じて、判断する力を身につけてきました。その仕事をAIが引き受ければ、学ぶ機会がなくなるおそれがあります。だから人をどう育てるかは、AIを入れる前に決め直しておくべきだと私は考えます。AIに任せる仕事と、人が手を動かして覚える仕事を分けて考えるところから始めたいのです。

作り手の社員が予想する変化の大きさは、使う側に残された準備の時間が、思うより短いかもしれないことを示しています。

まとめ0:43

Anthropicの法案に、議会はどう応じるか。非公開の打診に議員や他社がどう反応するかが次の論点になる。

全文
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導入

AIへの期待は、いまや一国の経済の見通しとして語られるところまで膨らんでいます。ところが同じころ、市場では株の値が大きく下がりました。期待と疑いが、同時に強まっているのです。その二つのあいだで、私は一つの問いを考えています。AIの使い方を制限する力を持つのは、いったい誰なのか。作る会社なのか、AIを受け入れる会社なのか、国なのか、それとも市場なのか。

今日の出来事はどれもこの問いにつながっていて、答えは一つに定まりません。だから製薬の実務家は、誰かが決めてくれるのを待たずに、自社でAIを使う範囲と止める手順を決めておく必要があります。

CH 01 米GDP44兆ドルの予測

最初に確かめたいのは、期待を語る声がどこから出ているかです。期待が大きく語られるほど、それは予算や政策の判断を動かします。だから私は、誰が語ったのかを、見通しの中身と同じくらい大事だと考えています。語ったのはAIを作る側の中心にいる人で、聞いていたのは国の経済の進め方を決める人たちでした。作り手が、決める側に向けて直接、大きな見通しを示したことになります。

この見通しが受け入れられれば、規制を緩める理由にも、投資を集める理由にもなります。これは、国全体で生み出される価値が、AIによって数年で大きく増えるという見立てです。ただし予測であって、まだ起きた事実ではありません。しかも語り手は、期待が高まるほど得をする立場にいます。その分を差し引いて聞くのが、聞く側の務めだと私は思います。大きな見通しは、確かめられる前に広まり、広まったあとは計画の前提として使われ始めます。

一度前提になった見通しを、あとから疑い直すのは簡単ではありません。製薬の会社でも、AIの導入を決める会議で、こうした見通しが持ち出されるはずです。そのときは、誰が誰に向けて語ったものかを確かめてください。自社の仕事がAIで何をどれだけ減らせるかは、自社の記録を調べなければ分からないからです。期待を語る作り手は、自分たちを縛るルールの作り方にも、関わり始めているようです。

CH 02 作る側が出した法案

では作る側は、自分たちを縛るルールに対して何をしているのでしょうか。縛られる立場の会社がルールの中身を書くとき、そのルールが誰を守るのかが問われます。作り手が自分で書いた案を、公にせずに議員へ持ち込んだと報じられました。

この記事の範囲では、中身の全体は確かめられません。ただ、国が危ないAIを止める力を狭める案だという指摘が出ています。指摘のとおりなら、どこまで止めるかを、止められる側が決めることになります。作る会社の経営者のあいだでも、規制への考えは割れています。要らないという声が、要るという声と対照的だと報じられました。ただ、要ると言う側の案が国の力を弱めるものなら、言葉と中身が食い違います。

食い違っているかどうかは、全文が公開されるまで判断できません。製薬の実務家なら、規制を受ける側が決まりを書くことの難しさを、身をもって知っているはずです。決まりを信じてもらうには、中身を外の人が読める形にしておくことが欠かせません。公開されていない案は、まだその条件を満たしていません。全文が出たら、誰を守る決まりなのかを自分で読んで確かめたいと私は考えています。

ルールが定まるのを待たずに、AIを受け入れる側の会社は、作り手のAIを自分のサービスから締め出し始めています。

CH 03 締め出されるエージェント

ルールが決まる前に、現場ではもう、AIを受け付けるかどうかの判断が始まっています。判断しているのは、作る側でも国でもなく、AIを受け入れる側の会社です。旅の予約やお金の出し入れを扱う会社が、人の代わりに動くAIを、受け付けない方向に動いていると報じられました。買い物を任されたAIをめぐっては、争いが裁判にまで進んでいます。代わりに動くAIが仕事をできるかどうかは、相手の会社が受け付けるかどうかで決まります。

性能がいくら高くても、相手が断れば何もできません。一方で、ある国で情報の守りを担う当局は、自分たちの動いている仕組みに、こうしたAIが入り込んだと公表しました。守りを専門にする側でさえ、防ぎきれなかったことになります。断る会社が増えているのは、この危うさを知っているからだと私は見ています。任されたAIは、仕事の進め方を自分で選びます。そのため、頼んだ人が想定していない場所へ進むことがあります。

