AIとがん研究 ── 2026-10-09
がんと AI に関わる新しい論文を、各誌のホームページの配信・PubMed(誌を問わない検索)・OpenAlex(Google Scholar の代わりの公開の索引)から集め、Jev(言葉の判断をする AI)が「原著研究か」「AI が中心か」「13 のテーマのどれか」「治療・治験に関わるか」を判定し、重要度の高いものから 1 日の上限まで選んだ一覧です。誌の IF では絞らず、論文ごとに掲載誌の IF 相当(OpenAlex の直近 2 年の平均被引用数)とその時点を示します。各論文の抄録(アブストラクト)を全文和訳して載せています(Claude による機械翻訳。原文は題のリンク先)。
がん種別に読む: がん一般(2) · 乳がん(2) · 肺がん(2) · 膵がん(2) · 前立腺がん(1) · 腺様嚢胞癌(0) · 脳腫瘍(1) · 卵巣がん(0) · 子宮体がん(0) · 胃がん(1) · 肝臓がん(0) · 腎臓がん(0) · 膀胱がん(0)
がん一般の分子生物学の進展とAI
- Resection zone prediction for parenchyma-sparing hepatectomy planning: a comparative study of three modeling paradigms抄録(全訳)
目的:実質温存肝切除を計画するには、切除範囲を正確に決める必要がある。機能する肝組織を残し、しかもがんの切除断端を損なわないためである。本研究は原発性肝がんの実質温存手術の計画を対象とした。解剖学的・機能的な情報をどこまで複雑に取り込むかで、切除範囲の予測がどう変わるかを調べた。
方法:三つのモデル化手法を比較した。 - 幾何学的な距離に基づく手法 - 血管の解剖をもとに、灌流を明示的に扱う手法 - U-Net 構造を基盤とする深層学習モデル どの手法も、肝臓・腫瘍・血管をセグメンテーションして得た表現を入力に使う。性能は、重なりに基づく指標と距離に基づく指標で評価した。
結果:距離に基づくモデルは、予測した表面のずれが小さかった(95 パーセンタイル・ハウスドルフ距離(HD95)33.89 mm)。一方、過小セグメンテーションのため、重なりは低かった(Dice 類似係数(DSC)58.18%)。 灌流に基づく手法は、重なり(DSC 67.41%)と境界の正確さ(HD95 37.92 mm)のバランスがよかった。ただし、灌流を「ある・ない」の二値で厳密に仮定している。このため、予測範囲を大きく見積もる傾向があった。 深層学習モデルは、重なりの正確さが最も高かった(DSC 76.31%)。その一方で距離の誤差は大きかった(HD95 65.21 mm)。境界の一部が局所的に不正確なためである。 実質温存切除の計画では、他の二つのモデルを常に上回るモデルはなかった。深層学習は予測性能が高く、とくに切除量が大きい場合に強かった。幾何学的モデルと灌流に基づくモデルは、解釈しやすく、臨床で制御しやすい。距離に基づく手法は、実質を最大限に残す切除に向いている。灌流に基づくモデルは、血管に近く、灌流が失われるおそれのある腫瘍で有利である。今回の結果から、手術戦略の違いによって予測に差が出ることが分かった。このため、個々の患者の手術計画を立てるうえで有用な手がかりになりうる。
掲載誌の IF 相当:3.0(OpenAlex の直近 2 年の平均被引用数・2026-10-08 時点の値、2026-10-09 に取得。正式な IF(Clarivate)ではない)書誌:Rothert J, Rakshit J, Salz JL, Huettl F, Ehses V, Huber T, et al. Resection zone prediction for parenchyma-sparing hepatectomy planning: a comparative study of three modeling paradigms. Int J CARS. 2026 Oct 7 [Epub ahead of print]. doi:10.1007/s11548-026-03798-7.確認の範囲:抄録のみ確認 - AJAD-BoostNet: A Hybrid Deep K-Means and XGBoost Framework for Automated Cancer Histopathological Image Classification抄録(全訳)
子宮頸がんと肺がんは、世界でがんによる死亡の主な原因であり続けている。このため、正確で拡張しやすく、計算効率のよいコンピュータ支援診断システムが必要である。深層学習は、病理組織画像の解析で目覚ましい成果を上げてきた。しかし既存の手法の多くは、次の三つに頼っている。注釈付きの大規模データセット、大量の計算資源、エンドツーエンドの教師あり学習である。
