AI削減と見えない統治の空白

バークレイズは支援部門を中心に約5,000人を削減する方針で、その理由にAIが挙がっている。同じ時期に、未調査のAIエージェントが米国の銀行口座にアクセスしていたとAxiosが報じ、Googleの教育向けAIは子どもの心の健康への懸念から上院の追及を受けた。AIは人員、口座、子どもの生活へと、導入の可否が議論される前に入り込んでいる。導入する側の「安全だ」「効果が出た」という申告は、読者が自分で確かめられない。州法や国家間の競争も、この速度に合わせて整ってはいない。この半日の動きから見えるのは、導入の是非よりも、事前の点検を誰が済ませ、導入後の結果を誰が確かめるのかという点で判断を改める必要があることだ。
バークレイズは支援部門を中心に約5,000人を削減する方針だ(ビジネス+IT)。The New York Timesはこれを、AI主導のコスト削減に伴う人員整理として報じた(The New York Times)。削減の理由にAIが挙がり、削減数が具体的な数字で示されている。ここで読者が見る点は、導入の成果が「何人減らしたか」で語られ始めたことだ。そうなると、導入を評価する側は削減数だけでは足りない。減った仕事の担い手がどこへ移るのかも、あわせて問う必要がある。
学び直しの側では、取り組みの担い手が分かれている。インドのIITマドラスは、AIの仕事、世界標準、スキルの再教育を扱う白書を発表した(The Economic Times)。米国ではサンダンス協会とコロラド大ボルダー校が、映画制作者向けのAI教育拠点を設ける(Longmont Times-Call)。日本では鳳凰高等学校が、家族に「ありがとう」を伝える映像をつくる特別授業を通じて、生徒にAIを学ばせた(南日本新聞)。大学、映画の業界団体、高校と、学ぶ人の年齢も職種も違う。一方で、バークレイズのように削減の対象となった人が、これらの教育に届くのかは、今回の記事からは分からない。再教育が用意されていることと、必要な人がそれを使えることは別の問題だ。
負担は雇用だけにとどまらない。ダドリー元ニューヨーク連銀総裁は、AI投資が連邦準備制度理事会(FRB)を、金利が大きく上下する局面に押し込むだろうとの見方を示した(BigGo Finance)。この見方に立てば、AIへの巨額の投資は、人員を減らす企業の内側だけでなく、金利を通じて資金の借り手や貯める人にも及ぶ。雇用と資金のどちらでも、費用は導入した企業の外に出ていく。