どこまで入らせるかと、相手が誰かを確かめる方法を、先に決めておく必要があります。製薬の社内にも、患者の情報や試験の記録を置いた仕組みがあります。外から来るAIを入れるのか、社内で使うAIにどこまで触らせるのか。それを決めるのは作り手ではなく、自社です。AIを受け付けない会社が増える一方で、市場では、AIに注いだお金そのものが疑われ始めました。

CH 04 1日で1兆ドルの下落

期待が大きいほど、それを支えるお金も大きくなります。では、そのお金は期待に見合う形で返ってくるのでしょうか。今日の市場の動きは、この問いに向けられていました。市場は、一日で大きな値を失ったと伝えられています。作る会社は桁違いの投資を続けていると伝えられ、その重さが本業の稼ぎを圧迫しているという見方も出ています。そのうえ、計算に使う建物を動かす電気が、この先足りなくなるという試算もあります。

お金を用意できても、電気が無ければ計算はできません。同じ日にはほかの値動きも重なっていて、下げた理由をAIだけに求めることはできません。それでも、AIに賭けた額が大きい分、値動きも大きくなると私は見ています。業界の経営者は一時のことだと語りましたが、それは見通しであって、約束ではありません。作り手は、建物や半導体に先にお金を払い、あとで利用料として回収します。

商売がこの順番で成り立っている以上、回収が遅れれば、その負担は値上げという形で使う側に回ってくるおそれがあります。製薬の会社がAIを使うときも、これは人ごとではありません。作り手の採算が苦しくなれば、利用料が上がることも、提供が止まることも起こりえます。一社のAIだけに頼る仕組みは、避けておくほうが安全です。お金と電気の制約に加えて、国という単位でも、AIを外へ出すかどうかが管理され始めています。

CH 05 中国のAI輸出管理

AIの扱いを決めるのは、会社や市場だけではありません。国もまた、自国のAIを外へ出すかどうかを管理しようとしています。その国は、大きなモデルから計算の設備まで、AIの技術を広く管理の対象にする案を示しました。ただし、公開された技術と、ネットを通じて使う形は、対象から外れるとされます。技術そのものは国外へ持ち出させず、使わせることは続ける。

私にはそう読める範囲の決め方です。同じ国の開発元には、大きなお金が集まり続けています。外へ出すものを管理しながら、国の中では育てる。その両方が同時に進んでいます。国がこうした管理をかけるのは、AIを安全保障に関わる技術と見ているからです。AIはただの商品ではなく、国の力として扱われ始めました。どの国で作られたかが、使えるかどうかを左右する場面も出てきそうです。

製薬の会社は、国をまたいで研究や開発を進めます。使っているAIが、どの国の決まりの下にあるのか。その決まりが変わったときにも、使い続けられるのか。導入するときに、この二点を確かめておく必要があります。国や市場の動きを見たところで、製薬の研究や職場に直接関わる出来事に話を移します。

CH 06 製薬の現場では

ここまでの話は、製薬の仕事とどう結びつくのでしょうか。研究の道具、職場での見守り、そして薬の効き目の約束。今日はそのどれにも、製薬に近い動きがありました。たんぱく質の形を見通すAIを、公の機関と開発元が研究者に使わせる取り組みが始まります。計算にかかる高い費用のせいで研究を諦める、ということが起きにくくなるかもしれません。その一方で、働く人の気分をAIで読み取ることを、ある州が禁じました。

社内で使っている見守りの道具が法に触れないか、確かめておく時期に来ています。働く人の信頼を失えば、どんな道具も役に立ちません。さらに、AIで薬を生み出すという企業が、寿命を大きく延ばす薬に賭けていると報じられました。製薬の実務家は、効き目を言うには根拠が要ることを、誰よりもよく知っています。約束が大きいほど、それがどの段階の試験の話なのかを確かめる必要があります。

言葉の勢いに引かれず試験の記録を見る習慣が、ここでも役に立ちます。研究では道具が開かれ、職場では見守りに制限がかかり、薬の約束には疑いが向けられています。どれも、AIを使う側が自分で判断を求められる場面です。では、AIの作り手の中で働く人たちは、自分たちの仕事の行方をどうとらえているのでしょうか。

