AIが解く世界の難問 ─ 医学・創薬
AI が進めた科学と学問の成果を、学問ごとに
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肺がんおよび大腸がんの検出を対象とした解釈可能な階層型深層学習フレームワーク
原題: An interpretable hierarchical deep learning framework for lung and colon cancer detection
病理組織画像による肺がんと大腸がんの分類は、クラス間の類似性や組織形態のばらつきが大きく、従来の深層学習モデルは判断過程の透明性が低いことが課題だった。本研究では、5クラスの分類を「正常か癌か」の判定から始め、正常組織の分類または癌の亜型の特定を担う専用の分類器へ振り分ける段階的な階層型フレームワークを提案した。LC25000で98.50%、独立したLungHist700データセットで82.01%の精度を示し、Grad-CAM、Grad-CAM++、LIME、Occlusion Sensitivityによって予測に寄与する画像領域を可視化した。
B型・C型肝炎ウイルス感染のない人における肝細胞がん発症のAI予測
原題: Artificial intelligence-based prediction of hepatocellular carcinoma in individuals without HBV or HCV infection in the MASLD era
現行の肝細胞がん(HCC)監視ガイドラインは、主に肝硬変やウイルス性肝炎のある人を対象としている。本研究では、ウイルス性肝炎のない人のHCC発症リスクを予測するAIモデルを開発した。韓国の国民健康保険データベースで約796万人を解析し、12のAIモデルを比較した結果、MHA_DNNが最も高い性能を示し、独立した検証集団でも安定した精度を保った。脂肪肝指数(FLI)とトリグリセリド(TG)が主要な予測因子であり、代謝リスクに基づく個別化された監視への応用が示唆される。
網膜眼底画像から健康状態を自動予測する、注意機構と説明可能AIを用いたマルチタスク深層学習フレームワーク
原題: A multi task deep learning framework for automated health condition prediction from retinal fundus images using hybrid attention and explainable AI
従来の網膜画像向け深層学習は単一タスクに限られ、解釈性や撮影条件の違いへの対応も不十分だった。本研究では、1枚の眼底画像から糖尿病網膜症の重症度、緑内障、加齢黄斑変性の病期、心血管リスクを同時に分類する多タスクネットワークを提案した。EyePACSなど4つのデータセットで評価し、精度94.7%、AUC 0.978を示し、単一タスクモデルより統計的に優れていた。
オートマトンと機械学習を統合した学生のうつ病予測フレームワーク
原題: An automata-machine learning integrated framework for intelligent mental health diagnostics
学生のうつ病は早期に予測されにくいという問題がある。本研究では、有限オートマトンによる行動モデルと機械学習を組み合わせ、学生の感情状態から特徴量を生成した。オートマトンによる特徴統合を加えたデータに、ランダムフォレストとKStarのアンサンブルを適用したところ、精度はベースラインの82.02%から96.88%に向上した。研究では、この手法が解釈可能性と行動の追跡可能性を保てると述べられている。
大規模な臨床情報抽出におけるLLMの多段階検証フレームワーク
原題: A multi-stage validation framework for trustworthy large-scale clinical information extraction using large language models
大規模言語モデル(LLM)を診療記録からの情報抽出に用いる際、人手による大量の注釈なしに信頼性を評価する方法が課題だった。本研究では、プロンプト調整、ルールベースの絞り込み、意味的根拠の確認、LLMによる判定、専門家レビュー、予測妥当性の分析を組み合わせた多段階の検証フレームワークを提案した。11種類の物質に関する薬物使用障害の診断を91万9783件の臨床記録から抽出して適用したところ、根拠のない抽出の14.59%が除外された。判定用LLMを基準としたF1スコアは0.80で、LLMが抽出した診断は構造化データより専門的治療の利用をよく予測した。
顔と舌の写真からAIで冠動脈疾患を検出、小規模試験で全患者を特定
原題: AI detects coronary heart disease from face and tongue photos in small test
顔と舌の写真で学習させたAIシステムを使い、冠動脈疾患(CHD)の検出を試みた。中国の新たな研究による小規模な試験で、冠動脈疾患の患者全員を正しく特定した。
デジタル聴診とAIによるバングラデシュの小児呼吸器疾患における副雑音の識別
原題: Identification of adventitious lung sounds in children with respiratory illnesses in Bangladesh using artificial intelligence and digital auscultation
統合的小児疾患管理(IMCI)ガイドラインは肺炎診断の感度は高いが特異度は低い。本研究では、現地の非医師の保健従事者がデジタル聴診器で5歳未満の肺炎疑い児の胸部音を記録し、AIアルゴリズムが異常音(断続性ラ音や喘鳴)を識別できるかを小児科医のパネルの判定と比較した。その結果、異常音の検出感度は全体で61.8%、特異度は60.7%であり、IMCIの肺炎例では感度63.5%、特異度66.8%だった。AIの性能は中程度にとどまり、判定不能な録音を分類する能力の向上が今後の課題とされている。
基礎モデルを用いた外科切除断端の自動描画(インクを使わない方式)
原題: Autonomous labeling of surgical resection margins using a foundation model