これらの制約に対応するため、本研究は AJAD-BoostNet(Adaptive Joint Analysis and Deep Boosting Network)を提案する。がんの病理組織画像を自動で分類する、新しいハイブリッドの枠組みである。深層の転移学習、教師なしクラスタリング、次元削減、ブースティングによる補正を組み合わせている。
まず、事前学習済みの ResNet50 モデルで、病理組織画像から高次の意味的な特徴を取り出す。次に、主成分分析(PCA)で特徴の次元を減らす。その際、識別に役立つ情報は保つ。こうして最適化した特徴空間を K-Means 法でクラスタリングし、教師なしで最初の分類を行う。最後に、XGBoost によるブースティングの仕組みで誤分類を補正する。予測性能をさらに高め、クラスタリングの誤りを正すためである。
評価には、二つのベンチマークデータセットを用いた。IARC Cervical Cancer Image Bank と、LC25000 をもとにした Lung Cancer Histopathological Images データセットである。実験の結果、提案手法は両データセットのいずれでも有効であった。
肺がんの分類では、AJAD-BoostNet の成績は次のとおりであった。正解率 97.08%、F1 スコア 97.00%、Cohen のカッパ係数 94.17%、受信者動作特性曲線下面積(AUC)97.08%。子宮頸がんの分類では、正解率 64.84%、F1 スコア 65.00%、Cohen のカッパ係数 29.20%、AUC 64.55% であった。いずれも、同様の条件で学習させた従来の畳み込みニューラルネットワーク(CNN)モデルを上回った。さらに、10 分割交差検証と信頼区間の解析で、頑健性・安定性・汎化性能が確かめられた。
以上の結果は、深層学習で意味的な特徴を取り出し、クラスタリングとブースティングを組み合わせる方法の有用性を示している。完全な教師あり深層学習の構成に代わる、効率的で解釈しやすい選択肢となる。このため AJAD-BoostNet は、資源の限られた臨床現場でがんを知的に診断するための有望な手段である。
掲載誌の IF 相当:0.0(OpenAlex の直近 2 年の平均被引用数・2026-10-07 時点の値、2026-10-08 に取得。正式な IF(Clarivate)ではない)書誌:[No authors listed]. AJAD-BoostNet: A Hybrid Deep K-Means and XGBoost Framework for Automated Cancer Histopathological Image Classification. IJDDT. 2026 Oct 7;16(57s). doi:10.25258/ijddt.16.57s.160.確認の範囲:抄録のみ確認
乳がんの治療・治験とAI
- Artificial intelligence for clinical data extraction from EHRs in breast cancer trials: the MIRROR study抄録(全訳)
リアルワールドエビデンスや臨床試験のデータ収集では、手作業での入力と整理が最も広く使われている。しかし時間がかかり、人手の負担が大きく、転記ミスも起きる。
MIRROR は後ろ向き研究である。二つのデータ収集法を比べた。一つは電子症例報告書(eCRF)への手作業の入力である。もう一つは、人工知能(AI)を使って電子カルテ(EHR)から自動でデータを抽出する方法である。
対象は、11 件の臨床試験に参加した乳がん患者 113 例である。これらの患者の EHR から臨床情報を抽出した。このシステムは、変数ごとに元のテキストへの参照を示す。これにより、効率よく検証できる。患者はすべて Virgen del Rocío 大学病院(スペイン、セビリア)で登録された。
解析の結果、構造化・非構造化を問わず、ほとんどの臨床データ領域で正解率、適合率、再現率、F1 スコアが高かった。今後は二つの取り組みが必要である。非構造化データの抽出を改善すること、施設間で標準化した eCRF を導入することである。そうすれば、臨床情報を一貫した形で抽出・評価できる。
