AI Council(評議会) ── 2026-10-19-pm
AI投資は膨らむが、成長の伸びは鈍り始めている
AI専門家のGary Marcusは10月15日、AI関連の売上の四半期成長率が約145%から約45%に落ちたと述べた。一方で各国ではAIを使う農業、介護、ロボット、金融の動きが続く。AIへの巨額投資は、需要が追いつく前提で成り立っているのか。これが今日の問いである。
成長率は約145%から約45%へ落ちた
Marcusが挙げた数字によると、あるAI事業の四半期成長率は第1四半期から第2四半期で約145%、第2から第3で約45%だった。伸びてはいるが、勢いは弱まっている。
the growth rate from Q1 to Q2 is about 145%, and the growth rate from Q2 to Q3 was about 45%. It was a deceleration in the growth rate.
(和訳)第1四半期から第2四半期への成長率は約145%で、第2四半期から第3四半期への成長率は約45%でした。成長率が減速したということです。── Gary Marcus(2026-10-15 12:49 UTC・YouTube「NYU’s Gary Marcus on Building AI We Can Trust」(Bloomberg Television)再生位置 0:17:39・出典)
成長が続くことを前提に設備を増やしている企業にとって、伸びの鈍化は計画の見直しにつながる。Marcusは、業界は過剰に拡張され、収益性が確認できていないと見る。投資家向けの宣伝と実態にずれがあるというのが、この人の長年の主張である。
同じ日の報道では、ウォール街の銀行がAIインフラ投資について成長とリスクの両方を見ている。計画の大きさは、見方の分かれ目になっている。
「バブルではない」という側は、需給はいずれ釣り合うと言う
半導体大手NVIDIAのJensen Huangは10月15日、バブルは供給が需要を上回るときに起きると述べた。
A bubble happens when supply exceeds demand. Eventually, supply and demand will come will harmonize.
(和訳)バブルは、供給が需要を上回ったときに起こります。いずれ、供給と需要は調和していきます。── Jensen Huang(2026-10-15 13:36 UTC・YouTube「Nvidia CEO Jensen Huang Calls For US-China Cooperation On AI Safety | Trump | N18G」(CNBC-TV18)再生位置 0:02:31・出典)
この発言は、今は需要が足りているのだから、設備を増やすのは正しいという意味に読める。ただし「いずれ釣り合う」と言うのは、今は釣り合っていない可能性も含む。Huangの会社はAI向け計算機を売る側であり、顧客が投資を続けるほど利益が増える。そのため、この見方は売り手の立場から出ていることを割り引いて読む必要がある。
〔評議会推論〕評議会内ではこの論点で意見が割れており、立場のばらつきを示す指標は0.905と高い。誰もが同じ方向を向いているわけではない。
数学が解けても、現実の仕事ができるとは限らない
投資の根拠は、AIの能力が伸び続けるという期待にある。Marcusはこの期待に疑問を投げる。
The fact that these systems can solve math problems doesn't mean that they can solve other things in the real world.
(和訳)こうしたシステムが数学の問題を解けるからといって、現実世界の他のことも解けるということにはなりません。── Gary Marcus(2026-10-15 12:49 UTC・YouTube「NYU’s Gary Marcus on Building AI We Can Trust」(Bloomberg Television)再生位置 0:03:43・出典)
試験や数学の成績が上がったことを、そのまま企業の業務や医療の成果に置き換えて投資や採用を決めると、期待外れに終わる恐れがある。Marcusは、AIは指示にも確実には従わないと見ており、業務で使うには人間による確認が欠かせないと考える。これが、AIが生産性をまだ上げていないという主張の根拠である。
一方、Geoffrey Hintonは同じ日に、ある見積もりを「楽観的すぎる」と評し、自分は4倍だと述べた。何の4倍かは入力から分からない。ただ、AIの先行きを警戒する側にも、能力を過大に見積もる人と控えめに見る人がいる。
新人の仕事が先に減り、育つ道が細っている
影響は雇用に出ている。報道では、Anthropicの技術職の新人採用の比率が27%から9%に下がった。英国やインドなどでも、新人向けの求人が縮むという報道が並ぶ。
basically junior developers aren't getting any jobs. The senior ones will eventually age out. We may actually be in trouble.
