AIが動かす仕事と信頼の境目
クローガーは本社部門の約3,000人を、AIによる重複業務の削減とあわせて減らす方針を示した。同じ時期に、マンモグラフィから乳がんのHER2発現を予測する研究が、診断の判断に近い領域へ進んでいる。業務の整理も、医療の判断支援も、AIが出した結果を使う場面はすでに実務の中にある。一方で、その結果が正しいかどうかを誰が確かめ、誤りが出たときに誰が責任を負うのかは、導入の速さに比べて定まっていない。この半日の話題は、効率の数字では測れない部分を共通して抱えている。以下の各節では、雇用、診断、実務、規制、創作の順に、結果を確かめる手順と責任の所在がどこで決まり、どこで空いているかを見ていく。
米小売大手クローガーは、AIの活用拡大にあわせて本社部門の約3,000人を削減する方針を示した(Reuters)。Yahoo News UKは、この削減がAIによって重複業務を減らす形で進むと伝えている。現場の店舗ではなく本社の間接部門が対象であり、AIが雇用に直接及ぶ場面が、新しい製品や売り場の話ではなく、部署間で重なっていた作業の整理として現れている。導入を検討する側にとっては、AIで何ができるかよりも、自社のどの業務が重複しているかを先に洗い出せるかどうかが、効果と人員への影響を分ける要素になる。
ただし、削減される業務は、担当者が経験を積む場でもあった可能性がある。GeneOnlineは、Sanzenbacher氏がAI自動化によって専門職の徒弟モデルがどう変わるかを分析したと報じている。重複業務や定型作業が減れば、若手が先輩の仕事を手伝いながら技能を身につける機会も減りうる、という問いが立つ。育成の側でも動きがある。MSU Denverは、AI時代に向けた学生の育成で評価を受けた(MSU Denver - Early Bird)。大学が学生にAIとの付き合い方を教える取り組みは進んでいるが、就職後に実務の中で人を育てる仕組みが同じ速さで整うかは別の問題である。
さらに、一社の効率化は、その外側の経済環境と切り離せない。CNBCによれば、IMFのチーフエコノミストはインフレとAIのリスク、そして借入コストの上昇について語っている。借入コストが上がる局面では、企業は人件費や投資の判断をより厳しく見直すことになる。クローガーのような削減が、金利やインフレの状況とどう重なるのかは、個別企業の発表だけでは読み取れない。