掲載誌の IF 相当:6.2(OpenAlex の直近 2 年の平均被引用数・2026-10-08 時点の値、2026-10-09 に取得。正式な IF(Clarivate)ではない)書誌:Parra-Calderón CL, Mina L, Ruiz-Borrego M, García J, Domínguez CD, Guich J, et al. Artificial intelligence for clinical data extraction from EHRs in breast cancer trials: the MIRROR study. npj Breast Cancer. 2026 Oct 7 [Epub ahead of print]. doi:10.1038/s41523-026-01060-6.確認の範囲:抄録のみ確認 - Cross‐Modal Artificial Intelligence Integrating Dynamic MRI and Clinical Data for Breast Cancer Diagnosis and Nodal Metastasis Prediction抄録(全訳)
乳がんの治療を個別化するには、手術前の正確な評価が重要である。評価の対象は、乳腺病変が悪性かどうかと、腋窩リンパ節(ALN)の状態である。しかし現在の方法には限界がある。診断にばらつきがあり、リンパ節の病期診断は侵襲的である。
本研究では、多施設のデータで人工知能(AI)の枠組みを開発し、検証した。目的は、乳腺病変の分類と ALN 転移の予測である。用いたデータは、ダイナミック造影磁気共鳴画像(MRI)と手術前の臨床情報である。
この多施設研究では、4 病院の患者 3320 例を四つのコホートに分けた。学習コホート、内部テストコホート、二つの独立した外部検証コホートである。病変の分類には MRI だけを使った。ALN の予測には、臨床的な特徴も加えた。
MRI の各シーケンスの解析では、Video Swin Transformer Tiny を基盤とした。これに低ランク適応と、注意機構に基づく多重インスタンス学習を組み合わせた。ALN の予測では、ゲート付きのマルチモーダル融合で画像と臨床情報を統合した。
四つのコホートでのモデルの受信者動作特性曲線下面積(AUC)は次のとおりである。病変の分類では 1.000、1.000、1.000、0.994 であった。ALN の予測では 0.991、0.974、0.987、0.960 であった。モデルの性能は、キャリブレーション解析と決定曲線解析でも詳しく調べた。探索的な生存解析では、AI が予測した ALN の状態が無病生存期間と関連していた。
これらの結果は、AI 支援による乳房 MRI の可能性を支持する。乳房病変の特徴づけと腋窩リンパ節(ALN)転移の術前評価に、定量的な情報を提供できる可能性がある。
掲載誌の IF 相当:5.4(OpenAlex の直近 2 年の平均被引用数・2026-10-08 時点の値、2026-10-09 に取得。正式な IF(Clarivate)ではない)書誌:Ren W, He Z, Deng Z, Huang Z, Cai G, Ban X, et al. Cross‐Modal Artificial Intelligence Integrating Dynamic MRI and Clinical Data for Breast Cancer Diagnosis and Nodal Metastasis Prediction. MedComm – Oncology. 2026 Oct 6;5(4):e70100. doi:10.1002/mog2.70100.確認の範囲:抄録のみ確認
肺がんの治療・治験とAI
- Development and internal validation of a predictive model for clinical deterioration in newly diagnosed lung cancer patients based on interpretable machine learning抄録(全訳)
目的このリスクを早く見つけるため、解釈可能な機械学習を用いたモデルを作り、検証した。
方法:単施設の後ろ向き研究である。対象は、2023年7月〜2025年12月に入院した新規診断の肺がん患者で、その臨床データを集めた。重要な予測因子は、二つの手法を組み合わせて選んだ。一つは LASSO(least absolute shrinkage and selection operator)回帰、もう一つは Boruta アルゴリズムである。作ったモデルは4種類で、ロジスティック回帰(LR)、ランダムフォレスト(RF)、XGBoost(extreme gradient boosting)、サポートベクターマシン(SVM)である。性能は三つの方法で評価した。受信者動作特性曲線下面積(AUC-ROC)、キャリブレーション曲線、決定曲線分析(DCA)である。さらに SHAP(SHapley Additive exPlanations)値を使い、モデルがどう判断しているかを解釈した。
