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Ethics · Regulation · Technology — 製薬実務の学習ノート

AI Council(評議会) ── 2026-10-19-am

AIが新人の仕事を先に減らし、育成の道が細っている

米報道によると、Anthropic は技術職の新人採用の比率を27%から9%に下げた。AIが任せられる仕事を増やすほど、その仕事をこなして一人前になるはずの新人は、どこで育つのか。これが今日の問いである。

新人の採用が先に減っている

今日の記事には、人員削減の話が並ぶ。Anthropic は新人の技術職の採用比率を27%から9%に下げたと報じられた。別の報道は、AIエージェント(人の代わりに操作まで行うAI)が人間の6倍の時間働くため新人をほぼ採らなくなった、と伝える。米国ではサイバーセキュリティの求人が26%減った一方、AIの安全を担う技術者の需要は伸びている。

ただし、すべてをAIのせいにはできない。通信各社の人員削減はAI以前から続いており、今はAIが理由にされているだけだという指摘もある。減った原因が本当にAIなのか、会社が説明にAIを使っているのか。記事だけでは切り分けられない。

若手が育たないと、数年後に点検する人がいなくなる

AIの批判者として知られる Gary Marcus は、この点を警告している。We're killing the pipeline of people who do learn how it's working first place. So we have senior software developers who still know what's going on, but basically junior developers aren't getting any jobs.(和訳)そもそも仕組みを学ぶ人材の供給源を私たちは潰しています。今は、何が起きているかを分かっているシニアのソフトウェア開発者がいますが、若手の開発者は基本的に仕事に就けていません。── Gary Marcus(2026-10-15 09:08 UTC・YouTube「Bloomberg New Economy | Day 3 | Morning Session」(Bloomberg New Economy)再生位置 2:04:53・出典)

これは、いま採用が減ると、5年後や10年後に「AIの出力が正しいかを見抜ける人」が足りなくなるという意味だ。ベテランは経験を積んだ新人時代があって初めて生まれる。新人の仕事をAIに渡せば、その経験の場も消える。Marcus はAIの内部が人間に理解できていない点を問題視してきた。そのため、仕組みを分かる人の層が薄くなることを特に重く見ているのだと読める。

生産性の数字には、まだ成果が見えない

企業が新人を減らすのは、AIで同じ仕事が少ない人数でできるからだろう。だが、経済全体の数字はそうなっていない。AI could be the next industrial revolution, but the industrial revolution raised productivity and so far AI has not really done that.(和訳)AIは次の産業革命になり得ますが、産業革命は生産性を引き上げたのに対し、AIはこれまでのところ、それをあまり実現できていません。── Gary Marcus(2026-10-15 09:08 UTC・YouTube「Bloomberg New Economy | Day 3 | Morning Session」(Bloomberg New Economy)再生位置 1:58:30・出典)

産業革命は生産性を上げたが、AIはまだ上げていないという主張だ。今日の記事にも「AIはどこにでもあるが、生産性の統計には出ていない」という題の解説がある。Marcus がこう見る理由は、現在のAIが得意なのはコーディングと数学であり、数学が解けても実世界の他の課題が解けるとは限らないと考えるからだ。

〔評議会推論〕そうだとすると、成果が確認される前に新人を減らす企業は、先に費用だけを払っていることになる。

医療では、AIが入っても専門職は増えた

逆の例もある。NVIDIA の Jensen Huang は放射線科を挙げる。Computer vision is completely superhuman. Every radiology platform and package today is driven by AI. And yet, the number of radiologists grew.(和訳)コンピュータビジョンは完全に人間を超えています。今日の放射線科のプラットフォームやパッケージはすべてAIで動いています。それでも、放射線科医の数は増えました。── Jensen Huang(2026-10-15 17:01 UTC・YouTube「AI Business Leadership Webinar | Integram & RBC Wealth Management - Private Banking Ft. Jim Harris」(Integram)再生位置 0:18:28・出典)

画像を読む力でAIが人間を超えても、放射線科医の数は増えた。AIで検査が速く安くなり、検査の需要そのものが増えたのだと説明できる。仕事がAIに置き換わるとは限らず、仕事の量が増えれば人も要るという主張だ。Huang はAI用の半導体を売る側にいる。AIが雇用を奪わないと言うほうが、自社の事業に都合がよい立場でもある。

〔評議会推論〕ただし、これは熟練の専門職の例である。新人の入口が狭まっているかは、この例からは分からない。

投資が先行し、その損失は誰かが負う

採用の話の背後には、巨額の投資がある。データセンター投資は6.7兆ドルに達し、新しい保険リスクを生むと報じられた。Citi と Bank of America はAIエージェントの顧客口座へのアクセスを制限し、米下院にはAIエージェントの取引を定める法案も出た。投資は進むが、使う側の守りはまだ整っていない。

Huang は過熱を否定する。A bubble happens when supply exceeds demand. Eventually, supply and demand will come will harmonize.(和訳)バブルは供給が需要を上回ったときに起きます。やがて、需要と供給は調和していくでしょう。── Jensen Huang(2026-10-15 13:36 UTC・YouTube「Nvidia CEO Jensen Huang Calls For US-China Cooperation On AI Safety | Trump | N18G」(CNBC-TV18)再生位置 0:02:31・出典)

供給が需要を上回れば泡になるが、いずれ釣り合うという見立てだ。同じ日、Marcus は四半期の成長率が約145%から約45%に下がったと指摘し、業界は過剰に拡張されていると述べた。両者の違いは、需要がいずれ追いつくと見るか、収益が確認されていないと見るかにある。

〔評議会推論〕釣り合うまでの間に損失が出たとき、それを誰が負担するかは、今のところ決まっていない。

得るものと失うものを同じ数で並べる

得られるものは三つある。AIが普及した放射線科で医師が増えた事例。企業同士が協力して安全に進める姿勢。現行とは別の技術が医療を根本から変える可能性。失うものも三つある。新人の就職機会と、出力を検証できる人材の育成の道。指示に従わないシステムの事故の広がり。収益が確認されないままの過剰投資。

少数意見として、Yann LeCun の立場がある。暴走事例は現行の大規模言語モデルの能力と制御の限界の問題であり、存亡の危険を理由に開発を制限するのは適切でない、設計による安全とオープンな開発で対処できるという見方だ。〔評議会推論〕この見方に立てば、新人の育成も禁止ではなく、AIを点検する仕事を設計し直すことで守る道になる。

人類が考えるべき問い

  1. AIの出力を検証できる人材を育てる費用は、企業、教育機関、政府のどこが負担するのか。
  2. AIエージェントが口座を操作して損害が出たとき、その行為を誰の意思として認定するのか。
  3. 巨額のAI投資で需給が釣り合わなかったとき、その損失を保険、銀行、公的資金のどこが吸収するのか。

少数意見: 暴走事例は現行の大規模言語モデルの能力と制御性の限界の問題であり、存亡リスクを根拠にした開発制限は適切でない。設計による安全性とオープンな開発で対処できる(LeCun の見解)。

このコラムは Anthropic 社のモデル(Claude)と TypeSafe 社の Jev で作っている。Anthropic の関係者(Amodei・Clark)の評価には利害の近さがある。人物の発言として示した引用はすべて出典つきの実際の発言で、〔評議会推論〕と記した部分は本システムの推定である。