病理標本では切除断端の評価が重要だが、手作業のインク付けによる誤りや、組織の収縮・変形、焼灼による損傷が判定を妨げる。本研究では、凍結した基礎モデルを特徴抽出器に用い、小規模な多層パーセプトロンで切除断端を全スライド画像上に示す「仮想インキングネットワーク(VIN)」を提案した。未見の組織ブロック由来の20枚のスライドで検証したところ、領域単位の精度は約73.3%で、専門家の注釈と質的に整合する断端マップが得られた。研究は概念実証の段階であり、より大規模な臨床データでの検証が必要だとされている。
AIを用いたヒト褐色脂肪の臨床的表現型解析
原題: Artificial intelligence-enabled clinical phenotyping of human brown fat
ヒトの褐色脂肪組織(BAT)の活性を大規模に定量する方法は不足していた。本研究は大規模がんセンターの101,243人の患者データとAIを用い、約8,700人のBAT活性を半自動で定量した。その結果、BAT活性が高いほど心代謝疾患のオッズが低く、脂肪分布も良好であることが示された。
医用画像の修復・高画質化を一括で行う基盤モデル「AMIFound」
原題: An all-in-one foundation model for multimodal medical image restoration and enhancement
CT、MRI、PET、内視鏡、超音波、眼底、X線の7種類の医用画像について、ノイズや動きのアーチファクト、低コントラストなどで劣化した画像を修復・高画質化する基盤モデルAMIFoundが提案された。376万組の高画質画像と劣化画像のペアで学習され、38の既存手法と比べて画質指標、臨床医による評価、頑健性試験で優れた結果を示した。高画質化した画像は44の疾患検出タスクや非小細胞肺がんの腫瘍病期予測、生存リスク層別化の精度向上にも寄与した。
睡眠に潜む兆候から将来の健康状態を読み取れる可能性
原題: Hidden signals in sleep can predict future health
AIツールは1晩分の睡眠データから、従来の睡眠指標では見逃されていた生理的パターンを読み取ることができ、そのパターンは疾患や死亡率と関連している。2本の論文は、睡眠データには臨床家や研究者が現在引き出している以上の健康情報が含まれることを示唆している。睡眠の変化が病気の診断より前に現れるとする報告も増えている。
機械学習で線毛運動を解析し、原発性線毛運動不全症を健常な線毛と区別
原題: Machine learning analysis of cilia driven particle transport distinguishes primary ciliary dyskinesia from normal cilia
原発性線毛運動不全症(PCD)は線毛の運動異常を起こす遺伝性疾患で、診断が難しい。研究者らは、高速顕微鏡で撮影した培養気道細胞上の粒子輸送を解析する機械学習の枠組み「CiliaTracks」を開発した。PCD患者14人と健常者10人から得た602本の動画を用いて古典的機械学習モデルと畳み込みニューラルネットワークで分類したところ、95〜97%の精度でPCDと正常な試料を区別できた。
粒子群最適化ヒストグラム平坦化とVGG19ベースU-Netによる脳腫瘍セグメンテーション
原題: Brain tumor segmentation using particle swarm optimized histogram equalization and a VGG19 based U-Net
MRI画像での脳腫瘍の領域分割は時間がかかり、誤りや術者のバイアスの影響を受けやすい。本研究は、改良したU-NetとVGG-19に、粒子群最適化ヒストグラム平坦化(PSO-HE)を組み合わせたSPOHE-VGGNetを提案した。Figshareデータセットでは髄膜腫0.9522、神経膠腫0.9428、下垂体腫瘍0.9518のDice係数を、BraTS 2021では全腫瘍で0.9463を得た。ただし臨床での判断に用いるには、外部・体積・臨床医による検証がさらに必要である。
Earth AIの惑星規模地理空間基盤モデル、世界の公衆衛生への応用
原題: Unlocking Earth AI’s planetary geospatial foundation models for global public health
公衆衛生の意思決定は、報告の遅れやデータの分断、データの少なさによって妨げられることが多い。Google Earth AIの人口動態基盤モデル(PDFM)は、プライバシーに配慮した検索傾向、人の移動、建物の密度、環境要因を場所ごとの埋め込み表現にまとめる。これを既存の疫学モデルに追加の入力として組み込めば、課題ごとの追加学習なしで使える。研究チームはこの手法について、5件のパートナーとの事例研究を発表した。
深層学習による2次元マルチビュー心エコー図を用いた肥大型心筋症と心アミロイドーシスの鑑別パイプライン
原題: A deep learning-driven pipeline for differentiating hypertrophic cardiomyopathy from cardiac amyloidosis using 2D multi-view echocardiography
肥大型心筋症(HCM)と心アミロイドーシス(CA)は心エコー所見が似ており、鑑別が難しいという課題があった。本研究では、2次元心エコー像を5つの臨床的に重要な断面に分類し、断面ごとに特徴量を抽出して統合する多断面深層学習モデルを開発した。HCM 212例、CA 119例、対照200例のデータを用いた5分割交差検証で、精度0.83、感度0.81、特異度0.89、micro-F1スコア0.82を示した。著者らは、このフレームワークがHCMとCAを鑑別する信頼性の高い診断ツールになると述べている。
新しい製剤によりRNAワクチンが高温に耐えられるようになる
原題: New formulation helps RNA vaccines withstand high temperatures
RNAワクチンは超低温での保管が必要という欠点があり、MITの研究者らはこれを克服する方法に取り組んだ。mRNAワクチンの送達に使われる脂質ナノ粒子の周囲の製剤をAIアルゴリズムの助けで調整し、最適な処方を予測させることで、必要な実験数を減らし開発を速めた。その結果、室温で最長1年、または約100°F(約38°C)で2か月間安定なワクチンが作られ、マウスではモデルナのものに似たRNA型コロナワクチンと同等の強い免疫応答が得られた。