AI不安と現実の食い違い
通信業の人員削減は、AIが理由に掲げられるようになる前から続いていた。いまは同じ削減に、AIという説明が添えられている。ギャンブル業界では、従業員がAI起因の人員削減を報告している。雇用だけでなく、価格の決め方、銀行の取引、孤独への対応、画像診断の検証にも、AIが理由や手段として登場する。この半日の記事を読むあいだ、手元に置いておきたい問いは一つある。「AIのせい」と語られた出来事のうち、AIが実際に変えた部分はどこまでで、以前からあった判断に後から付けられた説明はどこからか。本文では、その境目を確かめるための材料を節ごとに並べる。
通信業の人員削減は、AIが理由に掲げられるようになる前から続いていた。Sebastian Barros Newsletterは、通信各社の人員削減はAI以前から進んでおり、いまはその理由にAIが使われていると指摘している。削減の年表は同じでも、添えられる説明だけが入れ替わったことになる。Times of Maltaは、ギャンブル業界の従業員がAI起因の人員削減を報告していると伝えた。通信業とギャンブル業界という別々の業界で、AIを理由とする削減の話が並んで出てきている。
この二つを並べると、読者が確かめるべき点が見えてくる。「AIで人が減った」という報告が、AIの導入そのものを指しているのか、以前からあった削減計画に付けられた説明なのかは、記事の文面だけでは区別できない。通信業の例では、AIより前の時期にも同じ削減があったかどうかが、判断の分かれ目になる。ギャンブル業界の報告は従業員側の認識であり、会社が削減の理由として何を挙げたかとは別に確かめる必要がある。
一方、不安そのものは働く人の間に広がっている。KTVUは、AIで仕事を失う不安を「AI悲嘆」と呼び、変化への向き合い方を取り上げた。Al Jazeeraは、AIへの恐怖心を巨大IT企業が武器にしているという指摘を伝えている。恐怖が強いほど、AIを使う企業の製品や投資は重要なものに見えやすい。企業の側にとっては、削減の理由をAIとして語ることで、恐怖が経営判断への異論を抑える働きをする場合もある。この指摘は、不安の出どころを働く人の実感だけでなく、語る側の動機にも探す必要があることを示す。
