人員削減と、AIが触れる人の領域
AIが雇用の数字を動かす一方で、同じ技術は選挙の情報、恋人や育児の相談、がんの予測、軍や製薬の業務にも入っている。IT大手の人員削減は世界で20万人近くに達したと伝えられたが、削減の規模は、いま起きている変化の一部にすぎない。米国の成人でAIチャットボットから選挙の情報を得ている人は8%にとどまり、AI恋人サービスの大手が破産すれば利用者の相手は削除される。数が大きいか小さいかにかかわらず、AIの答えを人が受け取り、判断や関係の基盤に置く場面が増えている。この半日、読者に持ち帰ってほしいのは、AIにどこまで任せてよいか、その線をどこに引くかという問いである。以下の各節は、その線が業種や場面ごとに異なる位置にあることを示している。
IT大手の人員削減は、AI転換を理由に世界で20万人近くに達したと、インドの経済紙Livemintは伝えた。削減の規模はすでに一社や一国の話を超えている。Al Jazeeraは、AIに絡む人員削減が英国で先行していると取り上げ、その理由を論じた。金融でもBarclaysについて、AIによる人員削減と銀行税への過度な懸念が並べて報じられている(Seeking Alpha)。IT、英国、銀行と、業種も地域も違う場所で同じ種類の動きが出ている。そのため、AIと雇用を一社の経営判断としてではなく、複数の産業に共通する現象として見る必要がある。
この動きは雇用の外側にも波及している。IMFはアジア経済の課題を評価するなかで、エネルギー高とAIをともに重荷として挙げた(India Today)。AI転換は企業にとって費用の削減策であり、同時に経済全体にとっては調整の負担にもなる。さらに銀行のケースでは、人員削減の話題が銀行税という制度上の論点と同じ文脈で語られている(Seeking Alpha)。企業の削減計画を読むときは、税や規制の動きと併せて見ないと、その判断が単独で決まったのか、制度の影響を受けたのかを区別できない。
同じ流れは医療の組織にも現れている。Hospitalogyによると、Navvisのヘルスケア責任者であるCEOは、バリューベースドケア(VBC)が成果重視へ進む一方、LEADは見送りになったと語った。そのうえで、義務化されうるリスクモデルへの備えを語っている。ここで動いているのはAIそのものではない。支払いと評価の仕組みが変わり、組織はそれに合わせて再編を迫られている。義務化が見送られても、備えの必要は残る。この点は、人員削減が制度の整備より先に進んだ英国の例と重なる。