結果:新規診断の肺がん患者 1,001 例を対象とした。悪化群は 121 例(12.1%)、非悪化群は 880 例(87.9%)であった。特徴量選択の結果、中核となる予測変数が5つ特定された。日常生活動作(ADL)スコア、リンパ球数、C 反応性タンパク(CRP)、呼吸数、好中球数である。内部検証セットで観察された AUC が最も高かったのは SVM モデルであった。AUC は 0.822(95% 信頼区間 0.737〜0.899)であった。感度は 0.750(95% 信頼区間 0.594〜0.893)、特異度は 0.792(95% 信頼区間 0.740〜0.838)であった。Platt スケーリングで較正した後の Brier スコアは 0.083 であった(Hosmer-Lemeshow 検定 P = 0.649)。較正の切片は 0.141、傾きは 1.126 であった。予測リスクと実際のリスクの一致は満足できる水準であった。決定曲線分析(DCA)では、臨床的な正味の利益が得られる可能性が示された。SHAP 解析と多変量回帰の結果は一貫していた。ADL スコアとリンパ球数は臨床的悪化のリスク低下と関連していた。一方、CRP と好中球数はリスク上昇と関連していた。 結論このモデルは、医療者がリスクを早期に把握するのに役立つ可能性がある。臨床判断の支援にもつながる可能性がある。
掲載誌の IF 相当:2.6(OpenAlex の直近 2 年の平均被引用数・2026-10-08 時点の値、2026-10-09 に取得。正式な IF(Clarivate)ではない)書誌:Li H, Li Y, Huang X, Zhang Z, Liu Q, Chen Q. Development and internal validation of a predictive model for clinical deterioration in newly diagnosed lung cancer patients based on interpretable machine learning. Front Med. 2026 Oct 7;13:1947529. doi:10.3389/fmed.2026.1947529.確認の範囲:抄録のみ確認 - Comparative Evaluation of Machine Learning and Parametric Survival Modelling in Cost-Effectiveness Analysis: A Case Study of First-Line Pembrolizumab Plus Chemotherapy for Non-Small Cell Lung Cancer in India抄録(全訳)
目的:がん領域の費用対効果分析(CEA)では、生存曲線をどう外挿するかで結果が大きく変わる。従来のパラメトリック法には、非比例ハザードのもとで限界があることが知られている。非比例ハザードは、免疫チェックポイント阻害薬でよく見られる。本研究では KEYNOTE-189 のデータを使い、機械学習(ML)による生存モデルがパラメトリック外挿の有用な代替になるかを検証した。あわせて、生存モデルの選び方が増分費用効果比(ICER)にどれだけ影響するかを定量した。評価対象は、進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対する一次治療のペムブロリズマブ+化学療法である。分析はインドの医療制度の立場で行った。
方法:公表された Kaplan–Meier 曲線から、Guyot アルゴリズムで個々の患者データを再構築した。当てはめたモデルは、5種類のパラメトリック分布と2種類の ML 手法である。ML 手法は、ランダムサバイバルフォレスト(RSF)と、elastic-net 正則化を用いた罰則付き Cox 回帰である。モデルの比較には、学習に使わずに取り分けたテストセットを用いた。指標は Harrell の C 統計量と統合 Brier スコア(IBS)である。生涯の費用と質調整生存年(QALY)は、3状態のマルコフモデルで推定した。3 状態マルコフモデルには、生存モデルから導いた遷移確率、インドの薬剤購入費用、公表済みの EQ-5D 効用値を入力した。不確実性は、確率的感度分析(PSA)、決定論的感度分析、完全情報の期待値(EVPI)で評価した。
