AI導入の見返りと人の居場所
Comcastはブロードバンド契約の減少を受け、窓口業務をAIエージェントに移して人員を減らすと伝えられている。一方でApolloは、AIによって米企業に財務上の見返りは生まれていないと指摘している。人を減らす決定が成果の確認より先に動くとき、仕事や判断、言葉、信頼は静かにAIの側へ寄っていく。この半日に並べた記事は、行政の審査、警察、選挙、教育、専門研究と場面こそ違うが、同じ一点で読者に判断を求めている。AIを入れるかどうかよりも前に、入れた後に生じる負担と責任を、誰が引き受ける設計になっているのかということだ。
Comcastはブロードバンド契約が14.4万件減ったことを受け、窓口業務をAIエージェントに移して人員を削減すると伝えられている(TechSpot)。TechStoryも、契約減とAIの普及を理由に挙げ、大規模な人員削減に踏み切る見通しだと報じた。削減の根拠は二つある。契約者が減ったことと、窓口をAIに任せられることだ。ただし、AIに任せた後でコストや顧客対応がどう変わるかは、これらの記事からは読み取れない。一方でApolloは、AIによって米企業に財務上の見返りは生まれていないと指摘している(Business Insider)。人を減らす決定が、成果を確かめる前に動いている可能性があるということだ。
削減だけが選択肢ではない。JPMorganのプライベートバンクは、AIで顧問の業務を効率化している(Bloomberg.com)。顧客に向き合う役割は残したまま、顧問の手間を減らす使い方だ。シンガポールではNTUCとKPMGが、AI導入を雇用の質の向上につなげる人材変革プログラムを打ち出した(NTUC UPortal)。この二件で扱われているのは人数ではなく、役割の中身である。
Comcastの例とJPMorgan、NTUC・KPMGの例を並べると、同じAI導入でも前提が異なることがわかる。前者は契約減という業績の悪化を背景に、窓口という機能ごとAIへ移す。後者は人が担う仕事を残し、その質を変えようとしている。ただしJPMorganの記事が示すのは業務の効率化までで、成果の大きさはここからはわからない。NTUCとKPMGのプログラムも、取り組みの発表の段階にある。
