2026年11月5日、OpenAI は AI データセンターについての約束「National Community Compact」を出し、自社が所有し運営する今後の拠点では公務員と秘密保持契約を結ばないと表明した。公務員との秘密保持契約をやめるという OpenAI の約束は、AI データセンターの何を開き、何を閉じたままにするのか?開くのは、OpenAI が自分で所有し運営する拠点での公務員との契約と、水と電力の数字だ。警備・企業秘密・競争上の情報という三つの例外、他社が運営する拠点、宣伝の請負に付く秘密保持は、閉じたまま残る。

01OpenAI の約束が開くのは、自社運営の AI 拠点での公務員との契約だ

OpenAI の約束で外から見えるようになるのは、同社が自分で所有し運営する今後の AI データセンターに限られる。そうした拠点では、OpenAI は地元の公務員と秘密保持契約を結ばない。拠点ごとの水と電力の使用量も公開する。同社は、こうした拠点を compute campus と呼んでいる。

秘密保持契約は、交渉で知った中身を外に漏らさないと約束する契約である。データセンターの誘致では、企業と地元の役所の担当者がこの契約を結び、計画の条件を伏せてきた。その結果、住民が条件を知ったのは議会が決めた後だった、という例が米国で報じられている。

私は、この約束を読むときには、言葉の強さより範囲を先に見るべきだと考える。確かめることは三つある。どの拠点が対象か。誰との契約が対象か。どんな例外が残るか。この三つが分かれば、約束がどこまで届くかを読み手が自分で測れる。

02OpenAI は契約・電力・公開の三つを約束し、警備・企業秘密・競争上の情報は伏せたまま残した

OpenAI が約束した中身は三本の柱からなり、別に政策案が一つ付いている。トルコの通信社 AA、技術ニュースの FoneArena と The Neuron の記事を突き合わせると、次のようになる。

①

公務員と結ばない

OpenAI は公務員と秘密保持契約を結ばない。例外は警備・企業秘密・競争上の情報だけだ。

②

電力は全額払う

使う電力の費用を全額負担し、近隣の家庭や企業に回さないとした。

③

数字を公開する

拠点ごとの水と電力の使用量を公開するとした。

④

政策案は提案

州などに秘密保持契約を狭く限る規則を求めたが、法として発効したわけではない。

四つ目の政策案は、上の三つと同じ約束として読まないほうがよい。三つの柱が縛るのは OpenAI 自身だけだ。政策案が他社を縛るのは、州がそれを法にした後になる。読み手が二つを混ぜると、他社の拠点の条件まで公開されたと思い込んでしまう。

電力の約束には、もう少し細かい書き方がある。AA の記事によれば、OpenAI は電力だけでなく、関連する設備の費用も全額負担するとした。対象は、ここでも同社が所有し運営する今後の拠点である。

03報じられた例では、秘密保持契約が議会の審査より前に住民から条件を隠していた

三つの例外を除けば、公務員との契約は開かれる。では、これまでの秘密保持契約は、どの段階で誰から何を隠してきたのか。米国の公共放送 OPB が2026年8月に配信した記事が、その実態を伝えている。

OPB によれば、バージニア州では研究者たちが前年のデータセンター計画31件を調べた。そのうち少なくとも25件で、秘密保持契約が使われていた。契約が効くのは、企業が計画を打診してから、地元の議会が審査して決めるまでの間である。この間、署名した公務員は計画の条件を住民に話せない。

OPB の記事には、ルイジアナ州の住民の声も出てくる。住民たちは、計画が決まった後で初めて条件を知ったと話した。

図 1 秘密保持契約が住民の知る時期を遅らせた流れ
企業が計画を打診地元の役所へ秘密保持契約公務員が署名議会が審査し決める住民は決定後に知る条件は伏せられたまま企業が計画を打診地元の役所へ秘密保持契約公務員が署名議会が審査し決める住民は決定後に知る条件は伏せられたまま
秘密保持契約は、条件を知る時点を住民が意見を言える段階より後ろにずらしてきた。

図で見てほしいのは、住民が条件を知る時期だ。秘密保持契約があると、その時期は議会の決定より後ろにずれる。審査が終わってから知ったのでは、住民が審査の場で意見を言う機会は既に過ぎている。

04約束が出たのは、Microsoft の先行と州の禁止の動きが重なった後だった

条件を伏せるやり方をやめる動きは、OpenAI より先に始まっていた。Microsoft は、地方政府との秘密保持契約をやめると発表した。同社によれば、世界で有効な契約を洗い出し、解消に向けて相手と調整しているという。