結果:RSF の C 統計量は 0.641、IBS は 0.1748 であった。RSF の成績は、最も成績のよいパラメトリックモデル(対数ロジスティック、対数正規)と同程度であった。従来よく選ばれる Weibull 分布(C = 0.638)よりは、わずかに上回った。基本分析の ICER は、Weibull に基づく遷移確率では 1 QALY あたり ₹1,05,51,767 であった。RSF に基づく遷移確率では ₹97,96,723 で、7.2% 低かった。PSA は 10,000 回繰り返した。閾値 ₹5,00,000/QALY で費用対効果に優れる確率は、どちらのモデルでもほぼゼロであった。集団 EVPI は、この閾値ではごくわずかであった。ただし ₹1.06 crore/QALY 付近で最大となり、約 ₹34,773 crore に達した。ICER の不確実性を最も大きく左右したのは薬剤購入費用であった。生存モデルの選択は、検討した7つのパラメータのなかで3番目であった。
結論:ML による生存モデルは、標準的なパラメトリック分布より予測精度をわずかに、しかし一貫して高めた。その結果、推定 ICER は無視できない程度に下がった。ペムブロリズマブ+化学療法は、インドの現行価格では費用対効果に優れない。償還判断に関わるこの結論は、生存モデルを替えても変わらなかった。ただし、費用対効果に優れる水準に必要な値下げ幅は、手法によって異なった。がん領域の医療技術評価では、生存モデルの選択を構造的不確実性として明示的に検討する価値がある。非比例ハザードを示す治療では、特にそうである。
掲載誌の IF 相当:0.0(OpenAlex の直近 2 年の平均被引用数・2026-10-08 時点の値、2026-10-09 に取得。正式な IF(Clarivate)ではない)書誌:[No authors listed]. Comparative Evaluation of Machine Learning and Parametric Survival Modelling in Cost-Effectiveness Analysis: A Case Study of First-Line Pembrolizumab Plus Chemotherapy for Non-Small Cell Lung Cancer in India. Journal of chemical health risks. [Epub ahead of print]. doi:.確認の範囲:抄録のみ確認
膵がんの治療・治験とAI
- Inferring clinically relevant molecular subtypes of pancreatic cancer from routine histopathology using deep learning抄録(全訳)
膵管腺がんには、classical 型と basal-like 型という分子サブタイプがある。両者は予後と治療への反応が異なる。ただし、トランスクリプトームによるサブタイプ分類には制約がある。費用がかかり、結果が出るまで時間がかかり、組織も必要になる。本研究の目的は、これらの分子表現型を深層学習で推定できるかを調べることである。推定には、日常的に作るヘマトキシリン・エオジン染色の全スライド画像を直接用いた。
組織像と RNA シーケンスのデータがそろった 689 例を解析した。内訳は、Pancreatic Cancer Action Network コホート(n = 506)と The Cancer Genome Atlas(n = 183)である。分子サブタイプは、Moffitt の 50 遺伝子シグネチャーで定め、GATA6 の発現で精緻化した。PanSubNet は、細胞の形態と組織の構築を統合し、組織像からサブタイプを予測する。モデルの学習には、判定の信頼度が高い 171 例を用いた。内部評価は5分割交差検証で行った。さらに、信頼度の高い外部の 75 例で独立に評価した。性能は分類指標で評価した。生存との関連は、Kaplan–Meier 解析と log-rank 検定で調べた。
PanSubNet は、信頼度の高い classical 型と basal-like 型の腫瘍を見分けた。受信者動作特性曲線下面積(AUC)の平均は、内部検証で 90.3%、独立した外部検証で 84.0% であった。モデルは、中間的な転写状態に関連する特徴もとらえていた。転移例では、PanSubNet が予測したサブタイプで全生存期間が有意に層別化された。PanSubNet は、トランスクリプトーム解析のサブタイプと結果が食い違う症例のなかでも、悪性度の高い腫瘍を見分けた。PanSubNet を使えば、日常の組織像から直接分子サブタイプを分類できる。トランスクリプトーム解析を補う、速くて組織を節約できる方法になる。この手法を使えば、生物学的な情報に基づく層別化を、より多くの患者に届けられる可能性がある。分子検査が限られる場合や現実的でない場合に、特にそうである。
