AIが動かす職場と人の関係
Amazonの再編、カナダや英国での人員削減、ゴールドマン・サックスが進める対人スキルの教育。同じ時期に、AIを背景にした人と組織の見直しが複数の場所で表れている。国や企業はGPUや提携に巨額を投じ、診断や農業では特定の判断に合わせた利用が広がる。一方で、データセンターへの反対、孤立への対応、安全規制の線引きを巡る対立も、投資と同じ速さで表に出てきた。本稿が追うのは、AIをどれだけ速く入れるかではなく、入れた先で人をどう支える設計が用意されているかという点である。導入の成否がその設計の有無で分かれるのかを、各節の事例から確かめていく。
Amazonは、人員削減、規制への対応、AI成長への投資が重なるなかで事業を再編している(HR Katha)。カナダのフードテック各社でも人員削減が相次ぎ、AIと自動化がカナダに何をもたらすのかが問われている(Digital Journal)。英国の金融業界でも、AIが雇用にどう影響するかが焦点になっている(Bloomberg.com)。この3件は地域も業種も違うが、AIを背景に人員と組織の形が見直されている点で共通する。自社の削減や再編を判断するときは、AIが置き換える仕事と、規制や事業環境といった別の要因とを切り分けて見る必要がある。Amazonの事例が示すように、再編の理由はAIだけとは限らないからだ。
その一方で、ゴールドマン・サックスは過去最多のアドバイザーを養成し、AI時代に「人間関係の構築方法」を徹底的に教えている(Business Insider Japan)。Amazonやカナダのフードテック、英金融業界が人員を絞る動きと、ゴールドマン・サックスが人の役割を研修で厚くする動きが、同じ時期に並んでいる。ここで読者に問われるのは、AIに任せる業務と人が担う業務をどこで分けるかである。その線引きは、採用の人数だけでなく、研修に何を入れるかまで左右する。
もう一つの論点は、AIを業務に入れた後の運営である。HRTech Seriesの記事は、AIが組織図に加わるとき、自律型AIの業務には新たな運営体制が必要になると論じている。AIを導入しても、誰が監督し、誰が責任を負うかが決まっていなければ、削減で浮いた人員の分をAIが担えるとは言い切れない。削減の判断と運営体制の設計は、別々に進めず、同じ時点で検討するのが妥当だろう。