州の側も動いた。OPB によれば、ペンシルベニア州の知事は、州の機関がデータセンターの秘密保持契約を結ぶことを禁じた。少なくとも4つの州で、同じような禁止の法案が出ている。

見るところMicrosoftOpenAI(2026-11-05)
やめる相手地方政府との秘密保持契約公務員との秘密保持契約
残す例外企業秘密と競争上の情報は共有しうる警備の情報・企業秘密・競争上の情報
既に結んだ契約世界で有効な契約を洗い出し、解消を調整するエフィンガム郡の契約を7月に無効にしたと記載
対象の拠点記載の範囲は確かめていない自社が所有し運営する今後の拠点

二社が残す例外は、よく似ている。どちらの会社も、企業秘密と競争上の情報は伏せられるとした。違いが出るのは、既に結んだ契約の扱いと、対象の拠点の書き方だ。Microsoft の投稿が対象の拠点をどう定めているかを、私は確かめられなかった。

時期も重なっている。AA は、OpenAI の約束が米国の中間選挙の2日後に出たと伝えた。データセンターへの批判が強まる中での発表だった。ただし、選挙の結果が約束を生んだと示す資料は無い。言えるのは順序までだ。先行する企業と州の動きがあり、選挙があり、その後に約束が出た。

05確かめる材料は、拠点ごとの水と電力の数字と、既に結んだ契約の扱いになる

経緯がどうであれ、住民が知りたいのは、約束が守られるかどうかだ。外から数えて確かめられる材料は二つある。

一つ目は、拠点ごとに公開される水と電力の使用量である。FoneArena の記事によれば、OpenAI は自社が運営する拠点ごとに、この二つの数字を出すとした。数字が出れば、住民は町の拠点がどれだけの水と電力を使うかを、役所に問い合わせなくても分かる。

二つ目は、既に結んだ契約の扱いだ。OpenAI は、ジョージア州エフィンガム郡で結んでいた契約を、7月に無効にしたと書いた。The Neuron が伝えたこの話は OpenAI 自身の説明で、第三者が確かめた記録とは違う。郡の議会の記録と照らせば、住民が自分で確かめられる。

図 2 約束で開くものと閉じたまま残るもの
開くもの閉じたまま残るもの公務員との契約自社運営の拠点電力の全額負担水と電力の数字拠点ごとに公開警備の情報企業秘密競争上の情報も他社運営の拠点約束の対象外開くもの閉じたまま残るもの公務員との契約自社運営の拠点電力の全額負担水と電力の数字拠点ごとに公開警備の情報企業秘密競争上の情報も他社運営の拠点約束の対象外
数えて確かめられるのは上の段の数字で、下の段は約束の後も外からは見えない。

図の上の段にある契約と数字は、住民が記録で確かめられる。下の段の警備の情報や企業秘密は、約束の後も住民からは見えない。OpenAI は、これらについては公務員と秘密保持契約を結べるとしている。

政策案は、OpenAI の約束より多くの項目の報告を求めている。FoneArena によれば、政策案は水、電力、騒音、雇用の四つの報告を業界全体に求めている。ただし、これは州に向けた提案で、まだどの会社も縛っていない。

06他社が運営する拠点と宣伝の請負と州の法は、約束の外にある

数えて確かめられるのは、OpenAI が自分で運営する拠点の数字に限られる。約束の外には、三つのものが残っている。

①

他社運営の拠点

約束は自社が所有し運営する拠点に限られ、共同の拠点には自動では広がらない。

②

宣伝の請負

同じ日、ウィスコンシン州の拠点を宣伝する有償投稿の応募者に秘密保持契約が求められたと報じられた。

③

州の法

他社の拠点にまで義務として広がるのは、州が政策案を法にしたときだ。

一つ目は、拠点の範囲である。The Neuron は、政策案を公表しただけでは、住民を守る決まりは生まれないと書いた。他社の運営する拠点に約束が自動で広がるわけでもない、とも指摘している。共同で建てる拠点について約束を当てにするなら、住民はまず、誰が所有し誰が運営するのかを確かめる必要がある。

二つ目は、契約の相手だ。OpenAI が結ばないと約束したのは、公務員との秘密保持契約だけである。地元の調査報道機関 Wisconsin Watch は、約束と同じ11月5日に、ある募集を報じた。ウィスコンシン州ポートワシントンの拠点を SNS で宣伝する有償の投稿者を募り、応募する前に秘密保持契約への署名を求めていたという。

この拠点には、OpenAI、Oracle、Vantage の3社が関わっている。ただし、OpenAI がこの拠点を所有し運営しているのか、募集した者と OpenAI がどういう関係なのかは、記事からは分からない。だから、約束を破ったとは言えない。この件が示すのは、OpenAI が関わる拠点の周りでも、公務員以外との秘密保持契約が求められている、ということだ。