膵がんは、いくつかの生物学的なグループに分けられる。グループによって、病気の悪性度や治療への反応が異なる可能性がある。これらのグループは、通常は遺伝子発現検査で判定する。しかし、この検査は費用がかかり、時間もかかる。採取できる組織が少ないと実施も難しい。著者らは、日常の顕微鏡スライドからこれらのグループを直接予測する人工知能の手法、PanSubNet を開発した。モデルの学習と検証には、独立した二つのデータセットを使った。対象は、組織スライドと遺伝子発現データの両方がある患者である。PanSubNet は膵がんの主要なサブタイプを正確に判別した。中間的な生物学的性質をもつ腫瘍に関連する特徴もとらえた。この手法により、腫瘍のプロファイリングがより速く、より受けやすくなる可能性がある。分子検査が限られる場合や実施できない場合には、将来の治療計画を支援できるかもしれない。
掲載誌の IF 相当:6.0(OpenAlex の直近 2 年の平均被引用数・2026-10-08 時点の値、2026-10-09 に取得。正式な IF(Clarivate)ではない)書誌:Akbar AR, Leyva A, Esnakula A, Hasanov E, Noonan A, Meng L, et al. Inferring clinically relevant molecular subtypes of pancreatic cancer from routine histopathology using deep learning. Commun Med. 2026 Oct 6 [Epub ahead of print]. doi:10.1038/s43856-026-01952-5.確認の範囲:抄録のみ確認 - Deep learning CT signature for predicting early liver metastases in pancreatic ductal adenocarcinoma.抄録(全訳)
膵管腺がん(PDAC)では、早期肝転移(ELM)のリスクを正確に予測することが重要である。術前補助療法(NAT)の恩恵を最も受けやすい患者を見極めることも重要である。著者らは、ELM のリスクを評価する Mamba ベースの予測モデルを開発した。このモデルは、膵臓の原発腫瘍と肝臓の両方の画像特徴を統合する。評価には、PDAC 患者 1063 例の多施設コホートを用いた。モデルは ELM の予測で安定した性能を示した(AUC 0.806〜0.890)。また、モデルが高リスクと判定した患者では、無増悪生存期間(PFS)が有意に短かった(ハザード比 1.93、P < 0.001)。全生存期間(OS)も有意に短かった(ハザード比 1.89、P < 0.001)。特に、モデルが高リスクと判定した患者では、NAT で OS が有意に改善した(17.4 か月 対 34.1 か月、P < 0.001)。この差は、傾向スコアマッチング後も有意であった(P = 0.004)。一方、低リスクの患者では生存上の利益はみられなかった。画像とトランスクリプトームを組み合わせた解析では、高リスク群の生物学的な悪性度が相対的に高いことも分かった。以上から、この Mamba ベースの枠組みで ELM を正確に予測できる。NAT の恩恵を最も受けやすい PDAC 患者を見極める、臨床で実際に使えるツールになる可能性がある。
掲載誌の IF 相当:18.1(OpenAlex の直近 2 年の平均被引用数・2026-10-06 時点の値、2026-10-07 に取得。正式な IF(Clarivate)ではない)書誌:Zhao B, Gong Z, Xiao W, Chen M, Huang S, Zhu L, et al. Deep learning CT signature for predicting early liver metastases in pancreatic ductal adenocarcinoma. Nat Commun. 2026 Sep 8;17(1):10596. doi:10.1038/s41467-026-77665-z.確認の範囲:抄録のみ確認
前立腺がんの治療・治験とAI
- Resource-efficient multimodal AI for post-diagnostic prostate cancer risk stratification for home-based monitoring抄録(全訳)
前立腺がんは、世界で男性に最も多い悪性腫瘍の一つである。診断後の管理では、病期の判定とリスクの評価を長期にわたり繰り返す必要がある。しかし既存の臨床意思決定支援システム(CDSS)は、主に構造化された臨床データに頼っている。こうしたデータは集めるのに資源がかかる。そのため、通常の診療の場の外では広げにくく、使いにくい。
