AI投資の原資は誰が負担するか
AI への投資は、いま二つの場所から資金を得ている。一つは人員の削減で、Oracle は大規模な削減を計画し、その分を AI 投資に回すと伝えられた。もう一つは巨額の提携で、AstraZeneca と insitro の契約は「18.6億ドル」とも「4,000万ドル」とも報じられている。同じ契約に複数の金額が付くのは、確定した負担と条件付きの上限が、見出しの上で区別されないまま並ぶからである。企業や政府の発表を読むとき、金額の大きさや導入の速さそのものは判断の材料になりにくい。その資金を誰が負担し、成果を誰が受け取るのかを、各節の事例で順に確かめていく。
OpenAIやOracleなどのAI投資は、まず従業員の数と財務の余力から捻出されている。Oracleは大規模な人員削減を計画し、AI投資の資金を確保するとMezha.netは伝えた。人を減らして設備と計算資源に回す構図で、負担の最初の受け手は削減対象の従業員になる。一方、Zoho創業者のベンブ氏は、AIでSaaS各社が苦境に立たされる中でも解雇しないと表明した(The Economic Times)。同じAI投資の時代に、原資を雇用に求める企業と求めない企業がある。読者が見るべきは、どちらが正しいかよりも、削減を決めた企業がその理由として何を挙げているかである。
成果の配分をめぐる議論も同時に進んでいる。ILOは、AIによる生産性向上の成果を労働者にも公平に分配すべきだと述べた(Fibre2Fashion)。これは、生産性が上がっても利益が資本の側にだけ残る場合があるという前提に立つ主張である。Oracleのように投資の原資を削減に求める企業にとっては、削減で浮いた費用と、将来AIから得る成果の双方が誰に帰属するのかが、配分論の具体的な検証対象になる。Zohoの選択は、その検証で比較できる事例の一つとなる。
雇用への見方は一枚岩ではない。KPMGの調査に対し、米国のCEOは「AIは雇用を生む」と回答した(Axios)。削減を計画する企業が現にある一方で、経営者の側からは雇用創出の見通しが示されている。この二つは矛盾して見えるが、調査の回答は経営者の見立てであり、すでに起きた削減とは時間軸が異なる。回答だけを根拠に雇用への影響を判断すると、現時点で人員削減の対象になっている人々の負担が見えなくなる。