三つ目は、州の法である。他社に秘密保持契約をやめることを義務づけるには、州が政策案を法にする必要がある。法が通るまでは、他社の拠点の条件はこれまでどおり伏せられうる。

07約束が守られたかは、拠点ごとの報告が出るまで確かめられない

他社運営の拠点、宣伝の請負、州の法は、約束の外にある。約束の内側でどれほど効くかも、まだ分からない。約束は今後の拠点に向けたもので、公表の時点では拠点ごとの報告は一つも出ていない。

約束がどれほど効くかは、二つの記録が出てから分かると私は考える。一つは、最初の拠点の水と電力の報告だ。もう一つは、政策案を受けた州議会の審議である。どちらがいつ出るかを示した資料は、今のところ見当たらない。

それまでの間、住民や AI を使う企業が近くの拠点について確かめる手順は、運営者を調べるところから始まる。

図 3 近くの AI 拠点の約束を確かめる順序
自社運営運営者を調べる所有と運営は誰か自社運営か拠点の報告を読む水と電力の数字議会の記録と照らす契約の有無自社運営運営者を調べる所有と運営は誰か自社運営か拠点の報告を読む水と電力の数字議会の記録と照らす契約の有無
自社運営でない拠点では約束は使えないので、議会の記録を直接見ることになる。

自社運営でない拠点には、約束は使えない。その場合、住民は議会の記録を直接見て、秘密保持契約があったかどうかを確かめることになる。そうした場所で住民がまず頼れるのは、公の記録だ。

  1. OpenAI の約束は自社が所有し運営する今後の拠点に限られる。共同の拠点では、まず運営者が誰かを確かめないと約束は使えない。
  2. 約束が止めるのは、公務員との秘密保持契約だけだ。同じ日、宣伝の投稿者の募集で秘密保持契約が求められていたと報じられたので、契約の相手を確かめる必要がある。
  3. 業界全体に求める政策案は提案で、法としてはまだ効いていない。他社の拠点の条件を開くことが義務になるかは、州議会が規則にするかで決まる。
結語

OpenAI の約束で住民に見えるようになるのは、同社が運営する拠点での公務員との契約と、水と電力の数字までだ。三つの例外と他社運営の拠点と宣伝の請負は、閉じたまま残る。約束が守られたかは、拠点ごとの数字と議会の記録で確かめるしかない。

出典·参考文献
  1. Anadolu Agency. OpenAI pledges to end data center secrecy agreements amid US public opposition. 2026-11-06. https://www.aa.com.tr/en/science-technology/openai-pledges-to-end-data-center-secrecy-agreements-amid-us-public-opposition/4113781(National Community Compact、公務員との秘密保持契約をやめること、電力と関連設備の全額負担、中間選挙の2日後という時期)
  2. FoneArena. OpenAI announces National Community Compact, policy blueprint for AI compute campuses. 2026-11-06. https://www.fonearena.com/blog/496527/openai-national-community-compact-policy-blueprint-for-ai.html(約束の範囲が自社が所有し運営する拠点であること、拠点ごとの水と電力の公開、政策案と報告の項目)
  3. OPB (Gulf States Newsroom, Drew Hawkins). NDAs are hiding data center deals, drawing ire from locals — and attention from lawmakers. 2026-08-27. https://www.opb.org/article/2026/08/27/ndas-are-hiding-data-center-deals-drawing-ire-from-locals-and-attention-from-lawmakers/(バージニア州の31件中少なくとも25件、住民が決定の後に知ったという証言、ペンシルベニア州知事の禁止、4州の法案)
  4. Microsoft Local. Putting communities first: Our decision to end NDAs with local governments. 2026. https://local.microsoft.com/blog/putting-communities-first-our-decision-to-end-ndas-with-local-governments/(地方政府との秘密保持契約をやめること、有効な契約の解消の調整、企業秘密の例外)
  5. The Neuron. OpenAI's New Data Center Pitch Starts With Letting Officials Talk. 2026-11-05. https://www.theneuron.ai/news/openai-data-center-reset-no-ndas-public-officials/(三つの例外、他社運営の拠点に自動では広がらないこと、政策案が法でないこと、エフィンガム郡の契約を7月に無効にしたという OpenAI の記載)
  6. Wisconsin Watch (Tom Kertscher). Manufactured consent: Paid social media posters are being recruited to promote Wisconsin data center. 2026-11-05. https://wisconsinwatch.org/2026/11/wisconsin-data-center-paid-social-media-posters-recruited-to-promote-port-washington/(ポートワシントンの拠点を宣伝する有償投稿の応募者に秘密保持契約が求められたこと)