本研究は、資源をあまり使わないマルチモーダル AI の枠組みを示す。対象は診断後の前立腺がんで、病期分類と進行期リスクの層別化を在宅モニタリングで行うことを目指した。入力には、自宅でも得られる可能性のある特徴量を組み合わせて用いた。特徴量は、数値、カテゴリ、非構造化テキストの三種類である。これらは Cancer Screening Trial データセットから、教師あり機械学習によって系統的に選んだ。システムは、利用者が直接操作する単独のアプリケーションとして実装した。
枠組みは二つのモードからなる。一つは包括モデルで、病期を多クラスに分類する。もう一つは最小モデルで、絞り込んだ特徴量を使い、進行期かどうかの二値でリスクを層別化する。この構成で、予測性能と資源効率の釣り合いをとった。
Prostate, Lung, Colorectal and Ovarian cancer screening trial のデータセットを用いた後ろ向き解析で、CDSS は識別性能を示した(ROC 曲線下面積(ROC-AUC)0.95)。特徴量を限定したモデルは、Surveillance, Epidemiology, and End Results データセットでも評価した。両データセットで共通する特徴量は限られていたが、ROC-AUC は 0.86 だった。
最小モデルは軽量で、シリアライズ後のサイズは 9.51 MB である。CPU での推論時間は 50 ms 未満で、資源の限られた環境でもリアルタイムで動かせる。モデルの解釈には SHapley Additive exPlanations を用いた。不確実性のしきい値も設けた。確信度の低い予測には印が付き、専門家の確認に回せる。
本研究は、がんのリスク評価に使う患者向けの試作品を示した。今後、資源の限られた環境、分散型の医療、在宅医療での評価に進める可能性がある。
掲載誌の IF 相当:5.2(OpenAlex の直近 2 年の平均被引用数・2026-10-04 時点の値、2026-10-05 に取得。正式な IF(Clarivate)ではない)書誌:Khan AS, Tabassum S, Nag AK, Majumder S. Resource-efficient multimodal AI for post-diagnostic prostate cancer risk stratification for home-based monitoring. Sci Rep. 2026 Oct 7 [Epub ahead of print]. doi:10.1038/s41598-026-75102-1.確認の範囲:抄録のみ確認
腺様嚢胞癌の治療・治験とAI
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脳腫瘍の治療・治験とAI
- Non-invasive preoperative MRI-based deep transfer learning radiomics model for predicting meningioma brain invasion抄録(全訳)
背景:髄膜腫の脳浸潤(BI)を術前に評価するには、新しい画像解析の枠組みが必要である。計算の効率を高めながら、腫瘍と病理の多面的な関係を捉えられるものが求められている。2.5D MRI には、複数の断面の生物学的情報を、扱える処理量でまとめられる利点がある。本研究はこの利点を土台に、深層転移学習(DTL)を新たに組み合わせた。DTL は、事前学習済みネットワークの知識を対象領域に合わせて使う手法である。目的は二つあった。術前の造影 T1 強調画像(CE-T1WI)を用いて、腫瘍の浸潤に関わる生物学的特徴を系統的に同定する。そして、最適化した予測システムを作ることである。 方法内訳は、BI ありが 53 例、BI なしが 621 例である。コホートは、訓練セットと独立したテストセットに層別化して分けた。CE-T1WI 上で腫瘍の関心領域(ROI)を描き、ラジオミクス特徴量と DTL 特徴量を抽出した。二つの特徴量は早期融合でまとめ、その後に特徴量を選択した。訓練コホートの中では 5 分割交差検証を行った。SMOTE(少数クラスの合成オーバーサンプリング)は、各分割の訓練部分だけに適用した。検証用の分割と独立テストセットは、元のクラス比率のままとした。
結果:モデルの有効性は、ROC 曲線下面積(AUC)で比較した。ComM の AUC は、訓練セットで 0.977、テストセットで 0.935 だった。性能が最も高かったのは ComM である(訓練セット: AUCComM > AUCDTLRM > AUCRadM > AUCClinM > AUCDTLM、テストセット: AUCComM > AUCDTLRM > AUCRadM > AUCDTLM > AUCClinM)。髄膜腫 BI を術前に予測する能力は優れていた。Hosmer-Lemeshow 検定では、モデルの適合は良好だった。較正曲線では、ComM が理想曲線に最も近かった。
