AIが解く世界の難問 ─ 化学・材料
AI が進めた科学と学問の成果を、学問ごとに
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小分子のポテンシャルエネルギーを予測する機械学習基盤
原題: A machine learning-based platform for predicting the potential energy of small molecules
薬物や遺伝子送達に関わる分子を合理的に設計するには、エネルギー最小化後の分子ポテンシャルエネルギーを正確に見積もることが重要である。本研究では、注意機構の有無を比べたCNN-BiLSTMなどの深層学習モデルを、小分子の構造データで学習させた。原子ごとの系列表現を用いることで、記述子に基づく従来の機械学習法を上回る精度でエネルギーを予測したと報告されている。
電子構造を手がかりにAIで新材料を設計
原題: Using electronic structure to guide AI in designing new materials
材料の性質は原子の配列(結晶構造)によって決まるため、所望の性質をもつ新材料の原子配置をAIで設計する試みが広がっている。東京大学生産技術研究所の研究者らは、既存の生成AIモデルを拡張し、結晶構造と合わせて材料の電子構造も設計できるようにした。新モデル「MatterGen-e⁻」はnpj Computational Materialsで報告されている。
リチウムイオン電池電解質における多Li+クラスター形成の証拠
原題: Evidence for multi-Li + clustering in lithium-ion battery electrolytes
リチウムイオン電池の電解質が原子レベルでどのような溶媒和構造をとるかは、実験だけでは解明が難しい。本研究は機械学習を用いた原子スケールのシミュレーションと核磁気共鳴分光法、電気化学データ、量子化学計算を組み合わせ、アニオンを伴わない多Li+錯体を明らかにした。この錯体は還元されやすく、経験的に選ばれてきたエチレンカーボネートを含む溶媒混合系の有効性を説明する。
微分を使わずに分子のヘッシアンを予測する機械学習ポテンシャル「HIP」
原題: HIP: Hessian Interatomic Potentials without derivatives
分子のヘッシアン(ポテンシャルエネルギーの二階微分)は計算化学の多くの工程で必要だが、計算コストが高く系の大きさに対する拡張性も低い。本研究では、自動微分や有限差分に頼らずヘッシアンを直接予測する深層学習モデル「HIP」を提案し、グラフニューラルネットワークから得た表現で対称なヘッシアンを構成する。遷移状態探索、構造最適化、振動解析などで、自動微分由来のヘッシアンより高速かつ高精度だと報告されている。
大規模言語モデルによる物性予測の限界
原題: Less can be more for predicting properties with large language models
結晶構造から生成エネルギーや弾性率を予測するような、座標と分類情報からなるデータの物性予測に大規模言語モデル(LLM)が使われているが、有効な方法は明らかでない。研究チームは合成データセットとベンチマーク「MatText」を用いて検証し、LLMは座標情報をほぼ捉えられず、分類的なパターンには優れることを示した。この傾向はモデルサイズ(最大700億パラメータ)、データ量(最大2×10^6構造)、テキスト表現によらず見られ、構造の影響が大きい物性予測では幾何学的アーキテクチャがLLMを上回るという。