CH 07 作る側の社内の雇用

最後に見るのは、AIにいちばん近い場所で働く人たちの見方です。作り手の社員は、AIに何ができるようになったかを、誰よりも早く知る立場にいます。その会社は、入ったばかりの若い人の採用を絞っていると報じられました。社員の多くは、数年のうちに、自らが担う仕事の大半をAIが引き受けると見ています。

一方で、国の働き手全体が考える影響は、それより小さいとされます。近くで見ている人ほど、変化を大きく見ているのです。どちらが正しいかは、まだ分かりません。ただ、作り手の社内で先に起きたことは、少し遅れて外にも広がる可能性があります。この差は、製薬の会社にとって重い意味を持ちます。若い人は、記録の整理や文献の下調べを通じて、判断する力を身につけてきました。

その仕事をAIが引き受ければ、学ぶ機会がなくなるおそれがあります。だから人をどう育てるかは、AIを入れる前に決め直しておくべきだと私は考えます。AIに任せる仕事と、人が手を動かして覚える仕事を分けて考えるところから始めたいのです。作り手の社員が予想する変化の大きさは、使う側に残された準備の時間が、思うより短いかもしれないことを示しています。

まとめ

AIへの期待は、作り手の声によって大きく膨らんでいます。けれども、AIの使い方を制限するのは作り手だけではありません。受け入れる会社は自分のサービスで断り、市場はお金の動きで疑いを示し、国は技術が外へ出ることを管理しようとしています。製薬の実務家も、AIを使う範囲と止め方、そして人の育て方を、自分たちで決める番です。決めた中身は、あとで説明できるように記録に残しておきます。

明日は、作り手が書いた案を、法を作る人たちがどう受け止めるかを見ていきます。

出典
  1. CH 01Seeking Alpha「Anthropic co-founder Clark projects U.S. GDP to hit $44T by 2030 thanks to AI」 seekingalpha.com
  2. CH 01Reuters「AI rapidly improving, could vastly boost US GDP, Anthropic's Clark tells policymakers」 reuters.com
  3. CH 02Politico「Anthropic quietly pitches its own AI safety bill to lawmakers」 politico.com
  4. CH 02Stocktwits「Nvidia’s Huang Shuns Need For AI Safety Regulations, In Contrast To Anthropic CEO Amodei’s View At Dreamforce Conference」 stocktwits.com
  5. CH 03The Tech Buzz「AI Agents Hit a Wall as Major Websites Block Access」 techbuzz.ai
  6. CH 03UA.NEWS「Yelp, Delta and banks restrict AI agents on their services — The Verge」 ua.news
  7. CH 03Yeni Şafak English「India’s cybersecurity agency says AI agents breached its computer systems」 en.yenisafak.com
  8. CH 04Yahoo Finance「Nvidia’s CEO Says “All of This Is Going to Pass” After Tech Lost $1 Trillion in a Day」 finance.yahoo.com
  9. CH 04The Globe and Mail「Here's How Microsoft's $175 Billion in Capital Expenditures Is Hurting Its Business」 theglobeandmail.com
  10. CH 04Fortune「A 44-minute call and a memo: How Alexandr Wang won Mark Zuckerberg’s trust—and a $100 billion-plus AI bet」 fortune.com
  11. CH 04Yahoo Finance「AI’s Power Problem Just Got a Number: 32 Gigawatts」 finance.yahoo.com
  12. CH 05Pasquale Pillitteri「China announces export controls on 23 AI technologies」 pasqualepillitteri.it
  13. CH 05The China-Global South Project「Beijing Seeks Tighter Grip on AI Exports Amid U.S. Rivalry」 chinaglobalsouth.com
  14. CH 05BigGo Finance「Industrial capital floods into DeepSeek, funding round doubles to ¥2.4 trillion as CATL adds ¥240 billion investment」 finance.biggo.com
  15. CH 06cristinaiglesias.com「Google DeepMind Backs 200 European Scientists with AlphaFold 3 Access and $3M Compute Grant」 cristinaiglesias.com
  16. CH 06California Employment Law Report「California Bans AI That Reads Employees' Moods (AB 1883) — Five Takeaways from Our 2027 New Laws Masterclass」 californiaemploymentlawreport.com
  17. CH 06Fox Business「Medical company bets on AI-powered drug breakthrough that could extend lifespan to 150」 foxbusiness.com
  18. CH 07India Today「Anthropic is hiring fewer juniors, says AI now does 6 times more work than humans」 indiatoday.in
  19. CH 07Business Insider「Anthropic polled 1,334 of its employees. They're more sure than most of us that AI will take over jobs.」 businessinsider.com

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総字数
3,942
平均文長
34.0
最長文
58
章
7
平易度
L1〜L7 合格
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