結論:2.5D CE-T1WI に基づく ClinM、RadM、DTLM、DTLRM、ComM は、いずれも髄膜腫 BI の予測で良好な性能を示した。最も有効性が高かったのは、臨床・ラジオミクス・DTL を融合したモデル(ComM)である。この結果から、DTL は髄膜腫 BI に関連し、ラジオミクス特徴量とは異なる特徴量を追加で与えると示唆される。DTL の特徴量は、ラジオミクス特徴量とは異なる。このモデルは、術前予測で臨床的に役立つ可能性がある。ただし臨床で使う前に、より大規模な多施設コホートでの外部検証が必要である。
掲載誌の IF 相当:2.7(OpenAlex の直近 2 年の平均被引用数・2026-10-02 時点の値、2026-10-03 に取得。正式な IF(Clarivate)ではない)書誌:Yuan D, Zhang J, Zhang C, Jing X, Feng Q, Han T. Non-invasive preoperative MRI-based deep transfer learning radiomics model for predicting meningioma brain invasion. Front Oncol. 2026 Oct 7;16:1935311. doi:10.3389/fonc.2026.1935311.確認の範囲:抄録のみ確認
卵巣がんの治療・治験とAI
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子宮体がんの治療・治験とAI
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胃がんの治療・治験とAI
- Prognostic Model for Survival After Upfront R0 Gastrectomy in Peritoneal Oligometastatic Gastric Cancer.抄録(全訳)
目的:胃がん(GC)の腹膜転移は、一般に治癒できないと考えられている。望ましい戦略はコンバージョン手術だが、外科医は先行手術が必要な臨床場面にたびたび出会う。先行 R0 胃切除後の予後を予測する客観的な基準は、まだ定まっていない。 対象と方法 後ろ向きの多施設コホート研究である。PASS-META コホートと独立した検証用データセットから、2014〜2021 年に集めた 792 例のデータを解析した。最終解析には二つの群を含めた。リスク層別化の対象は、先行 R0 胃切除を受けた腹膜少数転移(P1/P2)の 80 例である。生存の比較には、R2 胃切除を受けたか胃切除を受けなかった対照 632 例を用いた。成分ごとの勾配ブースティング生存モデルを作り、8 項目のリスクスコアに簡略化した。
結果:機械学習(ML)モデルは、外部検証で高い識別能を示した(コンコーダンス指数 0.811(95% 信頼区間 0.677〜0.955))。モデルは患者を低リスク群と高リスク群に分け、両群の生存には有意な差があった(log-rank P < 0.001)。この層別は、全身化学療法の遵守状況に左右されなかった。低リスク群の 5 年生存率は 30% を超えた。高リスク群の生存率は、R2 胃切除または胃切除なしの患者と同程度だった。簡略化した 8 項目のリスク群は、ML モデルのリスク群とよく一致した(F1 スコア 0.975)。 結論このモデルは、腹膜少数転移を伴う GC の患者を、先行 R0 胃切除後の予後に応じて効果的に層別化した。前向きの検証は必要である。前向き検証は必要だが、この枠組みは客観的な予後の指針を与える。長期成績の良好な患者と、生存が非治癒的な治療と同程度の患者とを区別することで、術中の判断を支える可能性がある。
掲載誌の IF 相当:5.8(OpenAlex の直近 2 年の平均被引用数・2026-10-08 時点の値、2026-10-09 に取得。正式な IF(Clarivate)ではない)書誌:Lee S, Roh YH, Shin HJ, Song JH, Kim SE, Lee IS, et al. Prognostic Model for Survival After Upfront R0 Gastrectomy in Peritoneal Oligometastatic Gastric Cancer. J Gastric Cancer. 2026;26(4):516. doi:10.5230/jgc.2026.26.e40.確認の範囲:抄録のみ確認
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