AIに「できる」とされた仕事と、任せて成果が出た仕事の差
AIについては、何ができるかを示す数字や発表が毎日のように届く。一方で、実際に仕事や判断を任せて成果が出た範囲は、それと同じ速さでは確かめられていない。米Krogerは3年かけて本社社員3000人を減らすと報じられたが、その見込みの根拠になっている「担えるとされる範囲」と「引き受けて結果を出した範囲」は、同じ大きさではない。今回の半日で扱うのは、雇用、投資、人との関係、基準づくりといった別々の場面で、この二つの範囲の差がどう現れ、その差を誰がどう測っているかである。見立ての大きさに合わせて決めるのか、確かめられた分だけで決めるのか。その選び方が、各場面の判断を変えていく。
米Krogerは、AIの活用を進めながら3年かけて本社社員3000人を減らすと報じられた(Pittsburgh Post-Gazette)。別の記事は、AIで世界の雇用の4割が危ういとする見方と、リスクの高い仕事のトップ10を伝えている(Pulse Ghana)。数字は大きく、経営側にも労働者側にも「置き換えは進む」という前提を与える。ただ、この二つの数字が示しているのは、AIが担えるとされる範囲の見立てであって、実際に任せて成果が出た範囲ではない。
その差を測ろうとした報告は、見立てを素直には支えていない。放射線科の人材とAIをめぐる広い主張について、証拠は裏付けないとの結論が出ている(AuntMinnie、HPI)。画像を読む仕事は、AIに代わられやすい職種の代表例として長く語られてきた。その領域で、人材の需給に関する広い主張が証拠と合わないという事実は、「危うい仕事」の一覧を、そのまま雇用判断の根拠にしてよいのかという問いを残す。一覧が示すのは、仕事のうち機械が真似られる部分であり、責任を持って引き受けられる部分は別に確かめる必要がある。
エージェント研究も同じ方向を指している。ターミナルで専門業務を進めるAIエージェントを長い作業の記録で鍛えるため、練習用の環境を自動で作ると、本来エージェントがやるべき調査・実装・検証が環境づくりの段階で先に済んでしまうことがある。著者らは、作った環境を独立に実行して抜け落ちた作業を見つけ、作り直す仕組みTerminalHorizonを提案した(自サイト、arXivのプレプリントで査読前)。つまり、AIが長い作業をこなす様子として示されたものの一部は、作業そのものではなく、先回りして整えられた設定の上での出来である可能性がある。