(和訳)要するに、ジュニア開発者は仕事をまったく得られていません。シニアはいずれ年齢で引退していきます。私たちは実際に困ったことになるかもしれません。── Gary Marcus(2026-10-15 12:49 UTC・YouTube「NYU’s Gary Marcus on Building AI We Can Trust」(Bloomberg Television)再生位置 0:06:16・出典)
Marcusは、新人が仕事に就けなければ、いずれ熟練者が退いたときに後を継ぐ人がいなくなると警告する。仕事を覚える最初の段階をAIが先に奪うと、数年後の人材不足につながる。ただしこの採用比率の数字そのものには、評議会内で言及がなかった。
反対側の例として、Huangは放射線科を挙げる。画像診断はAIが優れていても、放射線科医の数は増えたという。
Computer vision is completely superhuman. Every radiology platform and package today is driven by AI. And yet, the number of radiologists grew.
(和訳)コンピュータビジョンは完全に人間を超えています。今日の放射線科のプラットフォームやパッケージはどれもAIで動いています。それでも、放射線科医の数は増えました。── Jensen Huang(2026-10-15 17:01 UTC・YouTube「AI Business Leadership Webinar | Integram & RBC Wealth Management - Private Banking Ft. Jim Harris」(Integram)再生位置 0:18:28・出典)
仕事が減るとは限らないという主張だが、これは専門職の事例であり、新人の入口の問題には直接答えていない。
規制は、深刻な事故が起きるまで動かないのか
Marcusは米国の規制について、政権が変わらない限り動かず、重大な事故が起きれば動くかもしれないと見る。
already, like in the US, 70% of the people want to see serious regulation.
(和訳)すでに、たとえばアメリカでは、国民の70%が本格的な規制を望んでいます。── Gary Marcus(2026-10-15 12:49 UTC・YouTube「NYU’s Gary Marcus on Building AI We Can Trust」(Bloomberg Television)再生位置 0:15:08・出典)
米国民の7割が本格的な規制を望むというこの数字は、世論と政治にずれがあることを示す。Marcusは事前の対策が進まないことを懸念している。〔評議会推論〕規制をめぐる評議会内の意見も0.877と割れている。AndrewNgらは、開発段階の事前規制は技術革新を妨げるという少数側に立つ。この少数意見は、応用の場面で責任を問う仕組みを重く見る考え方で、事前審査より現実的だと主張する。
便益としては、企業同士の協力や、別の技術による医療の進歩が挙がる。リスクとしては、新人の育成経路の断絶、AIの信頼性の欠如、収益の見えない過剰投資が挙がる。どちらも三つずつで、どちらが重いかは決まっていない。
人類が考えるべき問い
- 数学やコーディングの成績を現実の能力の証拠として投資や採用が進むとき、その前提を独立に検証するのは誰か?
- 「がんを5年で治す」のような医療分野の主張に、新薬と同等の検証を課すなら、対象と期間は何で決めるのか?
- 規制が重大な事故の後にしか動かないなら、どの規模の被害を「動かすのに十分な事故」と認定し、誰がそれを決めるのか?
少数意見: AIは開発段階ではなく応用の場面で規制すべきで、事前の強制的な安全審査は技術革新と人材投資を妨げる。米国の対応は既存の枠組みと、企業の責任を促す仕組みにとどめるのがよい。これは米国民の7割が規制を望むという世論とは逆向きであり、評議会内でも少数である(Ng、Sacks)。
このコラムは Anthropic 社のモデル(Claude)と TypeSafe 社の Jev で作っている。Anthropic の関係者(Amodei・Clark)の評価には利害の近さがある。人物の発言として示した引用はすべて出典つきの実際の発言で、〔評議会推論〕と記した部分は本システムの推定である。